ー 初上番の日 ー
皆さんこんにちは。マコです。現在私がいるのは福生市内 第3アジト。…遂に私は捜査課の一員として任務に就くことになりました。
YPDでは上番日の夕方から下番までの時間を待機室で過ごします。合宿みたいですね。何もない日はデスクワークに訓練にと日中を慌しく過ごし、出動に備えて翌朝まで待機するという1日を過ごします。明けの日も訓練や他のチームへの増援に入ることがよくあるそうですが…。
「強行班第3待機室、兼ねてパニックルームだ。米軍ハウスをMRAPの装甲板で補強してある。驚いたろ?」
同じチームになるベテランから案内を受けながら、アジトのファンシーな外観に似つかない武骨な内装に目を奪われていた。…いや、ここ米軍ハウスだよね?何でこんな要塞みたいになってんの⁈
「小銃弾くらい屁でもないから安心してくれ。万が一のためにショットガンとPDWが備え付けてあるから、後で使い方を教える。まあ、小銃が使えるなら難しいことはない。
冷蔵庫は共用、メシは買い出しか自炊をその日の気分で決める。あっちにいるのは同じチームで今日の上番者…コーディ、ブック、オジン先輩。夕飯の時に自己紹介してくれ。
みんな、晩メシどうします?」
「イザムの皿うどん」
「バーキン」
「蕎麦…いや、そうだな…」
見事にバラバラだ。こんなんでチームとしてやっていけるのだろうか。
しかし、疑問はすぐに解決した。
「新人が来たことだし、ピザ買ってきてパーティっぽくしようや。持ち帰りなら2枚目半額でしょ?」
「「「異議なし!」」」
見た目一番歳上のオジン先輩が発した一言で一瞬にして決まった。素晴らしい。見事なまでの年功序列だ。
「じゃあ私が買ってきますよ。4枚で足りますよね?」
「サンキュー、頼むよ。」
見た感じジェントルマンなコーディさんが買い出しを引き受けてくれた。
私は会話のきっかけを作りたくて、どうでもいいことを教育係のゼンジさんに尋ねる。
「あの、皆さんの名前の由来は…?」
「ああ、残念ながらよく知らないな。自分のは説明できるけど、人様に自慢できるようなもんじゃないよ、ハハハ」
左様ですか。
「とりあえず、コーディは元々警察官、ブックと俺は出向組でよ。ちなみにオジン先輩は…多分自衛隊だ」
「多分?」
「ああ、陸自の匂いがする」
腰のホルスターに入れたガバメントの感触にようやく慣れてきたこともあり、私はリラックスしつつあるようだ。会話にも若干余裕が出てきた。コミュ障の私がこんなに頑張れるとは…!
「そうそう、俺のコールサイン、ゼンジってのは昔全自衛隊武道大会に駐屯地代表で出場してさ、そん時の…」
話好きのオッチャンで良かった。コミュ障の私でも会話が止まらない。というかよく考えたら一方的に話しているのを聞いているだけだ、これ。
しばらくゼンジさんの話を聞いて、もといゼンジさんと話をしていたら、ピザの買い出しに出ていたコーディさんが帰ってきた。
「さて、君のコールサインの由来も聞かないとな。アルコール抜きだけど折角の歓迎会だ、みんなで自己紹介から始めよう」
「あ、ありがとうございます…」
ビール代わりのコーラで乾杯して、歓迎会が始まった。
夜間飛行訓練に飛び立つC-130のエンジン音に包まれながら、ゆっくりと日が暮れていく。
福生市の夜が始まる。




