女神とティータイム
「マコ、会いたかった〜!」
「こっちはそんなでもないんですが、話を聞きたくてですね…」
病室を覗くと、予想より暗い表情のナタリーがベッドで座っていたので思わず声を掛けたら、凄い勢いで抱きつかれた。よろけて壁に頭をぶつけたんだが…。
「いや〜、今回は焦ったよ。友達が怪我しちゃってゴメンね!やっぱ地上だとアタシの力も全然出せなくてさ。でも死んでないから良かったでしょ?」
「どうにか出来るなら怪我も防いでほしかったですがね」
「無茶言わないでよ〜!本来ならあの子、心臓ブチ抜かれて即死してた筈なんだから。地上に降りてる時に運命イジるのって大変なんだゾ」
「あ、そうなんですか」
文句の1つでも言ってやろうと思っていたけど、女神は女神なりに頑張ってくれていたらしい。これは感謝したほうが良さそうだ。
ナタリー目当てのスケベ共が案外多く、山積みになった差し入れのお菓子でティータイムとなってしまった。お茶を淹れながら聞いたところによると、
・女神は世界の歪みを矯正するために地上に直接干渉することがある
・今回の作戦参加もその一環で、異変を察知した女神が敢えて状況を作為し、被害者となるペコに直接関与することにした
・とはいえ地上に降りている間は力が減衰するので、弾の当たりどころを変える程度で精一杯だった
ということらしい。うーん、ファンタジー!
そういえば、運命に直接干渉できるなら、ここに私が送り込まれたのは何でなんだ?「楽しませろ」とか訳わからんことを言ってたけど…。
「あー、マコがここにいるのは、世界干渉の触媒みたいなイメージで捉えてもらっていいかしら?何のとっかかりもなく干渉しようとすると実は大変なんだよね」
「はぁ、そういうことですか。Wi-Fi中継器みたいなもんですかね」
「あ、そうそう!それいい表現だねアハハ!」
私は女神のルーターなのか…。まあ、いいけど。
「なんかアタシの扱いが雑になってない?別にいいけど」
「すいません、なんかその様子を見てたら、つい…」
甘い物を皿に山盛りにして齧り付く姿に畏敬の念ってのは抱かないかな〜。
「まあいいわ、アタシもフランクに接してくれたほうが楽だし。女神様らしくってのも結構息が詰まるのよねー」
ゔぁぁ、と女子らしくない声を上げながら背伸びするナタリーは、それでもやはり美人だった。
「これでも試行錯誤してやっとマコには迷惑かけずにモバイル中継器になってもらえるようになったからさ。これからも中け…使徒としてよろしく頼むよ!フツーに仕事してくれてたらいいからさ」
「はい。使徒って響きがカッコいいですね。ところで私以外のルーターって結構いるんですか?」
「うーん、近くにもいるけど今はヒミツ。昔色々迷惑かけちゃったからアタシが女神って言い出しづらくてさ」
へぇ、意外と気を使ってるんだ。
「意外とは余計よ。じゃあそろそろ面会終了の時間だから、また明日にでも。明日の朝には退院だからさ」
「はい。お大事に」
「ありがと!」
今までまともに会話したことが殆ど無かったけど、案外まともに色々考えてるんだな。あと3週間は研修が続くから、また何か事件が起こるかも…うぅ、何も起こらないでくれ…!
ー ー ー
「千代ちゃん、アタシのことすっかり忘れちゃってるかな…もう800年かぁ…」
微かに呟いたナタリーの声を聞く人は、誰もいなかった。
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