第九話 凶日
二〇二六年 五月十二日 前のヘンカーとウムヴェルトの絡みを一部変更
二〇二六年五月一五日 一部文を修正
「俺な…………今金に困ってんだ。お前後輩だろ? それに俺の誘いを断ったお詫びってことでよ、ちょっくら先輩に金貸してくれや」
……なぜこうなっているのかを解説しよう。俺は図書館に来ていた。そしたら先輩からカツアゲにあった。以上だ。
周囲にも何人か先輩職員はいる。しかし、コイツのことを怖がっているのか、知らんぷりをする。これが最上級職員か。戦闘能力はガタイや筋肉からして強いだろうが、これが先輩か……
「おい聞いてんのか? ガキ。なめてんのか? オイ」
大ごとにはしたくない。できる限りゆるやかに、そして怒らせないようにしよう。
「返事くらいしろカス」
返答に困っているとき、そういってヘンカーは急に俺に向けて拳をふるう。
俺は反応できず、頭にクリティカルヒットし、俺の体はふきとぶ。
ドゴォッ!という音をたて本棚にぶつかり本棚ごと俺は倒れる。周囲にざわめきが走る。
「……ゴフッ……かッ……」
「おいガキ、お前無視するとか俺のことなめてんの?」
俺は地面に倒れこみ、悶える。やばい。頭がクラクラする。アイツが何を言っているのかもよく聞こえない。痛い。口の中から鉄の味がする。
「……返事がねえな、無視すんのか? お前。先輩を」
ヘンカーがそう低い声でつぶやく。俺は返答を返さない。正しくは返せないのだが。それにヘンカーはイラついたのかまた拳を振る。
「ヘンカー。やめろ。何をしている」
眼が涙でぼやけてよく見えなかったが拳が眼前に迫ったとき、誰かがその拳を受け止める。
……それは第二寮寮長、特級戦闘員のナサさんだった。
「……なんのつもりだ?」
「わからないのか?」
「あぁ、わからねえ。先輩を無視するような敬意のない後輩に教育をしてただけだろ?」
「何が教育だ。よもや本気で言っているわけではあるまいな?」
「あぁ? なんだてめぇ小娘が。口の利き方考えろ。特級だからって調子に乗るなよ雑魚が。ブチ殺してやろうか」
「上等」
そう言った瞬間。その体からは考えられない速さでナサさんがヘンカーの腹に正拳突きを放つ。その突きは鎧にヒビをいれ、ヘンカーの体が宙に浮く。
「ごぱっ……ぐ……調子に乗るな!!!」
「五月蠅い」
ヘンカーは吹き飛ばないように踏ん張り、正拳突きをしたナサさんの腕をつかみ投げ飛ばそうとする。
「腹がお留守だ。死ね」
「………………!!!」
ナサは投げを回避し。左足で回り蹴りをする。それは腹に見事に入りヘンカーは吹き飛ぶが、ヘンカーも最上級戦闘員。回し蹴りに対応し両腕で防御していた。
「短気女が……!! 甘いんだよ……!!」
あたりは阿鼻叫喚。最上級戦闘員と特級戦闘員の二人が図書館で喧嘩をはじめた。
俺も正直言って風圧だけで怖い。だれかこの地獄を止めてくれる人はいないのか?そう思った瞬間。
「……貴様ら、何をしている」
図書室の扉を開け、謎の男が入ってくる。
「……特級戦闘員が何の用だ……? これはこっちの問題だ。帰れ不審者」
……見たことがある。黒いスーツを全身に着て、黒い手袋をしている。まるで死神のような、部族のような服装をしており、白い、鉄のような無機質な仮面をしている。
――――第一寮寮長。 『人類最強』 特級戦闘員、アルテュール。
アルテュールはヘンカー、ナサに殺気を放つ。その殺気に気押されて周囲の職員が声を漏らす。
「最上級戦闘員、そして特級戦闘員。人類を引っ張る物二人が、ここで何をしている?」
明らかに怒っている。
アルテュールさんは自分に向けて言っているわけでもないのに、俺の体が恐怖で震える。そう言った後
「……ケッ!!! クソがッ!!!」
ヘンカーは図書室の扉を蹴り壊し、図書室をイライラして出ていく。そのときに本棚を一つ投げ飛ばし、本があたりに散らかる。
「乱暴者が……ほら新入り、ウムヴェルト君だっけ? 災難だったね。
あれはヘンカー。第六寮寮長の最上級戦闘員なんだけど……腕っぷしだけある馬鹿さ。
てか腕っぷしですら私に劣る。救いようのないやつだ。気にすんな」
「新職員。災難だったな。だが、アレを頭に食らって意識を保っている。なかなか見込みがある。」
特級戦闘員二人が俺を励ます。なんてシーンだ。俺はまだ中級職員だってのに。
「……あの、お二方、助けていただきありがとうございました」
「いいってことよ。ああいう輩には気をつけろ」
「我はほとんど何もしていないがな。そして新職員、そのケガ、一応医務室によっておけ」
「はい、ありがとうございます」
その後、俺は即座に図書室を後にする。ああ、不運な日だった。まさか最上級戦闘員にぶん殴られるとは。そして特級戦闘員二人に励まされる。ああ帰りたい。
医務室に寄った後、俺は寮に戻った。戻った後、超心配されてまた大変だったのはまた別のお話。
小物ヘンカ―




