第八話 書物
二〇二六年六月一日 大部分文修正
しかし、その奪った領土はもちろん荒れ地、もしくは樹海。人が住めるところではないため、整備する必要がある。なお、優先順位としては災害生物領を減らすことの方が整備よりも高いらしく、しばらくは建物もなく、道や宿場町などのみを建て、その後の整備は後回しで人類連合本国に任せるらしい。
まあ、よく考えればそうだ。汎人類拓務省は災害生物から領土などを奪い返すことが目的なのだから。
なお、この本は人類連合の本国でも普通に販売されているため、異能などは書かれていない。
そして神災についての本は全体的に内容が薄い。同じことや、仮説を繰り返している。あまり面白くはない。ドキュメンタリー映画か。
そしてその次は偉人についての本。アンファング・ヘルツ、俺の祖先や、ユクスキュルという名前の裏切り者、などなど様々な人物がいた。軽く目を通しても、数百人分が書いてある。
まず、アンファング・ヘルツは汎人類拓務省の初代総督、そしてユクスキュルはアンファング・ヘルツのかつての仲間らしい。しかし、アンファング・ヘルツを裏切った……そしてなぜか詳しくは書かれていない。
そして、これらの人たちと当時の特級職員は〝神災〟を知っている、らしい。しかし、神災についてなにも言わず、この世を去った。神災についてしゃべれない理由でもあったのだろうか。
いつか一度会ってみたいと思ったが、会うのはおそらく死んだあとだろう。
そして、それらの本だけではなく、どうやら有名な職員についての二次創作?のようなものもあるらしい。昔の職員についてだが。
その他にも、一般的な童話、小説などいろいろな本があった。週刊雑誌などもたまに更新されるようで、今週の物はすべて貸し出し中らしい。
そして図書館は下手すれば寮よりも大きいのではないか、と思うほど大きかった。階層的には一階層分だが、高さはおそらく二階層分だ。図書館内部に階段があるが、すべて同じ階層とされているらしい。
図書館内部の二階層には、漫画やビデオが置いてあった。すごい図書館だ。ほとんどなんでもある。汎人類拓務省の本部だけでもう娯楽はすべてそろうんじゃないか?と思ってしまうほどだ。
***
「おいお前、見ねえ顔だな。新入りか?」
その後、一回層で歴史書を読んでいるとき、後ろから声がした。
振り返ると、筋骨隆々で体が大きく、鎧を着ていて赤髪の大男がそこにいて、俺のことを見下していた。
「はい、初めまして。今年度から汎人類拓務省新職員になります、ウムヴェルト、と申します」
「おうおうおう、礼儀正しいねぇ。俺はヘンカー。最上級職員のヘンカ―だ。第六寮の寮長だ。おめえ何寮だ? 第六寮か?」
「第二寮所属です」
「チッ……てめぇも第六寮の新入りじゃねえのかよ。おいお前。今年度からの第六寮の新入りがどこにいるか知ってっか?」
「いえ……申し訳ないですが、わからないです」
「ハァ? なんで知らねえんだ? おかしいだろ」
……なんとなくわかった。この人はかかわってはいけないタイプの先輩だ。無能もなにも知らないことは知らない。何がおかしいのだ。
「それにしても、お前第二寮所属か! あの小娘の元の奴隷なんのは大変だろうなー! 俺の寮こねえか?可愛がってやるからよ!」
「いえ……お誘いいただきありがたいのですが、ご遠慮させていただきます」
「……?」
そう言った瞬間、ヘンカーの顔が固まった。何を言われているのかわからない、という顔をしていた。
「……もう一度言え」
「……?」
「なんで断るんだ? 新入りだろ? 俺が誘ってるんだぞ?」
「……え?」
この人は何を言っているんだろうか。
「ハァ……」
そういい、ヘンカ―は大きなため息を吐き、
「まあいいか。あともう一つ。俺な…………今金に困ってんだ。お前後輩だろ? それに俺の誘いを断ったお詫びってことでよ、ちょっくら先輩に金貸してくれや」
…………マジか。
まさか先輩からのカツアゲにあうとは。最悪だ。




