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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第一章:序章

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12.再会②

近くにあった武器屋で買った剣――剣を選んだのは、空間に裂け目をいれるのにイメージがしやすく、効率が良かったからだったりする――に、一応バッグに入れていた魔力供給元にするための魔力……の塊である魔法石。それらに少し前に資料で見たテレポーテーションとオリジナルの結界術の魔法式を組み込んでいく。


少し時間はかかったが、2日あれば作業は完了した。やはり基礎の魔法式があったのが大きい。

テレポーテーションの先は、私が本来乗るはずだったあの馬車にする予定だ。2日前の朝、あの魔道車への乗車を断られた時に、ムカつくから利用してやろうと魔力でマーキングしておいたのだ。とある仕掛けとはこのことだった。

テレポーテーションのもう一つ不利な点は、魔力の目印がないと、そこに移動できないこと。今回は涙ぐましい事前の準備でこの欠点も補えた。


予定時刻としては、既に王都に到着しているであろう時間。

自身がつけたあの魔力のマーキング地点に移動できるよう、剣で空間に穴を開ける。ここから空間を切り開いて、転移できる。身体に強力な結界を張り、ソフィアは一歩踏み出した。


「は……?」


移動した場所は、あのムカつく男に占領されてしまった本来であれば私が乗っている筈の魔導車の屋根の上。

しかしその場所は王都ではなかった。見覚えのないどこか、森の中。そして何故か至る所で金属がぶつかり合う音や、魔法による爆発音、人間の悲鳴が響き渡っていた。


「っ敵か!?」

「あー、あの変な肩パッド。また会っちゃったよ、もう会いたくなかったのに」

「お、前、何故そこに!!?もしかして魔道車に潜んでやがったのか、このネズミめがっ!」

「いや、すーっひょいってテレポーテーションしてきた。この馬車にマーキングしててさ。ちょっと利用させてもらったんだ」

「テレポーテーション??何を馬鹿げたことを――まあいい。お前の相手をしている暇はないんだ。命が惜しければさっさと失せろ」


移動したら目の前は王都だと思っていただけに、少し驚きはしたが、それを表には出さずに男に受け答えをする。まるで盗人か何かに対するような扱いを受ける。何か勘違いしているようだったので、魔法を使ってきたと素直に答えた……が、男は信じていないようだった。

それどころか彼の声に引き寄せられて、周囲はとんでもないことになっていた。


「失せる……つもりなんだけどさ、貴方の声が大きすぎて、さっきよりも囲まれてる」

「は!!?貴様ああぁぁああああ!!」

「なに?一人コント?ウケる」

「ウケない!!」


確かに私も多少は煽るようなことは言った自覚はあったが、自分で大声を出して敵を集めているのだから救いようがない。

事実、面白いなと思いながら少し笑った。村を出てから初めて笑ったかもしれない。

そして関係のないはずの私をこの場に留めながら、戦闘は勝手に始まっていく。


「そこだー、そう、後ろから肩パッドにトドメを刺せ!!って、もー!空振り!!剣の振り方が甘すぎるんだよ~!!下手くそ!!!」

「女!お前、本当にうるさいぞ!!――というか、お前はどっちの味方なんだ!!?俺がやられたら、お前が次は狙われるんだからな!あとその肩パッド呼びはやめろ!!」


今のところ私は、馬車の屋根に乗ったまま、攻撃された時のみ結界で相手にその攻撃をそのまま弾き返して撃退、攻撃をしてこない相手にはノータッチで対応しながら敵から男に対しての攻撃のダメ出しを行っていた。


実は私は元聖女だったからといって、戦えないわけではない。

あの国では労働環境が酷かっただけではなく、聖女という立場へのやっかみもあったのだ。

上の人間は聖女を酷使し、下の人間からはそんな立場にいるのだから、よほど良い給料をもらっていて、甘やかされているのだろうと思われていた。酷かったのが、国の騎士。団長格や副団長格、その他師団長が魔法に関する指導を受けたいとの名目で私へ挑んで来た。聖女という立場への妬み嫉みを訓練という名目の一方的な暴力でぶつけてきていたのだ。


国での私の実際の扱いに対して知らないが故の残酷さ。誰も庇ってもくれないし、守ってもくれない絶望。

最初の頃は何度も死にそうな思いをしたが、慣れてからは、いとも簡単にあしらえるようになっていた。それ故に基本的にその辺の人間に戦闘で私が負けることはない。


「いやー、でも肩パッドすっごく強い!私も向こうに加わっちゃおうかな」

「そんなことしたら、反逆罪でしょっぴいてやるからな。一つ言っておくが、これは肩パッドじゃなくてアーマーの一部だ!」

「今の!ちょっと惜しい~!肩パッドの弱点は、魔法攻撃の直後にインターバルがあることね。魔法が苦手なのかしら。最低でも10秒は時間を空けないと魔法を撃てないわね」

「余計な情報を喋るなー!そしてこれはアーマーだと言っているだろう!!肩パッドじゃない!!あと俺にはクラウス=カッシュメイスという名がある!」

「だー!本当、魔法の使いどころが下手くそ!!なんでそこで火の魔法で直接攻撃しちゃうかなー!地面に火を付けて、逃げる場所を限定させたうえで相手の次の手を塞がないと、そんなへぼい攻撃当たらないんだって!!案の定、肩パッドにヤられちゃってるし……」

「人の!話を!!聞けーーー!!!」


男――クラウスが敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げしている間に、私も自分に向かってきた相手をひねりつぶす。クラウスの主張をテキトーに流しながら、段々と『この人イジるの楽しいな』なんて思い始めたところで、割入ってくる声があった。


「あはは!クラウス、なんだか楽しそうだね」

「どこが楽しそうに見える!!?」

「向こうからでも君の大きな声が聞こえてきたよ」

「クラウス様、向こうの掃討は全て終わりました」


声を掛けて来た男の姿を見て、私の脳と身体は硬直した――。


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