50.魔力欠乏症②
私は魔力を他人と同調させることが出来る。
それは即ち、エーテルの上位互換の役割を果たすことも出来るのだ。エーテルで必要な『魔力を自分自身のものに変換する』という作用の部分を私自身が補ってあげることで、ハルトリッヒの身体に直接魔力を補充することが出来る。
きっとこの人は、私が魔力を補充しなければ、数日以内に死んでしまうだろう。
「本当に助けるのかい?」
「ええ。この人……ハルトリッヒは、ブレメンス王国の人間に騙されて、踊らされていただけだから。あんな異常な国を信用しきって――いえ、狂信ともいえるわね。それを見ても、やっぱりブレメンスはおかしな国だと思うわ」
「君の冷たそうに見えて、実は慈悲深いところ、僕は好きだよ」
「慈悲深い?冗談はよして頂戴。あの国に居た人間としての責任を果たそうとしているだけ。襲撃された上、私のせいだって責められて、その上応戦して勝手に死にかけられるだなんて、寝ざめも悪すぎる」
そう。ただ私があの国の行いを許せないから、勝手に死なれたらモヤモヤするから助けるだけ。
助けた上で、誰かに感謝されたいなんて思いはない。ブレメンスに居た頃からそうだ。心は折れかけていたが、他社を助け続けていたのは、私の自己満足だ。私が嫌な気持ちになりたくないという理由から。
こうして私はハルトリッヒのほぼ空になってしまった魔力貯蓄器官に注――ごうとした。
しかしそれは出来なかった。身体の中の魔力を貯める器官が《《壊れていた》》のだ。これはただの魔力欠乏症ではない。
「……エーテルをありったけ持ってきて。掻き集めてでも。今すぐに」
「ハルトリッヒに飲ませる気かい?彼はどうやってもそれを飲めなかったのだが」
「いえ。飲むのは私よ。彼の魔力貯蓄器官、このまま魔力を注ぐと完全に壊れちゃうから」
それは、ひび割れた壺のように。
きっと元々膨大な魔力を一気に放出なんてしたせいだろう。酷使し過ぎた彼の魔力貯蓄器官はボロボロになっていた。これは人体で最も複雑だと言われる臓器の内の一部、魔力貯蓄器官を治療してから、更に魔力欠乏症を治さないといけない。私の病み上がりの魔力では、それを全て補い切る事なんて出来ないと一瞬にして確信してしまった。
これは眠れない夜になりそうだ。そう確信しながら、私は治療を開始した――。




