勉強会、意味はない
テスト週間が始まると、教室の空気が少し変わる。
みんな急に真面目な顔をし始める。
単語帳と睨めっこしてる子とか。
休み時間に問題を出し合っている子とか。
「偉すぎる」
ミオが机に突っ伏して呟く。
「まだ何もやってない」
「私も」
「終わりじゃん」
「終わりだよ」
窓の外では、
夏前の強い日差しが校庭を白く照らしていた。
⸻
「ねえ、今日勉強する?」
放課後。
帰る準備をしながらミオが言う。
「珍しいね」
「このままだと赤点取る」
「それはまずい」
「ということでファミレス」
結局、
勉強するのかしないのかわからないまま、
私たちは駅前のファミレスに入った。
冷房が涼しい。
ドリンクバーの機械音。
ガラスの皿が触れる音。
夕方のファミレスって、
なんだか少し眠い空気がある。
⸻
参考書を開いて十分後。
ミオはもう落書きをしていた。
「集中力なさすぎ」
「だって古典意味わからん」
「さっきまでやる気だったじゃん」
「人類に勉強は向いてない」
私は笑いながらシャーペンを回す。
窓の外は、いつの間にか夜になっていた。
駅前のネオンが滲んで見える。
制服姿の高校生。
仕事帰りの人。
塾へ向かう小学生。
みんなそれぞれ、
どこかへ向かって歩いていく。
「大人って疲れそう」
ミオが急に言う。
「急にどうした」
「いや、なんか」
窓の外を見ながら、
ミオはストローを回す。
「ちゃんと生きるの難しそう」
私は少し考える。
でも、
その答えはまだ持っていなかった。
だから代わりに言う。
「ミオならなんとかしそう」
「適当に言ったでしょ」
「そんなことない」
ミオが少し笑う。
それからまた、
私たちはだらだら勉強を続けた。
全然進まなかった。
でも、
たぶんそれでよかった。




