表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/93

第38話 依存の代償

 帝国の鉄輸出停止から三日。


 市場は目に見えて変わった。


「釘が値上がりしてるぞ」

「鍛冶屋が仕入れを絞ったらしい」


 王都の工房街では、金槌の音が減っていた。


 軍需局では、在庫表に赤い印が増えていく。


「三ヶ月分と言ったが、それは平時換算だ」


 ヴィクトルが低く言う。


「国境の緊張が続けば、二ヶ月も持たん」


 会議室の空気は重い。


 王太子カイル、セシリア、ミレーヌ、アレクシス。


 四人の視線が交錯する。


「国内鉱山の再稼働は可能か」


 カイルが問う。


 ミレーヌが即座に答える。


「可能です。ただし――」


「費用は?」


「帝国産の一・五倍。初期投資を含めれば二倍」


 ざわめき。


「財政が耐えられるか?」


「短期なら。長期は税制調整が必要です」


 沈黙。


 ここで侯爵派が口を挟む。


「帝国と交渉すべきだ」


 重鎮の一人が言う。


「改革を緩めれば、価格は戻るかもしれぬ」


 その視線は、アレクシスへ向けられている。


 改革が原因だ、と言いたいのだ。


 アレクシスは静かに答える。


「戻る保証はありません」


「だが敵対するよりは――」


「依存を深めるだけです」


 短い応酬。


 ミレーヌが補足する。


「価格操作は、相手が主導権を握っている証拠です」


 数字が語る。


「今回譲歩すれば、次は穀物です」


 静まり返る。


 王太子が立ち上がる。


「国内鉱山を再稼働する」


 決断。


「補助を出す。軍需は優先供給」


 侯爵派がざわつく。


「殿下、それでは財政が――」


「財政は守る」


 カイルは言い切る。


「だが主導権は渡さない」


 その言葉に、セシリアがわずかに目を細めた。


 成長している。


 同じ頃。


 帝国北部要塞。


 レオニード・ヴァルガ将軍は、報告を受けていた。


「王国は国内鉱山を再稼働する模様」


「愚策だ」


 将軍は即断する。


「コストで疲弊する」


「それでも踏み切ったようです」


 将軍は静かに笑う。


「面白い」


 恐怖でまとめるのではなく、機能で耐える。


 それがどこまで持つか。


「補給線への圧力を強めろ」


 命令は短い。


「正面戦は不要だ。揺らせ」


 王国南部。


 放置されていた旧鉱山に、人が戻る。


 錆びた滑車が軋み、暗い坑道に灯りが入る。


 マルティナが現場を視察し、低く言う。


「辺境でやったことと同じだな」


「違います」


 リーゼロッテが帳簿を見ながら答える。


「規模が桁違いです」


 再稼働は、成功すれば自立。


 失敗すれば財政破綻。


 王都の高窓から、アレクシスは煙を見つめる。


 国内鉱山の煙だ。


「依存は、静かな鎖です」


 背後から、セシリアの声。


「鎖を断てますか」


「断ちます」


 迷いはない。


 だが代償は重い。


 その夜。


 国境付近で、王国の補給車列が再び襲撃された。


 被害は軽微。


 だが、意図は明白。


 帝国は戦争を始めていない。


 だが平和も許していない。


 王国は今、


 経済で揺さぶられ、

 世論で割られ、

 補給線で試されている。


 恐怖でまとめるか。


 機能で耐えるか。


 国家の選択は、まだ途中だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ