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異世界から持ち帰ってきた相棒をオタク沼に落とそうと思う(いせぬま)  作者: ニキ
1-4:?̵̢͖͒̿͝?҉̧̱̬̭̎̆̌͝?̴̧͎͖̀͡

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40/44

1-4-C2:男子高校生宅のペットな彼女

「いやその距離感で付き合ってないの!? 確か異世界に七年居たんだよね!?」

「エミとの付き合いだけなら、五年と少し?」

「そんだけ時間あってなんでそうなんの!? この子(エミ)こんなに可愛いのに手を出してないの!?」

「それ、出す理由になってなくね?」

「何言ってんだコイツ」


「……ねぇエミちゃん? 例えば上城くんに絶体絶命のピンチとか救われたりしなかった?」

「え、結構な回数救ったり救われたりしてきたけど?」

「今、恋愛感情は?」

「別に……? 今更じゃない……?」

「なんで!? 普通、女の子は絶体絶命のピンチを男の子に助けられたら好きになっちゃうものなんだよ!?」

「え!? 普通、女の子って絶体絶命のピンチを男の子に助けられたら好きになっちゃうものだったの!?」


 対面で発狂するそれぞれのオタクちゃん達。止まらない質問へざくろには俺が、M.Mにはエミが答えるものの、一向に落ち着く様子が無い。

 なんかこの流れ昨日(1-3)も見たなぁ……てかこの子ら、今日一日ずっとその認識(・・・・)で俺らと一緒にいたの? なんか嘘ついてたみたいで若干申し訳無いな……


「えー? じゃあ私ってあんたのこと好きなの? ……いや好きではあるけど、うーん? 別にこれ恋愛感情じゃないわよね?」

「多分それ友愛とか親愛だよ」

「それではあるけど、改めてお前から定義されるのだるいわね」

「じゃあ試してみよう。エミ、それあーんしてー」

「まじでだるい。死ね」

「ありがと、いただきまーす」


 先程届いた料理を指差せば、返答は切り分けたハンバーグ(一切れ)のおすそ分け。

 俺のライスの上に置かれたそれをパクり。うん、美味い。デミグラスソースが効いている。


「ね?」

「何が『ね?』なの!? ラブラブ出来立てカップル型では確かに無いけど、イコールで付き合って無いの説明にはなってないよ! もうこれただの熟年夫婦型のカップルじゃん!?」


「──てかあっくん(・・・・)もあっくん(・・・・)で、何さも当然のようにご飯食べ始めてるの!? まだこっちの疑問解消してないんだけど!?」


「いやお腹空いてたし……



 ──ところで、あっくん(・・・・)って何?」


「ミ゚ッ」


 気になる単語を拾って聞き返せば、賑やかだった会話のリレーがピタリと止まる。

 今までに一度も呼ばれたことの無いあだ名だなぁと、なんとはなしに聞いただけなのだが……件のざくろはクソ焦った顔をしながら、口元を両手で硬く塞いでいた。

 ……ほう? 失言だという認識がある、と。ならこの場での言い間違えじゃ無さそうだな。


「ねぇざくろ。あっくんって何?」

「あー、それはー、えぇっとですねぇー…………」

「ねぇざくろちゃん。あっくんって可愛い呼び方何?」

「なんでM.Mも急に矛先こっちに変えてくるの!? 私達今までエミちゃんの話してたよねぇ!?」

「今はこっちの方が興味惹かれるから。で、あっくんって何!?」

「言い間違えっ! 言い間違えです!!! これで通りませんか!?」

「「だめ」」

「ちくしょう……ッ!」


 M.Mの裏切りと、興味津々なエミからの追求。最早俺以上に気になってる女性陣二人の姿勢に、逃げられないと悟ったざくろは真っ赤な顔で席に座り直す。

 いや、俺は別にそこまで気になってはいないからね? だからそんな深刻そうな顔せんでも……


「………………脳内(ボソッ)」


 ワクワク顔の二人の圧に負け、やがてざくろが絞り出した理由と言うのが……


「…………その、脳内でそう呼んでたやつが、焦ってリアルに漏れた、だけです……! 私、友達少ないから、あだ名呼びとか憧れてて、勝手に頭の中でそう呼んでいましたぁ……っ!」


 ……という、なんとも(俺には)コメントに困るものだった。


「どうしようM.M、ざくろめちゃくちゃ可愛いんだけど」

「そっかぁ! ざくろちゃんはあだ名呼びに憧れてたんだぁ! じゃあさじゃあさ、私もざっちゃん(・・・・・)とか呼んだ方が良いかな?」

「こんっのっ……! エミは兎も角、お前だって友達少ないくせに、これ見よがしに私だけ弄りやがってぇ……! ちょっとおっぱい大(お)っきいからって調子乗ってんじゃねぇぞ! なんでこうも毎回臍出しの服着てくんの!? 私への当て付けか!?」

「ざっちゃーん? 論点のすり替え見苦しいよー? まだざっちゃんが弄られるターンだからねぇー? あと男の子の前でおっぱいとか言うのやめてくれる?」

「そんなおっぱい強調した服着ておいて!?」

「丈長いの着ると着膨れする(太って見えちゃう)んですー! こんなに腰細いのに! 胸の薄いざっちゃんには分からないかー!」

「お前を殺す」


 アニソンランダムダンス終了後に着替えたのはざくろだけで、エミは変わらず異世界制服。

 M.Mも昼間と同じ、黒と薄桃(アポロカラー)のジャケットに、胸に押し上げられた臍丈の黒インナー、紺のショートパンツという、ガーリー寄りのストリート系ファッション。

 客観的に見ると、確かに彼女の姿は凄い。エミより大きい胸はとても目立つのに、マジで細っせぇ腰を隠すインナーは、短過ぎて臍ちらしている。

 アイドルのオフファッションとして普通なのかな? とは考えたけど、そんな理由があったのか。着膨れって(胸が大きいと)大変だなぁ。


 ……てか、


「……ちょっとおっぱい大(お)っきかったら調子に乗っていいのでは?」

「ねぇアラン、私の胸って調子乗っていいサイズかしら」

「持ち上げて提示してくんのやめてくれない?」

「スタイル負けたの、ちょっと悔しいのよ」

「へぇー(無関心)」


 エミにもそういう感情あったんだ。

 ご飯冷める前に食べちゃおう、ここは男には居辛過ぎる。



 ****



「……雨、止まないねぇ」

「もう五時近いけど……あっくん天気予報大分前に見てたよね?」

「止むなら六時以降だってさ」

「えー? 大分喋ったわよぉ? ドリンクバーでもうお腹たぷたぷだし」


 ファミレス内を見渡せば、数時間前のピーク時が嘘だったかのように閑散としていた。

 ご飯を食べ終わり、直近じゃ雨も止まなそうだと諦めた客から次々店を後にして、残っているのは4組程度。

 俺達のテーブルはと言えば、並ぶのは空になったドリンクグラスのみ。

 食べ終えた料理の皿はとうの昔に店員さんに片付けられていて、残ったドリンクバーの権利を行使しながらかなり長いこと喋っていたが、それでもまだ雨が止む気配は無い。


「……スマホの充電足りなーい! あっくん魔法でどうにかなったりしない?」

「高確率で壊れていいなら」

「却下! ……あークッソ、充電器刺すの忘れてなければなぁ」


 あだ名呼びがバレてから一時間以上が経っている。最初は恥ずかしそうにしていたざくろも、今は完全に吹っ切れて俺を『あっくん』と呼んでくる。

 距離感を詰めるのが上手いのか下手なのか、この生物への疑問は未だに尽きない。


「そう言えばざくろ、今朝シャワー浴びる前に短時間だけ刺してたわね。満タンまで足りなかった?」

「うん、出発時に60%くらーい……オールのお泊まりに浮かれてて、起きてから無いのに気付いたの」

「今は?」

「16」

「終わりね」

「終わりだねぇ」


 慈悲なくエミが言い放ち、M.Mがケタケタ笑う。そう、誰もモバイルバッテリーを持ってきていないのである!

 ……さて困った。俺のスマホはまだ40%あるが、これもいつまで持つか分からんぞ。

 雑談で時間を潰そうにも、相手は出会って二日のざくろと、今日初対面のM.Mだ。

 共通の話題となるアニソンランダムダンスなら、ここ数時間でほぼ掘り尽くしたし、雨が止むまで本当にどうしよう。


(駅まで遠いんだよなぁ……コンビニも近場に無いし、傘を買うにしても…………あっそうだ)


「会計まだじゃん」

「あ、本当だ」


 こんだけここに長居してるのに、お会計してないマ?


「帰るのアラン?」

「どちらにせよ先に済ませて問題無いでしょ……伝票幾らだ?」

「7800ちょっと。ざっちゃん割り勘でいい?」

「二千出すー」

「じゃあうちも同じく」

「なら俺が三千八百ね」

「「……え?」」

「……いやそんな顔されても、だってエミお金持ってないし」

「「…………あ」」

「ペットのお世話偉いわねー。ご馳走様、アラン?」

「はいはい」


 財布は……まぁ足りるな。後で銀行から下ろして来ないとダメだな、思ったより出費がデカ──


「いや待って待って待って!? あっくん今日エミの分まで全部払ってたの!?」

「え、そうだけど? 仕方無くない?」

「……あの、イベント代とかも?」

「まぁ、しょうがなくない?」

「「いやいやいや……!」」


 "お前それやばいって!"みたいに異口同音でハモられましても、現実は変わらないしなぁ……


「現状私ってこいつにおんぶにだっこなのよね。立場としてはほぼ愛玩動物と変わらないわよ」

「インモラル……!」

「これまで異世界で死ぬ程助けられたし、この程度は負担でも問題でも無いんだよな。お金は俺が稼げばいいし」

「ねぇあっくん? その歳でヒモ彼女飼育はマジでヤバいよ?」

「心外ねざくろ。私だってちゃんと家賃は払ってるわよ? 可愛い払い(・・・・・)で」

「可愛い払いでって何!?」

「え? 例えばそうね、はいアランこっち向く」


 言われるがままに横を向けば、横向きダブルピースで首をこてんと傾ける、超絶美少女が眼前に。


「にぱー☆(天下無双の覇権笑顔)」

「あ^〜効くゥ……代わりにお金払っちゃう^〜」

「ダメだこいつら早く何とかしないと」

「大体の人に可愛いとは処理されるけど一定数にどうしようもなくガチで嫌われるタイプの娘(子)じゃん!?」


 それどこの爆豪〇(勝)己? ざくろの例えが一々創作者視点なんだよな。

 ……でも実際問題、エミがこっちに来てから金の飛んでき方はエグいんだよな。家具や食費、イベント代とか諸々で、残金が減りはしてもまだ(・・)増えてねぇ。


「……いやまぁ、暫くは大丈夫だよ。生活費は貰ってるし、向こうのアイテムの換金もしたし、何より高時給のバイト入ってるし」

「え? あっくんそれ大丈夫なやつ? もしかして危険なやつじゃ……!」

「雇用者君だけど」

「……そうじゃん! あっくん私の家庭教師じゃん!? え!? ってかそんな理由で登録してたの!?」

「え? じゃあ間接的にはざっちゃんのお財布が後々のエミちゃんの生活費になるってこと? 草」

「草じゃないけど!?」

「あら、ならざくろにも可愛い払いした方がいいかしら? 大丈夫? 可愛い足りてる?」

「クソ! 私から搾れるだけ搾り取る気かコイツ……!? オタクの弱み(可愛いに抗えない)に付け込みやがってぇ……! これそもそもさぁー! エミで(・)お金稼げばいい話じゃないの!?」

「……で(・)?」


 半ギレでバッグを開き、ざくろが取り出したのは……SDカード?


「昨日のアニメ視聴会(・・・・・・・・・)のリアクション(・・・・・・・)録画データ(・・・・・)。渡しそびれてたけど、これ使ってエミのチャンネル作れば?」

「ちゃんねる?」

「……それも考えはしたんだけどさ」


『はい』と差し出された物を受け取り、イマイチピンと来てなさそうなエミに渡す。

 黒く小さなチップ。異世界人である彼女にはそれが何を意味し、何が保存されているかは分からない。

 興味深そうに眺めた彼女は、やがて訝しげにざくろに問う。


「これが、お金にどう関わるの?」

「エミ、あのメズマライザーって覚えるために何を見たの?」

「え? 動画? だけど……」

「エミちゃん。この世界ではね、動画をめっちゃ人に見てもらうことでお金を稼ぐことが出来るの」

「へぇー、便利ね」

「だからね……それの中に入ってる映像を動画にして出したら良くない? って話をしてるの!」

「……いや、理屈は分かったけど、価値あるの? アレ(・・)」


 ざくろとM.Mの噛み砕きまくった説明を聞き、理解した上で問い返すエミ。

 "自分のアニメの反応映像が、動画として見られるようなものなのか?"という、とてもシンプルな彼女の疑問点。

 これに答えたのは──


「──あるけど、多分伸びないかな」


 ──意外にも、ざくろだった。


「自分で言っといてそこ切るの!?」

「M.M、これの中に入ってるの『中二病でも恋がしたい』だよ」

「古っっっる!? 今の子誰が見るの!?」

「俺も同じ意見。アニメリアクション自体は強いけど、題材が今向きじゃない。エミってビジュは最強レベルだけど、顔出しで投稿するリスクと期待値が釣り合ってない。後、俺に編集技術が無い」

「……あ、反応動画自体は需要があるのは確定なのね?」

「「「確定」」」


『最初のオタク沼に落とすアニメピック』として中二恋は問題無いんだけど、仮にYouTubeの収益化を狙ってリアクション動画を作るとなると、作品がちょっと古いんだよな。

 題材的には"人生で一度もアニメを見た事がない異世界人"×"アニメリアクション"だから、それが"見たいですか?"と聞かれりゃノータイムで頷きはするんだけど……選んだ初手が市場に合わない。


「そもそも今のご時世、アニメリアクション動画って収益化難しくない? エミの可愛さで人を釣れても、収益化まで大分不安定だと思う」

「ねぇさっきからお前(アラン)だるい」

「市場で言えばリアクション動画で強いのって海外だしね。だから……リアクション動画も扱う、エミの日本文化体験チャンネルを作ったらどう? ってアイデアを提出致します!」

「──なるほど」

「ざっちゃんプレゼンに必死だね」

「私のお財布がかかってるからねぇ!?」


 ……ざくろの発想、これ良くね?

 日常を撮る=それが全て動画のネタ。面白さはエミのビジュと異世界人(世間知らず)特有の反応で担保されてるし、アニメリアクションだけに拘る必要も無い。

 エミの世間への露出リスクは……いや、収益化の可能性はかなり出たか? なら許容範囲内? 無意味な顔出しにはならなそうだ。


(……ネックは、俺の動画編集技術か? いや、でもこれ、そこまで労力はかからなそうな気もするけど……期待値は? ある。ならやるか? 試さない理由が特に無いな)


「あっくん。そもそもとして、メズマライザーMV生身再現で地方トレンドに乗っちゃってるし、写真も拡散されてるから、どうやったって世間への露出は避けられないんじゃない?」

「それ言われるとますますだな……現状ビジュと異次元フィジカルを無策で晒しただけだし、リスクは先に払っちゃってるのかコレ」

「あれは流石に目立っちゃってたからね〜……それこそあの動画を上げたらバズる説ない?」

「え!? M.Mあれ撮ってたの!?」

「ごめんざっちゃん撮ってない、エミちゃんに見惚れてた」

「紛らわし……」


「──ああそっか。ダンスも動画になるの?」


 オタク三人の会話を、SDカード片手に外から眺めていたエミが、何かに気付いたように言葉を投げる。

 綺麗でよく通る声。ふと漏れた呟きのようなものでさえ、それは俺達の会話を割る。


「ふふ、丁度踊り足りなかったところなのよ。数時間座りっぱなしだし、雨でイベント潰れちゃったし……」


 窓を満たす結露。

 そこに細い指で『ダンス』と書き込み、丸(・)で囲む。

 楽しそうな横顔は、ガラス越しの曇天を向いていて。

 会話が途切れて、全員が彼女を見る。

 見させられる。

 目を離せないような引力が彼女から放たれていて──


 蒼穹のような瞳が、そのレンズに雨を写していた。



「──ねぇ、今から踊りに行かない?」

え!? 普通女の子って絶体絶命のピンチを男の子に助けられたら好きになっちゃうものだったんですか!?(クソボケ)


備考:サイズ

何とは言わないけど

M.M>>エミ>>彼方(義妹)>ざくろ>あっくん

ざ「ちょっと大っきいからって調子乗りやがって!」

あ「ちょっと大っきかったら調子乗っていいのでは?」


備考:あっくん

ざくろ視点、出会った当初から脳内ではあっくん呼びしてました

偶に「あっ……じゃなくて!」とか言ってたのはそれ

脳内では友達を渾名付けて呼んでたの可愛いね、萌えキャラかな?


つまり大体黒木智子(わたモテ全人類読め)




備考:お金

最初っから、嘘偽り無く、エミはあっくんの負担です

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