64.
「はい!ストップ!!……引き分け、かな」
障壁の解けたハルトリッヒに対して刃を向けるサミュエルとクラウス。しかし同時にハルトリッヒも二人に対して刃を突き付けんとしていた。その間に結界魔法を差し込むことで私がそれを阻止していた状態が今だ。
「引き分けじゃない!」
重なった3人の声。
勝利を貪欲に欲するのは確かに闘う者としては重要だ。気持ちで負けてしまえば、どんなことでも気圧されて失敗してしまう。だから感情で勝つというのはとても大切なのだ。だが、今回はこのまま続ければ全員命を落とすまではいかなくても首をお互いにかき切って重症を負っていたことだろう。
私がその場ですぐに治したとしても、簡単に戦線復帰など出来ないことは簡単に予測できる。酷ければ後遺症が残ってしまうかもしれない。こんなくだらない争いで、だ。
正直、こんな状況になるほど3人共本気になるとは思っていなかったというのが本音だったりする。ちゃんと終了条件を決めておけば良かったかもしれないとも考えるが、『降参』と言葉を発するなどにしても結局は3人共負けを認めることはなかっただろうと思い直した。
「俺があのまま剣に力を入れていれば、お前の首は飛んでいた」
「いいや。その前に俺がお前の腕を切り落として、そのままこの優男の頭も切り裂いていたね」
「は?それよりも先に僕の斧が君の頭をすりつぶしていたけど??」
あの勢いでやっていたら、3人共仲良く頭と胴体がお別れしていたと思うから、この無駄な言い争いはやめて欲しい。
何故彼らはこんな物騒な会話をずっと続けているのだろうか。野蛮にも程がある。
「そのまま喧嘩を続けるんだったら、3人共私が重傷を負わせて留守番させます」
それを言うとピシャリと黙る。最初からこうしておけば良かったのかもしれない。
力で黙らせる。自分の実力に自信がある人間ほど、力のある人間には従う。
流石に三人全員でピッタリな連携をされれば確実に勝てないとは思うが、今のこの全員がイラついていて冷静さを欠いた状態であれば、3人同時に相手をしても私が勝つことは容易だろう。それどころか3人同時に相手をする方が足を引っ張り合って勝てる。そのくらいに相性が悪いのだ。
その意図も察したのかもしれない。
「実力が拮抗しているってことが分かったでしょう?もう喧嘩するのはやめて」
「っだが、お前と一緒にブレメンスに行く人間が決まってない!」
「全員で行く。これで一人でも文句を言えば、三人とも置いていくわ」
そう。結局は私が勝負を止めたのだ。だからこそ平等に結果を与えなければならない。
なんだか三人が三人ともブスッとした顔で文句は口の中に留めているものの睨み合っていた。
思わぬところでしんどさを感じる旅になるかもしれない。きっと旅路ではずっとギスギスしているのだろう。連れていきたくない。だが、納得していない人間を置いて行っても意味がないだろう。きっと追いかけてくる。
未来への思わぬ不安を感じながら、私は村への帰路を辿った。




