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横田広域警察24時  作者: 魚河岸ボブ
第2章 頑張れ、新任捜査官
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Cold Steel -3-

 奥多摩方面に向かう道を走りながら、ふと脇道へハンドルを切ってしまった。この道の先には古い神社がある。最近になって収蔵品を整理し一般公開を始めた、とニュース番組の地域コーナーで取り上げられていた。画面にチラッと映った燭台が目に止まって以来、気になっていた。

「あれって、やっぱ薬莢だよな…」

 5本のローソクを灯す燭台には、真鍮の円筒形の部品が使われていた。

 9×19mm(パラベラム)弾の薬莢にそっくりなそれは、数百年分のくすみをまといながらも、まるで何かを伝えるかのように鈍い輝きを放っていた。


- - - - -


 日野原の里を出てからしばらく、一行は何事もなく、着実に歩みを進めていた。


 斥候に出していた若手が駆け戻ってきた。若干の焦りが見える。

 「この先に和田派とおぼしき姿、凡そ五十。槍と刀、弓を持っており、恐らく我々と事を構える(・・・・・)つもりかと」

 圧力をかけるのか奇襲のつもりだったのか、遂に敵も動いたらしい。残念ながらこのまま素通りはできない。


 里に迷惑のかからない場所だったのがせめてもの救いだ。しかし、こちらは30人とはいえ、この辺りでは最強と言われる傭兵集団…たった50人で討つつもりなのだろうか。

 怪しい、と考えていたら斥候長の千代が戻ってきた。

 「山側の獣道からも30程来ている。恐らく挟み撃ちにするつもりだ」

 「敵も無能ではなかったらしいな。やむをえん。この先で迎え討つ。総員、戦闘用意」


 なるべく有利な場所で戦いたかったから、敵を見つけやすく、隠れやすい場所で遊撃戦を展開することにした。鼎一族得意のゲリラ戦で消耗を強要し、戦意を喪失させる。逃げてくれなければ殲滅するまでだ。幸い、迎撃地点として仕込み(・・・)を用意している場所も使うことができる。やるしかない。



 「そろそろ矢の届く間合いだ。動くなら今だぞ」

 戦闘準備が整ってから少しの間を置いて敵が現れた。千代の見立ては常に正確で、攻撃のタイミングを測るには都合が良い。落ち着いて指示を出す。

 「先頭と中頃を狙え。なるべくこちらの場所を悟られないように。放て」


 僅か30人でも我々がそれなりに勢力を維持してきたのは、戦闘能力がズバ抜けて高いせいだ。弓を使えば、常識では考えられない射程距離で正確に敵を射抜く。


 静かに矢が放たれ、敵が崩れ落ちる。まずは5人、恐らくこちらの位置は大体把握されてしまっただろうが、初手で1割近い戦力を削れたのは大きな戦果だ。


 「では行ってくる」

 敵の別動隊を攻撃するため、千代が数人の手練れを率いて山へ消えていった。


 動揺する敵に更に矢を射掛け、3人を倒したがこれ以上は厳しそうだ。喊声を上げながら突っ込んでくる敵を見据えながら刀を抜く。木立の中で槍を使うのは性に合わない。

 「斬られたい奴からかかって来い!」

 アドレナリンが身体中に回っていくのを感じながら、敵に斬りかかった。防御の薄い箇所に傷を負わせ、怯んだ隙に急所へ突きを入れる。戦い方は体が覚えていた。


 命のやりとりに躊躇は必要ない。仲間達も瞬く間に敵を無力化していく。中には深傷を負ったのか動かなくなった者もいたが、おおむね敵を圧倒していると見て良さそうだ。


「退け!退けー!」

 遂に敵が後退を始めた。こちらもパッと見て2、3割はやられていたから、正直ありがたい。数名に嫌がらせ程度の追撃を命じ、戦力を再編する。


 深傷を負って動けない者を荷車に載せ、軽傷者の手当をしているところに千代達が息を切らせて戻ってきた。

「獣道から手練れの連中が来るぞ!まだ20近く残っておる」

 こちらの戦力もほぼ同数だが、負傷者を守りながらの戦闘は不利だ。千代達で食い止められなかった相手だ。むしろ獣道から来た一団が主力と見ていいだろう。


 「千代、ここは任せてよいか?怪我人を連れて街道まで出る。深傷を負った者を馬に乗せよ!兵糧の荷車はうち捨てても構わん。3人ついて参れ」

 素早く出発準備を整えつつ、千代の顔を伺うと笑っていた。


 「頭らしくなったな、若造!任せよ、きっちりと片をつけてから追いかける。日が暮れたらお宮様でお世話になるから心配は無用ぞ」


 叔父の家から出迎えが来ることになっている地点まで急いで移動する。敵の移動経路から外れているので、合流さえしてしまえばどうにかなる筈だ。怪我人を引き渡したら本隊に戻り、全員で移動を再開する。どんなに遅くても夕暮れには合流し、夜には到着する予定だ。


 暫くして、合流地点で出迎えの者に会うことが出来た。何のことはない、「関東無双」を自称して槍や刀を振り回していた癖に、早々に隠居した父上が迎えに来ていた。曰く、「この儂がいれば百人力」だそうだ。

 怪我人と護衛を2人引き渡し、来た道を戻ろうとすると父上が声をかけてきた。


 「源氏、立派な頭になってくれたな。親としてこれ程の誉はない。今夜は酒に付き合え」

 「着くまで起きていてくださいよ、ではまた後程」

 しおらしい父の姿など見ていてむず痒いし、千代達のことも気にかかるので、早々に出発した。

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