Avenge
全力出動が指示された場合、可能な限り早く可能な限りの火力を準備して出動することになっている。テロリスト相手に舐められたら終わりなので、可能な限り早期にあらゆる手段で解決することが求められる。逮捕よりも犯人の完全無力化が優先される。
私はパトロールを切り上げて待機所に駆け込んだ。班のみんなは既に準備を始めており、オジン先輩が「非常用弾薬」と書かれた弾薬箱を開けたところだった。
備え付けのショットガンとPDWは既に他の人が使うらしく、装弾済みの弾倉もショットシェルポーチも空になっていた。
「マコ、コレ使え」
オジン先輩が弾倉とカービンを渡してきた。多分米軍お下がりのくたびれたMk18mod0…あ、これならオジン先輩の持ってる弾倉を共用できる。
「今日入ってきたばかりのピカピカの中古品だ、精度もゼロインも期待するな」
「はい」
近接戦闘ならそこまで精密なゼロインもいらないだろう。それに50m以内ならフロントサイトだけでも当てられなくはない。
胸元のマグポーチに30連弾倉を2本、腰のポーチとズボンのポケットにガバメントの弾倉をありったけねじ込み、準備完了。
「テッパチ!」
「あ、はい!」
いけない、ヘルメットを忘れていた。慌てて自衛隊お下がりの88式鉄帽を被り、車両に飛び乗った。
「"目標は未だ現場に潜伏している模様。約30名、自動火器で武装し抗弾ベスト着用。A班は正面、B班左翼、C班右翼から制圧せよ…”」
私は端末から流れる作戦説明を聞きながら脳内でシミュレートを繰り返した。敵拠点に突入、無力化、逃走者の追跡、排除。
「"突入チームは回収済み、民間人の侵入なし、コラテラルダメージ影響なし…”」
救出ではなく回収…チームの被害状況を察してしまう表現だ。
なんか、凄まじく頭に来た。
現場に到着した私達は、左翼から圧迫包囲をかけ力押しで突入を試みた。反撃は弱く、ありったけの個人携行火器を投入したYPDにとってマシンガン程度は大した脅威にもならない。
火点を潰し、突入。訓練通りのスムーズさで室内をクリアリングし、時々出てくる犯人を次々に仕留めていく。私もMk18を構えながらズンズン進んでいく。数度の交戦で残弾が心許ないが、元々私は拳銃がメインなのでいざとなればスイッチすればいい。拳銃が得意って訳でもないけど。
前進した班のメンバーから1人外れ、隠し部屋やトラップがないか工作室のような広い部屋で検索していたら、どこから現れたのか鉄パイプを持った男が襲いかかってきた。すかさず発砲したが、1発目を外し、まさかのジャム。舌打ちしつつMk18を投げ捨て、ガバメントを抜いた。
プレートキャリアを着た敵の体の中心線に向け2発を速射、動きが鈍ったところにモデファイドウィーバースタンスで更に3発。
もんどりうって床に倒れた敵に狙いをつけつつ、鉄パイプを蹴り飛ばす。どうやら頭や心臓には被弾していないらしい。手足を素早くタイラップで拘束し、報告する。
「B-3マコ、マルヒx1確保。救急手配要」
「"了解、拘束後捜索に復帰せよ”」
「了解」
班の他のメンバーは隣の部屋で派手に銃撃戦を繰り広げ、それが決着したところで犯人グループの無力化が宣言された。
投げ捨てたMk18を拾い上げ、故障排除して班に合流した。あちこちガタがきているので、正直あまり使いたくない銃だ。せめてオーバーホールぐらいしないとダメだ。
犯人グループが全員回収された後、YPDのメンバーも撤収した。別に仕事が無くなった訳ではないので、後片付けが終わったら本来業務に復帰する。
「勤務明け、病院に行くだろ?」
班長から声をかけられた。
「え?病院ですか?」
「ああ。あの突入チームの子、面会できるらしいからお見舞いに行ってこい」
…あれ、ペコ生きてたの⁈
「はい、行ってきます」
「ついでにフランスの刑事さんにも挨拶しとくといい。なんか会いたがってるらしいぞ」
「あぁ、あいつはどうでもいいです…」
モテる男は羨ましいねぇ、と笑いながら班長がバシバシと肩を叩いてきた。
一気に気が抜けてしまった。ペコが生きていてよかった。




