51.魔力欠乏症③
他人の体内の臓器器官の修復なんて久しぶりだ。ブレメンスに居た頃以来だろうか。
しかも今回は自分の魔力を相手の魔力に同調させながら治療するという今までにしたことのない試みをしなければならない。患者の今の状態を分析してみればみるほどに、治療を始める前からその難易度の高さひしひしと感じていた。
「村中のものと、騎士たちから集めてきたもの、これで全部だよ」
「ありがとう」
「無理はしないでね。最低なことを言うけど、僕は彼の命よりも君の方が大切だと思っている。もし彼が死んだとしても、君のせいではない。そもそも君は被害者なんだ」
きっとサミュエルは治療内容については全て理解できていないだろうが、私の焦り具合やハルトリッヒの魔力の量などから、状況が芳しくないことは分かっているのだろう。だから私を気遣って、事前に声をかけてくれている。失敗したとしても私が気に病まないように、わざわざ言葉を掛けてくれているのだ。身内だと認めた者には甘い男だと思った。
けれど、私には失敗する気などなかった。ハルトリッヒのボロボロになった姿が、過去の疲弊しきって死にかけていた自分と重なったからだろうか。救いたいとそう強く思ったのだ。
ハルトリッヒからはブレメンスの災厄だと思われていることは知っている。しかし、恨まれているからと言って、出来ることがあるにも関わらず何もしないのは違うだろう。
他の人間の強力な魔力が近くにあると集中できないから、エーテルを持ってきてくれたサミュエルには出て行ってもらった。これから私は魔力が空っぽになって、それをエーテルで強制的に補給して、また空っぽになるという地獄を繰り返すのだろう。かつて何度も感じた苦しみを思い出して身震いするが、動かないわけにはいかない。決意を固めて、眠っているハルトリッヒの身体と向き合った。
透視魔法を目に掛けて、ハルトリッヒの体内の様子を観察しながら、数ミクロン単位で修復していく。集中力が少しでも途切れてしまえば、ハルトリッヒの刻印によって私の身体は弾かれて、治療どころではなくなってしまうだろう。そして私を弾いた彼の身体は、魔法を強制的に使ったことによって体内が更に傷付く。そこまで分かっているからこそ一つもミスなんて出来なかった。
定期的にエーテルを取り込みながら、自身の魔力を彼と同調させて少しずつ修復をしていった。
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「おわ、った――」
完璧に治療が終わったという安心感から、身体から力が抜け落ちる。咄嗟にベッドの端を手で弾いたので、ハルトリッヒの身体に顔面から突っ込むという事故は起こらなかった。
しかし身体は固い床に伏せる形になってしまった。魔法と魔力を酷使しすぎて身体が熱い。私は今、熱が出ているのだろうことが分かる。冷たい床がただただ心地良くて、全てが終わった安心感も相まって、私は意識を手放してしまった。




