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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第51話 焦土の丘

 南西撤退から三日後。


 帝国軍は占領地を固めていた。


 旧鉱山地帯の丘陵。


 そこに築かれた仮設要塞。


 王国軍は流動防衛に切り替え、直接衝突を避けている。


 だが一箇所だけ、譲れない場所があった。


 南西丘陵、第三観測高地。


 あの丘を押さえられれば、内陸補給線が丸見えになる。


「奪還します」


 ヴィクトルが言った。


「少数精鋭で夜襲」


 危険だ。


 だが放置できない。


 アレクシスは地図を見つめる。


「坑道の出口は二つ」


「帝国は一つしか把握していない可能性が高い」


 成功確率は、五分。


 カイルが言う。


「任せる」


 短い言葉。


 夜。


 丘陵は静かだった。


 王国兵が坑道を進む。


 足音を殺し、息を抑える。


 出口。


 帝国兵は想定していなかった。


 奇襲は成功する。


 短い白兵戦。


 帝国側が崩れる。


 だが。


 爆音。


 丘の頂上が揺れる。


「地雷だ!」


 帝国は読んでいた。


 二つ目の坑道出口も把握していた。


 伏兵。


 挟撃。


 混戦。


 ヴィクトルが叫ぶ。


「撤退!」


 だが遅い。


 丘の上、帝国軍が増援で押し返す。


 王国軍は包囲される。


 ヴィクトルは最後尾で剣を振る。


 退路を開くために。


「下がれ!」


 副官が叫ぶ。


 だが彼は動かない。


 帝国兵が迫る。


 矢が飛ぶ。


 胸を貫く。


 ヴィクトルの体が揺れる。


 それでも剣を振るう。


「……守れ」


 最後の言葉。


 王国兵が涙をこらえ撤退する。


 丘は奪えなかった。


 朝。


 戦死者名簿に、新たな名が刻まれる。


 ヴィクトル・ハルトマン。


 王国軍総司令。


 王城。


 会議室は沈黙に包まれていた。


 報告を受けた瞬間、誰も言葉を発さない。


 カイルは立ち尽くす。


「……嘘だろ」


 低い声。


 アレクシスは目を閉じる。


 彼は軍の柱だった。


 恐怖国家に対抗できる、数少ない実務家。


 失った。


 これは数字ではない。


 支柱だ。


 王城回廊。


 カイルは壁を殴った。


 血が滲む。


「私が行くべきだった」


「違います」


 アレクシスが言う。


「彼は軍人です」


 だが言葉は軽い。


 重みは消えない。


 その夜。


 南西丘陵に帝国旗が立つ。


 レオニード将軍は報告を受ける。


「王国軍総司令戦死」


 彼は目を伏せる。


「強い相手だった」


 恐怖国家は勝利した。


 だが将軍の顔に喜びはない。


 戦争は、互いを削る。


 王城。


 高窓の外、南西の空は赤い。


 カイルが静かに言う。


「続ける」


 涙は見せない。


「恐怖には戻らない」


 だが声は震えている。


 アレクシスは答える。


「戦争の形を変えます」


 ここからだ。


 王国は負けた。


 柱を失った。


 国家は今、最も弱い。


 だが同時に、


 最も覚悟が決まる。


 文明を決める戦争は、


 血で刻まれ始めた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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