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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第41話 飢えと噂

 帝国が穀物の輸出検査を強化した。


 表向きは「疫病対策」。


 だが王国南部港に停泊する商船は足止めされ、荷は動かない。


 三日で小麦価格が一割上昇。

 五日で二割。

 七日目、三割。


 市場の空気が変わる。


「パンが値上がりしている」

「来週はもっと上がるらしい」


 不安は、噂より速い。


 王都中央広場。


 小さな口論が起きた。


「改革のせいだ!」

「いや、帝国が――」


 どちらも半分正しい。


 王宮会議室。


 ミレーヌが報告する。


「備蓄放出で一時的には抑えられます」


「どのくらい持つ」


 カイルが問う。


「二週間」


 短い沈黙。


「価格統制は?」


「市場が歪みます」


 アレクシスが口を開く。


「段階放出に加え、地方備蓄の即時連結」


「可能か」


「帳簿統一は終わっています」


 制度が活きる。


 地方倉庫の在庫が瞬時に把握される。


「輸送は?」


「軍需ルートを一部転用します」


 ヴィクトルが頷く。


「可能だ」


 決断が下る。


 だが外は待ってくれない。


 広場で怒号が上がる。


「パンを出せ!」


 群衆が増え始める。


 そこへ、誰かが叫ぶ。


「王太子は改革に夢中で民を見ていない!」


 言葉は火種。


 石が一つ投げられる。


 衛兵が緊張する。


 王城内。


 セシリアが窓から広場を見る。


「臨界です」


 その瞬間、第二報。


「殿下!」


 近衛騎士が駆け込む。


「演説中の王太子に向け、刃物を持った男が――」


 空気が凍る。


 カイルは中央階段で民に語りかけていた。


「備蓄はある!」


 その瞬間。


 群衆の中から一人が飛び出す。


 短剣が光る。


 だが一歩早く、近衛が押さえ込む。


 刃は届かない。


 男は叫ぶ。


「飢えさせる王は不要だ!」


 沈黙。


 王太子は、倒れない。


 動揺も見せない。


 ゆっくりと、群衆を見る。


「私は逃げない」


 声は強い。


「備蓄は放出する。価格は抑える」


 ざわめきが止まる。


「帝国の圧力に屈しない」


 拳を握る。


「だが民を飢えさせもしない」


 近衛が男を連行する。


 広場の空気が、変わる。


 恐怖は頂点に達した。


 だが、王は立っている。


 その夜。


 帝国北部要塞。


「暗殺未遂、失敗」


 副官が報告する。


 レオニード将軍は、静かに息を吐いた。


「退かなかったか」


 恐怖で崩れない国家。


 それは危険だ。


「ならば、試す」


「何を」


「本当の補給戦だ」


 王国は今、


 経済で締め上げられ、

 世論で揺らされ、

 王座まで狙われた。


 だが崩れてはいない。


 高窓の前で、アレクシスは呟く。


「ここからです」


 制度は試される。


 国家の形が、決まる。

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