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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第一章:序章

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15.再会⑤

結局無理矢理に彼らを振り払おうとしたが、それも失敗に終わり、念願の魔導車の中に強制連行されることになった。

興味があった物に乗ることが出来ることは少しだけ嬉しいが、乗車するまでの過程が全く嬉しくないというのが私の本音である。


「……で、何故隣に座ってくるのですか?」


無理矢理乗せられた魔導車の中。数人が寝っ転がって乗ってもスペースが空くほどに広い空間のはずなのに、肩が触れそうな程の距離――右隣にはサミュエルがダラっと座り、少し距離を空けた左隣にはクラウスがドカリと座っていた。何もかもが対比的な二人だ。


「ん?だって君、逃げようとするじゃないか。流石にこんなところから降りたら危険だ。怪我をしてしまう」

「貴方といるくらいだったら、怪我した方がマシです」

「はは、言うねぇ……女性には好かれる方だと思っていたんだけど。でも降ろさないよ」

「この男はこういう男だ。諦めろ、女。他人の言うことを全く聞かないクズ……そういえば似た女がいたな、俺の真横に――」

「失礼な肩パッド!私はちゃんと他人の話を聞いてるわ」

「だから、聞いてるやつは俺のことを肩パッドって呼ばねえんだよ!!」

「良かったね、肩パッド。酷い性格の君にも友達ができて」

「サミュエル。お前、次俺のこと肩パッドって呼んだら、この車から叩き落とすからな?それと酷い性格とかお前に言われたくないし、どこをどう見たら友達なんだよ!目、腐ってるんじゃねえの!?」


緊張感があるのかないのか分からないような会話。終始こんな感じで話してはいるが、そんなものを交わしながらも、私含めて3人が3人共それぞれ別の方向性での警戒心を解くことはない。私は正体がバレないか、この二人は自分に何をしようとしているのかという警戒心。そしてクラウスは未だに私が危険な存在じゃないか警戒している。そしてサミュエルは……言っている通り私が逃げないかを警戒している様だ。

それぞれが別の方面の圧力を放ち続けている傍から見たらきっと嫌な空気の空間だろう。


現に魔導車の端の方にいる護衛であろう騎士は仮面越しでも分かるくらいに、私達から発されているプレッシャーによって肌は青褪め、遠目でも分かるくらいに全身がガタガタと震えていた。少し可哀そうなくらいだ。しかし、この男達サイドの人間であることには変わりないので、決して助けたりなどしない。


「わー、怖い怖い。さて、本題に入るけどフィーア、君、この国の騎士になる気はない?」

「ない!天地がひっくり返ったとしても、あり得ない!!」


本題に入ると言われ、一瞬全員に分かるほどに身構えたが、あまりにも予想外かつあり得ない内容に対して即拒絶の言葉が口から出た。

改めて、この男が何を考えているのかが分からない、と怪訝な瞳を向ける。しかし断った事も観察するような瞳で見られることも、サミュエルが気にした様子はなかった。


「振られちゃったかー」

「完膚なきまでにな。諦めろ。そもそもこいつ一般人だのなんだのと言っているが、強さ的にも怪しいし、やめておいた方が賢明だろ」

「素性は分かっているよ。フィーア=アドライン。魔道具大会でクラウスを差し置いて賞を受賞した子さ。ちなみに君はどちらの賞でも点数的には次点」

「は?」

「そういえば全体への正式な発表は今日だったけ?まあいいや、どうせすぐ分かる事だし」


何故かクラウスからの視線が厳しくなる。私は、「こいつも魔道具を作るのか~」くらいにしか思わなかったが、彼は違かったようだ。先程とは比べ物にならない程の明らかな敵意と見定めるような視線をヒシヒシと感じた。


「……というか、さっきからあんなに圧力かけておいて、本題はそれなんですか?」

「うん。少しでも役に立ちそうな人間は手元に置いておきたい主義でね」


息がかかるほどの至近距離まで顔を詰められる。

驚いたり、ドキリとすることはなく、ボケーッと『睫毛長いなー』なんてことを考えていた。こういうことを突然してくる人間に対しては、何も反応しないというのが一番なのだ。少しでも動揺を見せればそこに付け込んでくる。


「へー。趣味の悪い収集癖ですね。でも貴方の収集物の一つに成り下がる気はありません」

「手厳しい。そして興味なさげだね。僕のところに来れば、給料もその辺とは比べ物にならないくらいに出してあげられるよ?」

「お金とか別に興味ないので」


話長いな、なんて思いながら、手慰みに机に置いてあったお菓子の皮を剥いて食べる。

そして訪れる感動。このチョコレート、甘いだけじゃない。口に入れた瞬間に文字通り溶ける。中に生チョコが入っている。流石高い魔導車に置いてあるだけ美味しいお菓子だった。甘いものを食べた幸福感で、少しだけ頬が緩んだ。

そうしている内に、いつの間にかサミュエルの顔は元の距離に戻っていた。顔を赤らめすらしないソフィアに、その手の説得は効かないということが理解できたのだろう。


「地位も名誉も、君が今美味しそうに食べているお菓子だっていくらでも手に入るよ?」

「あー、それお菓子以外は前にも言われた事ありますが、興味ないですね」

「それじゃあ――」


無心になってお菓子を食べ続ける私と、代わる代わる……よくそこまで出てくるなと思えるほどに多様な餌で釣って勧誘活動をしようとするサミュエル。その攻防は結局王都に到着するまで続いたのだった――。


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