表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/93

第52話 王旗の下で

 ヴィクトルの戦死から二日。


 王城は喪に沈んでいた。


 だが戦争は止まらない。


「南西丘陵、帝国軍増強」


 報告が続く。


 新司令官はまだ定まらない。


 軍は動揺している。


 その時、カイルが言った。


「私が行く」


 室内が凍る。


「殿下、それは――」


「軍の柱が折れた」


 低い声。


「ならば王が立つ」


 反対の声が上がる。


 だが彼は止まらない。


「士気は崩れかけている」


 正しい。


 今、象徴が必要だ。


 アレクシスは一瞬だけ目を閉じる。


 止めるべきか。


 だが――


「護衛を倍に」


 それだけ言った。


 南西戦線。


 王旗が翻る。


 兵がざわめく。


「殿下が……」


 カイルは丘の麓に立つ。


 焦土の匂い。


 血の跡。


 ヴィクトルが倒れた場所。


 拳を握る。


「退かない」


 兵たちの背が伸びる。


 その瞬間。


 遠くの丘から閃光。


「狙撃!」


 叫び。


 衝撃。


 カイルの体が揺れる。


 肩を貫く矢。


 護衛が即座に囲む。


「殿下!」


 混乱。


 だが帝国軍は動かない。


 狙撃のみ。


 明確な意図。


 象徴を削る。


 王城へ急報。


 アレクシスの手から紙が滑り落ちる。


「……生存は?」


「重傷ですが命に別状なし」


 安堵。


 だが衝撃は大きい。


 王太子負傷。


 市場が揺れる。


 王国債、急落。


 ルミナス評議会。


「象徴が倒れた」


 慎重派が言う。


 アルヴィンは沈黙。


 秤が、再び帝国へ傾く。


 帝国北部要塞。


「王太子負傷」


 副官が報告する。


 レオニードは目を細める。


「狙撃のみか」


「はい」


「殺さない」


 副官が驚く。


「恐怖は殺しすぎると反転する」


 将軍は冷静だ。


「傷つける。揺らす」


 構造を壊す。


 王城。


 寝台に横たわるカイル。


 意識はある。


 セシリアが付き添う。


「……まだ立てる」


 掠れた声。


 アレクシスが立つ。


「戦争の形を変えます」


 カイルが目を向ける。


「どうする」


「正面戦をやめる」


 沈黙。


「帝国は恐怖で押す」


「ならば、恐怖を無効化する構造を作る」


 目が合う。


「時間を奪う」


 戦場を広げるのではない。


 帝国を消耗させる。


 「持続性」の戦いに引き込む。


 カイルはゆっくり頷く。


「任せる」


 象徴は倒れた。


 だが折れてはいない。


 王国は今、


 軍の柱を失い、

 王が傷つき、

 市場が揺れ、

 秤が傾いた。


 国家は最も弱い。


 だが。


 ここから設計し直す。


 恐怖国家を、長期戦に引き込む。


 文明を決める戦争は、


 次の段階へ進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ