37日目 路端カンパルノを探せ②
2月6日、月曜日。学校の日だ。
久しぶりに登校できるぞ、わくわく……なんて思って昨晩スヤァ…をキメた桐屋蘭子のスマホが着信に震えたのは午前5時のこと……
桐屋さん、姉が家に帰ってきません
どうしたらいいですか?
警察でしょうか?
返事してくれよ僕の姫
こんなに愛してるのに
会いたい…
君の事と姉の事を想うと夜も眠れないんだ
返事ください
君は今何してるのかな?
寝てんだよ(怒)
「んぁーっ!!ホストの営業メールかっ!!」
「おねえちゃん……うるさい」
午前5時半、イケメンクソ野郎のメッセージにて強制起床。同じベッドですやすやしてたこーちゃんをも巻き込んでの大事件だ。成長ホルモンは睡眠中にジョバァ…するらしいが、こーちゃんの身長が伸びなくなったらどうしてくれる(怒)
「ごめんねこーちゃん。まだおやすみ」
「んにゃ……おねえちゃん……しゅき」
蘭子も好き♡
昨日、路端カンパルノが来るというのでわざわざマルイウィークまで足を運んだら路端カンパルノが行方不明。妹が探してた。
諸々あって捜査に手を貸したんだけど見つからず。その日は帰宅。スヤァ……したんだけど……
カンパルノ妹からのメッセージが止まらないんだ。
報酬の生牡蠣の為に連絡先交換したんだけどこんな事になるならしなけりゃ良かった(怒)
「仕方ねぇなぁっ!(怒)」
「おはよう蘭子。朝ごはんパンかフランスパンかピザトーストか焼きそばパンか……どれがいい?」
「味噌汁(怒)」
「……じゃあメロンパンと味噌汁でいい?」
「お母さん今日学校休む!!腹痛い!!鮭もつけて!」
「……ニシンしかないわよ」
これ以上粘着されたらこーちゃんの成長ホルモンが止まってしまう。私はこーちゃんを抱いてないと寝られないんだから!
朝食のニシンとメロンパンと味噌汁と紅茶を流し込みながら御嶽原こと舎弟にコールして学校休むことを連絡。
御嶽原「受験を控えた大事な時に…」とか舎弟の分際でほざいてたけど「じゃあ教育委員会に電話する」って言ったら了承してくれた。
「お母さんいってきます!」
「どこに?」
「むにゃ……おねえちゃんおはよ」
「こーちゃんいってきます!」
「……?いってらっしゃい」
この問題は今日中に解決する。名探偵桐屋、路端カンパルノを探す旅へ……
朝6時半…朝早くにも関わらず呼び出したらすぐ来た妹はこんな時間なのにバッチリコーデをキメて来てた。なんでやつ……
「桐屋さん!会いたかったよっ!!」
「黙れ。生牡蠣は?」
「お姉ちゃんを見つけてくれたら必ず送るよ!だから住所教えて!」
…最近この桐屋がツッコミに回らざるを得ないあんぽんたんが多すぎる。ボケの渋滞。私は世界最狂の中学生じゃなかったの?
「あれから家に帰ってないって言ってたけど…正直、いい歳した大人が一晩帰らなかったくらいで大袈裟だと私思います(怒)」
「そんな事ないっ!お姉ちゃんは一人でバスにも乗れないんだよ!?」
「私だって乗れないけど?電車でギリだよ」
「……君いくつさ」
「黙れ」
「こんな事が世間にバレたら大問題になっちゃう。頼むよ、予知できるんだよね?今こそ桐屋の本領発揮の時だよ!」
「うるさい。私の何を知ってるんだお前は……全く……お姉さんの行き場所に心当たりは?」
「そんな事言われても……」
「バスにも一人で乗れないんでしょ?そう遠くへは行けないはず……」
「じゃあまだマルイウィークに?」
「その周辺に居る可能性は高いっちゃぶる」
行こう。
もちろん電車賃は妹持ちで私達はマルイウィークのある忘ヶ崎までやって来た。
地球滅亡まであと64日しかないってのに…何してんだか……
とりあえずマルイウィークまでやって来たけど…
「お姉さん、ここら辺にはよく来るの?」
「いや、今回のイベントが初めてのはずだよ」
との事。
話を聞くにカンパルノはとんでもないお子ちゃまのようなのでマルイウィークで消えたならそう遠くには行ってないと思いたいんだけど…
「桐屋さん、なにか見えた?」
「私、千里眼は使えないから……カンパルノの所持金は?」
「……25円」
「お姉さんいくつさ」
それでは移動したとして方法は徒歩に限られる。トホホ……なんちゃって。
早速面倒くさくなってきたな……帰ってきネッチョリフリックス観たい……
「なんでも引き受けます」
「無一文です。仕事ください」
おや……?
マルイウィークの前でホームシックかましてたら何やら魅惑的な声が……吸い寄せられるようにそちらに向かうと何やら早朝の路上で不審者2名がビラを配ってた。
「何してるの桐屋さん、早く探してよ!お姉ちゃん、昨日から何も食べてないんだよ!?」
「黙れ」
それは紛うことなき不審者。
路上でビラ配りをしてたのは黒髪ロングの美女2人。その顔はザ・た〇ちも裸足で逃げ出して警察署に駆け込むレベルで瓜二つ。ただ、片方は目の下の隈がすごい……
なぜ不審者なのか……それはその2人がなぜか手錠で手首を繋がれてたから。
「お願いしまーす。財産差し押さえられて無一文でーす」
「地元に帰りたいんです。居候先で働けってケツ叩かれてます。仕事ください。この際何でもします」
たまたまビラを受け取ったサラリーマン風の男性からビラを奪い取り……
「何をする!?」
ビラを見る。
「浅野探偵事務所……?探偵!?」
きゅぴーんっ!!
「桐屋さん!」
「……妹、お前今いくら持ってる?」
「いくらって……イクラなら持ってるけど」
ジャケットから出てきたのはスーパーの半額シールの貼られたイクラ…
「……お姉ちゃん、イクラが好きでさ…きっとお腹を空かせてるだろうから……」
「お願いしまぁすっ(涙)」
「金がねぇんだっ!!(涙)」
……彼女らも腹を空かせてそうだ……
「生牡蠣忘れるなよ?」
*******************
「路端カンパルノ探してください」
「冷やかしなら帰んな」
「こら、美夜」
近くで見ると凄く美人でかつ変なこの2人組の探偵。依頼することにしました。
「浅野探偵事務所関東支部千葉出張所にようこそ。浅野詩音です。この子は妹の美夜です。ご依頼は人探しですか?」
「どうして手錠で繋がれてるんですか?」
「姉妹の絆を表してるの」
「私の姉は頭がおかしい。助けてくれないか?」
「ご依頼は人探しですか?」
「はい、この人のお姉さんの道端カンパルノを探してください」
「だから冷やかしなら帰りな」
「冷やかしじゃないんですってば」
「僕の姉が昨日から行方不明なんですっ(涙)」
まぁ芸能人の姉を探してくれなんてからかってると思われても……
「そんなヘンテコな名前のやつが居るか」
「美夜、芸能人だよ。路端カンパルノって……」
もしかして知名度ないのか?
「……知らねぇ。何してる人?」
「えっとね………………」
「桐屋さんこの人達ちょっと失礼じゃないかい!?」
「それじゃ…本名と顔写真ありますか?」
「だから名前は路端カンパルノですっ!」
本名だったのか!?
「行方不明の経緯を教えてください」
「かくかくしかじか……」
「おい、ふざけんな。かくかくしかじかで分かるわけ……」
「なるほど、イベント中に屁をこいて……」
「嘘だろ姉さん……」
「分かりました。この双子探偵に任せてください。それで依頼料なんだけど……」
「相手が有名人だから300万な?」
「300万……っ…はい……分かりました。それくらいなら……」
………………え?(汗)
なんてふざけた金額なんだと思ったら次の瞬間には即決してた妹に私の目ん玉が飛び出ました。
もしや路端カンパルノとは金持ちなのか…?
桐屋蘭子、怪しい探偵の前に割って入って妹の手を取る。熱い眼差しがイケメンの不安な心を氷解させます。
今こそ私がイケメンになる時……
「大丈夫、私の予知で見つける」
「桐屋さん?」
「だからその300万は私に払いなさい。生牡蠣と一緒に…いいね?」
「え?でも……」
「い・い・ね?」
「……うん」
おいちょっと待てと後ろから肩を掴んでくる双子探偵の片割れ。でも蘭子退かない。
「人の依頼横取りしてんじゃねー。てか、声掛けてきたのお前だよな?」
なんて圧力……この人堅気じゃないっ!
「いいじゃない美夜。みんなで探せば」
「ふざけんな300万は私らのものだ」
「どうせあてもないんだし……」
「姉さん」
「それに賑やかな方が楽しいもの」
「姉さん!?」
「折角やるなら楽しくやった方がモチベーションも保たれるってものよ」
ピクニックじゃねーんだぞ?こいつら大丈夫なのか?
……まぁそんなこんなで…
「あの……探偵さん、どうしてここに?」
捜索を開始した浅野探偵はまず交番にやって来た。ふざけている。
「警察に届けるんだよ。あとは結果を待て」
「美夜頭いいね。お姉ちゃん感激」
「いやちょっと待って下さいよ!姉は有名人ですよ!?表沙汰になったら困るんです!」
「心配するな。警察がいちいち公表するわけがない」
「確かに、美夜頭いいね」
「公開捜査とかになったらっ!」
「そのレベルで見つからなかった公開捜査した方がいいぞ?」
「ごもっとも、美夜頭いいね」
実に堅実かつ、そして詐欺的手法を取る事にしたらしい。これで300万寄越せってんだから詐欺以外のなにものでもない。
「とにかく警察はだめーーっ!!そんな事したらメンタルミジンコな姉さん自殺しちゃうっ!!」
「そんなメンタルでよく芸能人なんて出来るな。私らの知ってる芸能人は心臓に毛が生えたうえにパンチパーマかけてんぞ?」
「妹さん。そんなお姉さんをあなたが支えてあげて……」
「いーやーだっ!!桐屋さん助けてっ!!」
一方その頃桐屋は……
「あのお金貸して下さい…ヨーグルトソース買うんで……」
「…………え?俺?」
路上に座り込んでる小汚いおっさんにお金貸してってお願い中。ふざけてはない。
「桐屋さん!?ホームレスにお金貸してなんて言わないで!?」
「美夜、あの子よっぽどお金がないみたい…」
「常識もな」
そんなにお金が無いならお姉ちゃんに任せて、と……慈母のような優しさを見せる浅野詩音探偵がコンビニでヨーグルトソース買ってくれた。
もうみんな分かってるよね?そう……儀式の準備です。
「もぐもぐ」
「ふふ、美味しい?」
「姉さん!?貴重な生活費なんだぞ!?」
「困ってる人を助けるのが探偵の仕事だよ、美夜」
「私らが金なくて困ってんだよ!!」
今回はブルーベリー風味のやつをチョイス。てかそれしか無かった。
「もぐもぐ……妹も食う?」
「……真面目に探してください(涙)あと、ヨーグルトソース直で食べないでください(悲)」
「これから予知の儀式を執り行う。もぐもぐ」
「……っ!?桐屋さん…ついに!命中率100%の予知を見せてくれるんだね!?」
「然り…」
一緒に買ってもらった油性ペンで地面のタイルに魔法陣をかきかき……中央にヨーグルトソース(食べかけ)を置いたなら……
易者のババア式時空のおじさん召喚の儀です。
「さぁ、みんなも一緒に……」
「うん!僕もやるよ!で!なにを!?」
「……?」「……一体何を始め--」
舞い、開始。ミュージック、スタート☆
「うんばばふんばば!うぃ!うぃ!」
「……」「……」「……」
「うんばばふんばば!うぃ!うぃ!」
「……こ、これが……儀式?(汗)」
「なかなか変わった子だね…(汗)」「往来のど真ん中でクレイジーな奴だ(汗)」
「さぁ早く!うんばばふんばば!うぃ!うぃ!」
「……うっ……うんばば…ふんばば…うぃ……うぃ……(汗)」
「……え?美夜。これ私達もやるの?」「帰ろう、姉さん」
儀式は終わった……
「ありがとう妹。これで時空さんが来てくれる。あとはカンパルノの居場所を訊くだけだ」
「うん……なんか……うん……(汗)」
「なんか……大丈夫?お姉ちゃん、相談に乗るよ?(汗)」
「で、これからどうする?(汗)」
「……これから寝ます」
*******************
ぐぅ……ぐぅ……
……おぬし
ぐぅ……むにゃ……むにゃ……
おい、おぬし
むにゃ……?ふがっ……あぁ…おじさん
黙れ。なにがおじさんじゃ貴様…
あっ!ちょっと待って!!
なんじゃ?
易者のババアの件については私のやった事じゃないからっ!!見逃して!!ババアは必ず始末するから!!
いや怖。おぬし怖いわ……
あとさ、なんか私と同じような力を持った邪教徒が現れて私に迷惑かけてくんだけど…
何を言っとるのか分からんがそれはお互い様じゃろう。おぬしだって散々人に迷惑かけて生きとるわ。反省せい。現に忙しいわしをこうやって呼び出しおって……
ナイアルさんって知ってる?
誰じゃそれ
まぁいいや。久しぶり。今日はさ、ちょっちょっと見せて欲しいものがあるんだよね
おぬし全く懲りておらんの。あのな?わし、こう見えてとっても恐ろしい神--
路端カンパルノが今どこに居るのか教えて欲しいんだ
知るか
探せるでしょ?過去、現在、未来の全ての時空に接続できるんだよね!?なら過去の時空からカンパルノの行動を辿ってよ!やってよ!!300万かかってるんだから!!
貴様っ!!金の為に『Agの鍵』の力を使うんじゃない!おぬしはわしの忠告が全く分かっとらん!!
やってよ!やーれー!!
無理じゃ。わしとて時空そのものと言えど人類全ての行動を逐一把握しとるわけじゃない……まぁ容易いが…わし、そんな暇じゃないし。わしが常に補足できるのはおぬしだけじゃ
容易いならやってよ!!
いーやーじゃ!!めんどくさい!!
やーって!!
やーじゃ!!
やーれ!!
おぬし調子に乗るなよ?召喚の儀を覚えたからと言って都合よくわしの力を使えると思ったら大間違いじゃからな…
……そんな事言いつつ、呼んだら来てくれるんだもんね。チョロ
あ、もうええわ。わし帰る
もーーっ!!面倒臭いってばっ!!ねぇお願い!可愛い孫の頼みだと思って聞いてよ!!頼むってば!!人助けなんだよ!?迷子の芸能人を探してるんだよ!!友達の頼みなんだ!!
金の為じゃろ白々しい!
……あっそ。じゃあ今晩から寝る前に毎回儀式して般若心経だね
おのれ……
ウルトラソウルも大音量だからっ!!
そんな脅しでわしが…………
あと皿を爪で引っ掻いてキーキー言わせてやる!!
あっ!それだけは……分かった分かった!!やり方を教えてやる!!じゃから勝手に見るがいいっ!!
……おじさんってホントチョロいよね。そんなおじさんが好き///
クソガキが……流石、狂気の器足り得る女じゃわい…ええか?おぬしが生き返る為に並行世界の自分を殺したのを覚えとるか?
うん
あれと同じような要領でこの世界の過去の時間軸に接続するのじゃ。そこからカンパルノを追いかけて現在地を補足しろ。カンパルノの居場所が最後にはっきりしとるのはいつじゃ?
一昨日、マルイウィーク
なら一昨日まで時間を遡る
相変わらず何も見えない白い世界があの時みたいに薄ぼんやりと輝いた。
開ける視界の向こう側に映るのは無限の宇宙の世界……あの時と同じだ。
分かる……私達が今生きてる世界がどこにあるのか……
無数の並行世界から自分の世界を見つけたの。ならば、あとは念じるのじゃ。時間の流れを遡るように……
んだ
気の抜けた返事じゃの……わかっとんのかホントに
任せて
……綺麗な光景。
星屑の海を泳ぎながら飛び込む世界が…逆行していく。大きな時計の河を遡っていくように、時間の流れに逆らって遡る。
私は今、時の流れを感じてる……
桐屋蘭子の意識が逆行する中、私の意識はついに目的の日まで到達する--
巻き戻ってるけど地球が滅亡するまではあと63日…




