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95日目 帰宅部

 4月5日水曜日。長きに渡る休眠期間は私から平日の概念を奪い去っており、この日起床したのは午前10時。


「……蘭子ちゃん!?今何時だと思ってるの!?」


 悲鳴のような陽菜ママの声を受けて、私だけのベッドの上で起床。陽菜もこーちゃんもそれぞれ向かうべき場所へ向かったらしい…


「……おはよう。朝ごはんなに?」

「……言ってる場合か!学校」




 リビングでパンを貪りながらテレビを見てた。

 巨大隕石は順調に地球へ向かってきてるらしい。偉い学者らしい白髪のおじいさんが何やら深刻そうな顔で喋ってる。


『このままの軌道で行くと……』


 半分寝ぼけ眼で画面を眺めてたけど頭に情報は入っこない。ただ、どーやら事態は不穏な気配を醸してるらしい……ってのは伝わってきた。

 私からしたらのんびりした話でちょっとおかしかった。


 地球滅亡まで今日入れて6日……人類はいつ気づくのか…?


「ママン」

「……あなたのママじゃないわよ」

「……最後にみんなとどっかに出かけたいな」

「……最後って?」


 主婦にとっては画面の向こうのまだ不確定な地球の危機より、今日の夕飯だ。

 鞄を取り、桐屋蘭子、登校。




 電車でぼんやりスマホを見てたら着信が入ってるのに気づいた。それは混沌の母、白浜玲美からだ。

 不思議だ……人生の終わりを前にしてこの女には何の感慨も湧かないよ…



 ふたぐん。目を覚ましました



 だってさ。


 なんでもない日常を繰り返す人々の方がもっと不思議で私は眠くなってきた…

 ……連絡しよう。


『……もしもし?』

「あ?もしもし?私、わたし」

『どなたですか?』

「私だって」

『え?』

「わ、た、し」

『……マイ、プリンセス?』


 なんで分かんだよキッモ。

 白浜には連絡しない。


「私決めたよ」

『……そうか』


 Y〇uTubeチャンネル『キリヤランコの炎上飯』その行く末……

 一晩、考えました。

 結論…


「解散しよう」


 私は宣言するように言った。電話越しに流れてきたのは深い沈黙。

 息を吸い込んで肺に空気を溜めると体が生まれ変わるみたいだった。活性化する脳細胞に語りかけながら、結論を告げた。


「中途半端で終わらせたくないの。楽しかったから…」

『……中途半端?』

「もう、地球が終わるから」


 カンパルノ妹、無言。


『…なんか、天体が地球に近寄ってるらしいね。このまま行くと、0.05%くらいの確率でぶつかるって』


 まだそんなもんなのか…少し確率が上がったかな?その数字を根拠に深刻な顔をしてた学者の顔を思い出す。


『ぐすっ……』

「泣いてんの?」

『別に……ただ…ぐすんっ…分かったよ。それが君の結論なら……』

「それでさ、最後に動画撮ろうよ」


 *********************


 既に一日が始まってるらしい学校に遅ばせながら参上した私は教室へ重役出勤。誰よりも遅くやって来る事で誰がこのクラスの主なのかをみんなに知らしめる--


 ……と、思ったら教室には二人しか居なかった。


 まさか……むしろ早すぎたのか?


 戦慄してたら私は教室内の一人の顔が記憶に強く刻まれてる人物だと気づいた。

 あの、ミレニアム懸賞問題だ。


「……あ、おはよう桐屋さん…二限は体育だよ?……女子は……体育館…」


 今声をかけてきた奴は違う。彼の名は紅林くればやし。確かクラス委員なる仕事を与えられし男。

 そうか体育か……

 しかしなぜこの二人は教室に……?

 もしかして……そういう関係?


 邪推してたら気づいた。ミレニアム懸賞問題が机の上に広げた体操着をじっと見つめてるのに。

 体操着は敵陣に潜入でもしたんかってくらい薄汚れてる。


「……ふーん」


 全てを察した桐屋蘭子。ミレニアム懸賞問題に歩み寄る。棒立ちのミレニアム懸賞問題は私を一瞥したが、無言だった。


「……何してんのさ」


 私は紅林に向き直る。


「何してんのさっ!!」

「へっ!?」

「今から着替えるのよ!!」

「……女子は更衣室あるよ…?(汗)教室で着替えるのは男子……(汗)」

「あたいはここで着替えるのよっ!!出てってよっ!!早く出てって!!」

「お、落ち着いて……」

「きゃーーっ!!へんたーーいっ!!」

「出ていくからっ!…なんなんだよ全く」


 半泣きになりながら消える紅林を見送ってからミレニアム懸賞問題の前で鞄を下ろす。体操着の白は泥で汚されてる。明らかに普通に使ってなったものとは思えない。

 私は自分の体操着(フリマサイトなら十万は堅い)をその上に押し付けるように乗せた。


「……え?」

「着ろよ」


 イケメンとは私の事だ。

 ミレニアム懸賞問題はぽかんとした後「……いらない」とツンデレを発動。しかし私の防御力を突破するほどの破壊力はなかった。再び「着ろよ」と告げる。

 ミレニアム、黙る。


「私、今日体育出ないから」

「……いらない」

「生理なんだよ。言わせんな…恥ずかしい…///」

「……」


 渾身のカミングアウトを前にしてもこの鉄仮面は崩れなかった。

 ただ無言のまま私の体操着(フリマサイトなら十万は堅い)を受け取って一言「ありがとう」と口にした。


 それでいい……










「桐屋、遅刻だぞ」

「生理で遅れました」


 体育館にやって来た私にセクハラをぶつけてくる体育教師に私は毅然とした態度で挑む。「お前なぁ…」と苦言を呈そうとする体育教師(初対面)に対して「入学三日目でもう授業とかおかしくないですか?」と正論をぶつける。それでも不満げな体育教師(初対面)へ「生理のことで揶揄われたって教育委員会に報告します」って言ったら初体育の見学を許される。


 初めて♡の体育はバスケだった。既にチーム分けが成されてて試合が始まってる。

 遅れてやって来たミレニアムが適当なチームに配属される。その浮かない顔つきは配属初日でバイオテロに巻き込まれた新人警官のそれだった。




 しばらく壇上で試合を眺めてたら奴を発見したので、降りる。

 激しく躍動する乙女の間にずいっと入っていく。


「わっ!?なにっ!?」「ちょっと!危ないじゃんっ!!」


 三人を華麗に抜き去った敵を止める為に立ちはだかっていた女子の前に私が立ちはだかる。この女は昨日…女子トイレに雨を降らせた、初日に私に声をかけてきた……


「…………ジェーン・ドゥさん」

「違うけど…来宮だけど……(汗)」


「ちょっと邪魔っ!!」ってドリブルを続ける何者かからボールを奪い取ってドリブルしながら来宮と対戦する。勝手に。


「桐屋ぁ!見学しとらんかっ!!」


 先生が吠えてたけど知らん。


「くっ……隙がないっ!?」


 ボールを奪い返そうとする来宮も私のテクニックに戦慄してた。


「ねーねー訊きたいんだけどさ。ミレニアムとくるみんってもしかして中学とか同じ?」

「くるみん…?ミレニアム……?誰?」


 左からボールを奪い取ろうと近づいてくる女子を躱しながらゴールへ疾走する。来宮が慌てて後を追う。が、ドリブルしてる私の方が遥かに早かった。

 ゴール下を守る女子が前に出る…誰かと思ったら陽菜だった。


「昨日トイレで水ぶっかけてた子だよ」


 来宮の顔色が変わる。


 ついでに陽菜など敵ではないのでがら空きの股下にボールを通してそのまま抜ける。「……は、速いっ」ってバトル漫画の敵みたいなリアクションをする陽菜の背後でボールを取る。

 目の前にヘルプに来てた二人の女子が「行かせないっ!!」って最終防衛ラインを死守する。

 突っ込んできた二人の前で急停止しながらバックチェンジ。二人が目でボールを追おうとする。


「陽菜っ!」

「……えっ?(汗)」


 そのままパス。


「うてっ!!」

「……あっはい」


 華麗な連携により陽菜に繋いだパス。陽菜は死んだ目のまま正確な照準でシュート。見事、ボールはゴールに入った。


「何してんのさ美堂さん!」「自陣にゴールしてどーするっ!?」

「…………いや…パスされたから…(汗)」


 オウンゴールに叱責されてる陽菜を哀れな目で見つめてたら来宮が睨んでた。


「……で?どーなの?」

「……なに?急に」


 その目は凶暴そのもの。初日の人懐っこさは皆無。


「いやぁ…なんか仲良さそう?だったからさ?なんとなく?あの子と友達になりたいから紹介してよ」

「……は?」


「こら!桐屋っ!!」って指名手配ポスターみたいなフレーズで私に寄ってきた先生から強制退場させられる。


「いやっ!!離してっ!!ケダモノ!!」


 引きずられる私を来宮がじっと睨みつけてたから、屁こいておいたよ。


 *********************


 壁ドン…それは選ばれし人以外がやれば脅迫、暴行に問われる事が必須な蛮行。そんな危険極まりない行為に今、桐屋蘭子が晒されていた……


「……体操着は洗って返す」


 ミレニアムは至近距離からそう言った。


「そのままで結構…桐屋家には桐屋家のルールがある…クリーニング代だけもらおうか…」

「……やだ」

「離れてくれない?私、今汗かいてるんだ。私のフェロモンに当てられたお前が私を襲わないとも限らない」


 体育見学だった私の方が汗をかいていた。


「……さっきのあれは何のつもり?」


 さっきのあれ……私の華麗なるプレーの事を言ってるのだろうか。


「バックチェンジのコツはしっかり膝を曲げて…」

「違う。来宮に突っかかったでしょ?…やめて」

「親切でやったのに……」

「あれのどこが親切なの?」

「お前……いじめられてるんだろ?」


 ミレニアムの表情筋は変わらない。


「私、実は正義の味方なんだよね。だから困ってる人を見たら助けないとアレルギーが出るんだ。ここは私を助けると思って、助けられてくれないか?」

「……私に関わるとあなたもいじめられるよ?」

「別にいいもん」


 どうせあと5日で地球終わるし…


「何してるの?」


 その時刺すような声がミレニアムを襲う。私達をじっと見つめるのは風花さんだ。そう、この子の事が気になってる風花さんだ。

 風花さんは敵意に満ちた鋭い眼差しを向けている。対してミレニアムは実に冷たい眼差しを返してた。ミレニアムが私から離れる。

 すぐに割り込むように私の横にスルッと入ってくる風花さんから、鼻がもげるかと思うくらいいい匂いがした。


「くんかくんか」

「桐屋さんに何か用?」

「……別に」

「くんかくんか」


 人の好意を素直に受け止めれないミレニアムはくるっと踵を返して教室に向かって引き上げていった。









「私、Y〇uTuber引退することにしたんだ」


 昼休み、中庭でテーブルを囲むイツメンに蘭子は宣言した。真っ先に反応したのは風花さんだ。少し寂しそうな顔をしたよ。


「面白かったのに…」


 まだ動画を二本しかあげてないチャンネルのコアなファンになっていたらしい風花さんはらしくもなくしゅんとしながら、陽菜の弁当から卵焼きを奪い去っていく。


「……え?(汗)」


 陽菜、驚愕。


「それがいいよ。学生の本分は勉強。それで今日どうする?放課後部活の見学行く?」


 陽菜の卵焼きの代わりにたこさんウィンナーを恵むおかんがそんな提案をした。部活という単語に昨日の事を思い出した私は思わず風花さんを見るけど、当の本人は涼しい顔をして干物を齧ってる。


「……蘭子、そういえば女子バスケ部の部長がさっき教室に来てたよ?スカウトしに」

「桐屋さん運動も出来るんだね。素敵だよ」

「運動“も”?…風花さん、蘭子は運動と歌しか出来ないよ?」

「シバくぞおかん」


 まぁ入部は強制らしいから部活を選ばないという選択肢はない。放課後物色に行くことに決まった。


「そうそう、さっきの壁ドンさんなんだけど…」


 と風花さんが話しかけてくる。


「……壁ドン?」

「去年法律で禁止された、あの?」


 そうなの?


「同じクラスの佐藤るいかさん」


 陽菜はすぐに「……ああ」って反応したけど、クラスの違うおかんは話題についていけなくて悲しそうだ。流行から取り残された女、おかん…


「ちょっと調べたんだけどね、やっぱり来宮って子と中学同じみたい。二人と同じ中学の子に聞いたら、お茶を濁してたけどやっぱり中学からいじめられてたみたいだ」

「……ふーん。原因は?」

「えっ?待って。蘭子達のクラスいじめがあるの?もう!?」


 おかんの包容力が覚醒するが無視する。


「原因はよく分からないけど…」

「風花さんはあのミレニアムがどうして気になるの?」

「だって……」


 可哀想じゃん?となんでもない事のように風花さんは答えたよ。

 私はその答えを聞きながら、友達が可哀想だと思ってるのなら仕方ないと、陽菜の弁当から唐揚げを奪い取りながらぼんやり考えてた。


「……えっ?(汗)」


 *********************


 放課後、部活動見学に向かうイツメンに「先に行ってておくんなまし」って伝えて私は一人、女子トイレに向かう。

 無論、催した訳ではない。


 女子トイレには彼女が待っていた。


「キリヤランコさん…」


 セクシー姉妹の日常のうーたんだ。


「おう。金、持ってきたか?」

「……(震)」


 うーたんは分厚い封筒を差し出した。中身を確認すると福沢諭吉を蹴落とした名前知らん誰かが三十人…


「三十万、確かに…」

「これで許してくれるんですか…?」

「いいや、まだだ」


 うーたんの顔が強ばる。他人のチャンネルを乗っ取るような奴をこの程度で許す事はできません。


 懐から取り出した封筒をうーたんのおっぱいに押し付けた。憧れのうーたんのおっぱいは柔らかかった。


 ……このサイズでパッドでも豊胸でもない…だと?


 私、0.5秒で乳の真贋が可能なので。


「これは?」

「確認しろ。中に三十万入ってる」

「え?なんで……?コッッッワ♡」

「お前達の広告収入、うちのチャンネルオーナーの口座に入ってんだよね」

「じゃあこれ私のじゃん…ヤッッッバ♡」

「その金で頼みがあるんだ」

「頼み……?」

「実は……引退しようと思ってる」


 うーたんの顔は風花さんと同じようにしゅんと曇った。知らぬ間にファンの心を掴んでたか…


「サッッッミシ♡…それで、私に頼みって?」

「最後の動画……コラボってほしいんだよね」

「じゃあこの金は……?」

「コラボ料」

「今渡した三十万は?」

「迷惑料」

「……」


 三十万渡したら三十万返ってきた。わけがわからないよと言いたげな顔をしてる。

 その時だった。


「あーーっ。見ーちゃった」


 トイレの中に下品な声が響く。神経を逆撫でするようなキンキン声だ。その声の主にすぐに思い当たって私は振り返りながら……


「カツアゲの現場抑えたもんね。動画撮っ--」

「チョアッ!!」


 ハイキックした。


 来宮の側頭部に叩き込まれる一撃。SPすら打ち倒す私の脚力に耐えた奴の頚椎の頑強さには目を見張るものがあったが、ダウンは免れない。

 来宮は倒れた。卍解ではない。


「きゃあ!?」「ちょっと!いきなり何!?」


 一人じゃなかった。昨日トイレの個室にバケツ水をぶっかけた取り巻きも一緒だった。

 そして勇ましくも立ち上がった来宮が「何すんのよ!!」って叫んでくる。


「コッッッワ♡」


 うーたんはあまり怖がってなさそうだった。


「……見た以上このまま帰れるとは思ってないだろうな?」


 見下ろす私の冷徹なる眼差しに本気なのか冗談なのか判断のつかない来宮は「……へ?」って顔を引き攣らせて退る。

 しかし逃がすまいと胸ぐらを掴んでぐいって引き寄せ、法律で禁止されたらしい壁ドンを敢行。


「わひっ!?」

「きゃあっ!!」「なんなの!この人!!」


 いじめっ子衆がビビり散らかしてる。私は目をかっ開いて顔を一センチにまで近づけ…


「……ふっ」

「あひいっ///」

「どうだ私の吐息は…くすぐったいだろう?これから自分がどんな目に遭うのか理解した?」

「な…何が目的なの……(震)」

「ふっ」

「ひぃぃん///」

「お前ら、なんでミレニアムをいじめてるんだ?」

「ミレニアムってなによ…(震)」

「お前らが体操着を汚したり、水をかけたりしてるあいつだよ。しらばっくれるってんなら…この吐息、耳奥に直接吹きかける」

「……(震)」


 奴の足腰はもうカクカクだった。


「私のASMRはすごいぞ……?」

「エッッッロ♡」


 拷問に耐えかねた来宮は震えながら喋りはじめた。


「べ、別に理由なんて…てか…いじめてないし……あっ!ごめんなさいっ!!やめてっ!!口を窄めて近寄らないでっ!!あいつムカつくから!いっつもスカしててさっ!!それで…」

「中学の時からいじめてたらしいな?それに対して思う事は?」

「……な、なんなのよ一体…っ!あんた、あいつの何!?」

「愛人」

「……(ドン引き)」

「愛人」

「……ガチで言ってる?」

「くるみん、お前には罰を与える。もし、これからもいじめが続くようなら……」


 私の唇の隙間から紅い舌がにゅるりと這い出したのを見て、来宮絶叫。


「きゃあああっ!!なっ!何する気!?」

「私のディープキスはすごいぞ?戻れなくなる…覚悟はあるか?」

「きゃああああっ!!」「やめてぇぇぇっ!!」

「覚悟は、あるか?」


 モダンタイムスばりに問いかける。どうやら実家に忘れてきたらしい来宮は「もうしないもうしないもうしない」って泣き叫びながら膝を崩したよ。


「…………お前には罰を与える」

「ガタガタガタガタ」

「覚悟しておけよ?くるみん」

「……コッッッワ♡」


 *********************


 面白い部活見つけた


 陽菜からそんなメッセージを受け取った私は指示された部活棟へ足を運ぶ。


「きゃあ!?」「おいあいつ…足運んでるぞ!!」


 この足はさっき校庭で拾った。誰のものかは分からないけど、恐らく成人女性のものだろう。


 足を抱えて部活棟に入ると野次馬の悲鳴と共におかんが手招きしてた。


「蘭子それなに?」

「足」


 おかんが居たのは『帰宅部』と書かれた部室の前だ。なるほど……素晴らしく興味をそそる。入ろう。


 中に入ると気だるげな顔をした男子生徒と、それを囲むうら若き乙女達が…無論、乙女達は我が友、李徴子だ。

 違う。


「……蘭子、どう?この部活」

「帰宅部……存在したのか、あの伝説の部活動が…」


 噂には聞いた事がある…世界のどこかには帰宅する事を部活動だと言い張る学生達による集団があると…それがここだと言うのか。


「桐屋さん、この人が部長さんだって」

「……どうも、部長です」


 気だるげな死にかけの猫のような顔をした男が挨拶した。名前を覚えるまでもない、ということなのだろう。私はその場に足を置く。


「部活動の詳細について」

「帰る」


 部長の説明は単純だった。


「……蘭子、よく考えよう?こんな張りのない部活ってないよ?」

「ならおかんはやめとけば?」


 比較的常識的思考を持ったおかんは私を説得しようとするが無駄だった。この場のおかん以外の全員が、部活強制入部とかかったるって思ってたんだから……


「入部届けください」


 即日入部を決めた私達三人に部長は入部届けを渡してくれた。

 そして私達の部活動はその日からさっそく始まった。輝かしくも誇らしい、私達の青春が……



 おかんは入らなかった。


 地球滅亡まであと5日…

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