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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第46話 信用の重さ

 ルミナス同盟の臨時評議会は、夜通し続いていた。


 長い楕円卓。

 灯りは抑えられ、声も低い。


「帝国債は利率七分」


「王国債は五分」


「数字だけ見れば帝国だ」


 黒衣の顧問が言う。


 だが別の声が上がる。


「帝国は軍事費が膨張している」


「返済は恐怖で担保される。だが恐怖は市場に嫌われる」


 視線が集まる。


 アルヴィン・クローディアは静かに資料を広げた。


「王国は軍需帳簿を公開した」


 ざわめき。


「穀物在庫、鉱山再稼働率、補給効率……」


「ここまで開示する国家は稀だ」


 沈黙。


 透明性は市場言語だ。


「帝国は?」


「非公開」


 重い空気。


 アルヴィンが言う。


「短期は帝国」


「長期は王国」


 秤が、わずかに動く。


「我々は短期利益国家ではない」


 ルミナス同盟は“持続”で繁栄した。


「王国債を段階購入する」


 決定。


 だが同時に。


「帝国とも関係は維持する」


 完全に傾かない。


 それが市場の本質。


 ――


 帝国北部要塞。


「ルミナスが王国債を購入開始」


 副官の声が硬い。


 レオニード将軍の目が細くなる。


「利率を上げても動かぬか」


「市場は透明性を評価している模様」


 短い沈黙。


 やがて将軍は言う。


「ならば数字を壊す」


「……侵攻ですか」


「限定的だ」


 地図に赤線が走る。


「補給拠点を三箇所同時に叩く」


 市場は信用を見る。


 ならば信用を揺らせ。


「王国が混乱すれば、債券は下落する」


 恐怖国家は、直接揺らす。


 ――


 王城。


 ミレーヌが報告書を握る。


「王国債、初回購入成立」


 空気がわずかに軽くなる。


「だが安心はできません」


 アレクシスは頷く。


「帝国は動きます」


 その瞬間。


「北西、南東、中央丘陵――三拠点同時襲撃!」


 室内が凍る。


 三方向。


 偶発ではない。


「本気です」


 ヴィクトルが言う。


 カイルは立ち上がる。


「迎撃」


 短い命令。


「地方裁量を最大限に」


 制度が試される。


 三拠点。


 だが情報は共有済み。


 補給は一本化。


 偽装路も機能。


 各地の指揮官が即断する。


 小規模だが激しい戦闘。


 帝国部隊は損耗を出し撤退。


 拠点は守られた。


 王城に報告が届く。


 被害は軽微。


 補給維持。


 ミレーヌが即座に市場へ数字を流す。


『補給維持成功』

『損害限定』


 数刻後。


 王国債は安定。


 帝国側市場は微揺れ。


 北部要塞。


 レオニード将軍は報告を受け、静かに息を吐いた。


「三方向でも崩れぬか」


 恐怖で揺らせない国家。


 それは異質だ。


「長期戦になる」


 副官が問う。


「恐怖では削れぬ」


 将軍は呟く。


「ならば……構造を崩す」


 視線が王国地図の中央へ落ちる。


 王国。


 高窓の前。


 セシリアが言う。


「秤が、わずかにこちらへ傾きました」


「ええ」


 アレクシスは答える。


「ですが帝国は、次を用意しています」


 恐怖国家。

 機能国家。

 市場国家。


 三極はまだ均衡している。


 だが戦いは変わった。


 これは局地戦ではない。


 国家構造そのものの競争だ。


 そして次の一手は、


 均衡を崩す。

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