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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第一章:序章

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14.再会④

いつでも溢れ出るほどに垂れ流された化け物並の魔力量。そして王族であり、この場に於いて一番であり唯一であることが当然のような風格と威圧感。

普通の人間であれば、跪いてしまうことが簡単に予測できる程の圧を放つこの男。

一般人に対する態度じゃないだろ、もっと威圧感しまえ!!とは思うが、口に出すわけにはいかない。『あー、さっきまで上の方で鳴り響いてた爆発音や悲鳴の原因は、確実にこの男だったんだろうな』なんて現実逃避をするのが精々だった。


「……名乗らせたいなら、先に名乗ったら?女性に何も言わずに名前を言えなんて失礼にあたると思うんだけど」

「そうだね。これは申し訳ないことをした。僕の名前はサミュエル。気楽にサミーとでも呼んでくれ。よろしくね」

「ふーん。私はフィーア。……そこの肩パッドに乗る筈だった魔導車を追い出された可哀そうな一般人よ」


敢えて友好的な態度はとらない。この男が嫌いだということもあるが、そもそも私の乗る筈だった魔導車を横から掻っ攫った『高貴なお方』とやらは、目の前の人間で間違いないだろう。

最初はクラウス=カッシュメイスというこの国の公爵家の名前を聞いて、そっちのせいだと思っていたが、今現在一番この中で高い立場を持つのはこの男だ。

だから以前の怒り、苦手意識と、人の予約していた魔導車を横から奪っていった恨みが湧きあがって、内心ごった返していた。


それにサミュエルという名前だけを名乗って、名を全て明かさなかったことも気になる。一体何を企んでいるのか、と警戒心を強めるには十分だった。


だからと言って、フルネームを聞くというのもここの行動としては間違っている。彼がファーストネームしか名乗らなかったように、私も下の名前……それも偽名を口に出した。


とんでもないものに出くわしてしまった、と内心思いながらも、それをおくびにも出さない。正直なところ、こびへつらうのも嫌だし、この国の人間らしく跪いて先程までの非礼を詫びるのも嫌だった。だから敢えて分かっていても、何も突っ込まず、何も言わない。

要は少しでもこの男に対して関心を持って、何かを掘り下げることで、深い話にしたくなかったのだ。


「だから肩パッドじゃないと何度も言っているだろうが!!」

「っふふ、フィーアか。一見厳つい容姿のクラウスを揶揄うなんて君、面白い子だね」

「あー、面白い女展開地雷です。というかもう、敵?いなくなったみたいですし、行って良いですか?」

「うん!ダメ」


ニコリとした笑顔で言い切られる。足止めしていた原因が片付いたのだから、ここにいる目的はないとばかりに逃げの姿勢をとった私をサミュエルは逃がしてくれなどしなかった。笑顔が威圧的でただただ怖い。

この感じは、逃げたら確実に後ろから攻撃してくるだろう。そんな気配がビンビンと伝わって来た。


「……何故でしょうか」

「だって……ねえ?君さ、魔力の残滓からしてあそこで伸びてる盗賊、やったでしょ?」

「全部肩パッドがやりました。私はなんの責任も取らないです。本当、肩パッドの人は野蛮で困っちゃう」

「だから肩パッドじゃないと――」

「違う違う。責めようってわけじゃないんだ。むしろ逆。一般人を巻き込んだ挙句、ここにいた半数ほどを君に片付けさせてしまったからね。そのお詫びとお礼。あと、肩パッドの人が野蛮なのは昔からだから、許して?」

「おい!サミュエル!お前まで肩パッドと――」

「え、詫びもお礼も普通に要りません」

「僕これでも、結構高い身分の人間だから、お礼もせずに返しちゃったら僕が後から色々言われちゃうんだ。だから僕に恩を売ると思って……ね?」

「いや、別に貴方への恩とか売りたくないです」

「そう言わずに、ね?」


この男、相変わらず押しが強い。思わず顔を引きつらせながら、内心うんざりする。

普通に逃げようとしてもダメ、全てクラウスがやったということにして逃げようとしてもダメ、お礼とやらを断ろうとしてもダメという完全に詰みの状態になっていることが自分でも簡単に察することが出来た。

それにそれだけじゃない。私が魔力を全開にして、全力の魔法を打ってでも無理矢理にでも逃げようとしないことには理由があった。このサミュエルはよほど私を逃したくないのか周囲に魔力を張り巡らせて、退路を全て塞いでいるのだ。正直自分の何がここまで彼の興味を引いたのかは私自身は分からないが、今の全力の力を持ってしても、逃げられる確率は五分五分……いや、それ以下であろうことは分かっていた。


「しっつこいですね!恩を少しでも感じてるなら、早く離してください。私は少しでも早く王都に――」

「王都に行きたいのか。じゃあ、目的地は同じだ。やはり一緒に行こうじゃないか」


口を滑らせた数秒前の自分を恨む。実際のところ、この魔導車に元々乗る予定であったという事実はあるが、この発言が隙を生んだことは確かだった。


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