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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第49話 南西戦線崩落

 夜明け前だった。


 南西戦線、第四補給拠点。


 霧が低く垂れ込め、視界は悪い。


 見張り兵が違和感を覚えたのは、ほんの一瞬だった。


 次の瞬間、爆音。


 地面が揺れる。


「爆裂矢だ!」


 帝国軍。


 正面ではない。


 地下坑道。


 旧鉱山の坑道を利用した奇襲。


 帝国は、地図を読んでいた。


 補給拠点の背後を突かれる。


「防衛線を引け!」


 だが遅い。


 補給倉庫の一角が炎上。


 伝令が走る。


 王都へ急報。


 ――


 王城、国家戦略会議室。


「南西第四拠点、陥落」


 静まり返る。


 ヴィクトルの声が低く続く。


「帝国正規軍二個旅団」


「偽装路も看破されています」


 想定外。


 いや、想定はしていた。


 だが速度が違う。


 カイルは地図を見つめる。


 赤線が王国領へ入り込んでいる。


「損害は」


「物資三割焼失」


 重い数字。


 アレクシスは無言だった。


 制度は機能した。


 だが敵は、構造を学習した。


「撤退命令を」


 ヴィクトルが言う。


「被害拡大を防ぎます」


 沈黙。


 撤退は、敗北の承認だ。


 カイルがゆっくりと頷く。


「撤退」


 命令が下る。


 南西戦線。


 兵が後退する。


 だが帝国は追わない。


 占領旗が立つ。


 帝国紋章が王国の地に翻る。


 ――


 王都。


 翌日の新聞。


『南西戦線陥落』

『補給網に致命的打撃か』


 市場が揺れる。


 王国債、急落。


 ルミナス評議会。


「やはり短期は帝国か」


 慎重派が言う。


 アルヴィンは沈黙。


 数字を見つめる。


 信用は、戦場で試される。


 王城。


 会議室は重い。


「帝国は地下坑道を利用した」


 ヴィクトル。


「情報漏洩の可能性」


 空気が凍る。


 内部か。


 アレクシスは初めて、拳を握った。


 構造は正しかった。


 だが人間は完全ではない。


「……修正します」


 低い声。


「坑道封鎖」

「補給拠点の地質再調査」

「防衛設計を再構築」


 だが今は、失った。


 夜。


 戦死者名簿が机に置かれる。


 カイルは目を通す。


 静かに。


 その中に、一つの名前。


 補給監査官、ハインリヒ副官。


 ヴィクトルの右腕だった。


 ヴィクトルは無言で立っている。


「申し訳ありません」


 誰も責めない。


 だが失われた。


 王国は、初めて明確に負けた。


 高窓の外。


 南西の空は暗い。


 セシリアが言う。


「ここからが、本当の戦争ですね」


 アレクシスは答えない。


 ただ地図を見る。


 機能国家は、無敵ではない。


 恐怖国家は、弱くない。


 秤は揺れた。


 今、帝国側へ。


 国家は、落ちた。


 ここからどう立つかで、


 文明が決まる。

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