第二十八話 海咬
一回ナレーターに話させます
ウムヴェルト主体はきつかった
「『鬼の一撃』!!!」
ナサは大きく飛び上がり、グローサー・バウムのこめかみに一撃を叩き込む。
先ほどよりも小さいが、密度が圧倒的に上がった黒いエネルギーの塊がグローサー・バウムを襲う。
――― オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ … … … …
「しぶといなぁ……」
「ヨシ、前衛職員! ススメ! 回復サセルナ!」
「「「ハッ!」」」
グローサー・バウムのこめかみから体中にヒビが入り、それを直そうと、グローサー・バウムから緑色の光が出る。しかし、先ほどより範囲が狭くなった、面ではなく点、そして特級戦闘員ともあろうものの一撃を受けたため、回復は先ほどより遅い。
「おいそこいけ!」
「ツルを切れ! ツルの動きさっきより遅いぞ!」
「回復に力とられてるんだろ! 今のうちだ!」
「後衛! 放テ!」
前衛がグローサー・バウムのツルを押さえつけ、後衛が異能を放ち、ダメージを与える。回復はしているが、グローサー・バウムは明らかに消耗していた。
ランクⅣ 巨大樹木型災害生物 グローサー・バウム。
この災害生物の強さは持久力にある。最上級戦闘員、特級戦闘員は、確かに強い。しかし、高威力な一撃をそう何回も連続して放てるわけではない。
無尽蔵な体力、そして再生力。主な攻撃手段であるツルの攻撃力はお世辞にもランクⅣ相当とは言えないが、ランクⅢ相当はある。
そんなグローサー・バウムにとって、この手数で攻め、回復する猶予をなくす戦法は効果抜群だった。本体の回復を優先すると、ツルなどの主な攻撃手段が封じられる。叫びも状態異常付与であり、ツルが主体。攻撃手段は他にもあるが、消耗が激しい。
「根っこを攻撃しろ!」
「木なんだから根っこぬけば止まるでしょ!」
そういい、前衛の職員たちは根っこに近づく。しかし、グローサー・バウムは五十メートルの大木。その程度、ほとんど影響はない。
「ギャ! ギャ!」
「ギャギャギャ!」
その時、グローサー・バウムの枝に急速にエネルギーが集まり、枝に膨らみができ、三メートルほどの果実ができる。そしてその果実を真っ二つに裂く口ができ、落ちてくる。
「前衛! ソノ果実、そしてツルを押さエろ!」
そういうと、ヴォルターはロボットアームをまとめ、エネルギーを集める。
グローサー・バウムの回復を抑えるために、前衛が果実のような災害生物、そしてツルを抑え、後衛が攻撃を放つ。
「ナサ!」
「了解!
『鬼の一撃』!!!」
―――― オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ !
黒いエネルギーの塊が先ほどのように厚い木の皮を突き破り、大木の中心に一点の穴をあける。グローサー・バウムはすぐさま回復をしようとするが、ヴォルターは回復前の隙を逃さない。
「『一点特化・旋光光線』!!!」
――――オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ ッ ッ ! ! ! !
ヴォルターが放った、一本の直径二メートルほどのレーザーがグローサー・バウムの幹を貫通し、穴ができる。先ほどの絶叫よりも数段大きな叫び声をあげ、大木がうねる。
グローサー・バウムの厚く、硬い木の皮さえあれば貫通はできなかっただろう。
「おお、やるじゃん」
「油断スルナ、ナサ。後衛総員! 畳みカケロ!」
「「「ハッ!」」」
――――オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛ッ゛! ! !
「ギャガ! ギャ!」
「ギャギャギャガ!」
「ギャアギャ!」
「上からくるぞ! 気をつけろ!」
「多い多い!」
グローサー・バウムの果実から生み出される果実風の災害生物の大きさは約二メートルから四メートル。動きが鈍く、あまり頑丈ではないため、それぞれのランクはせいぜいがⅡ、高くてもランクⅡ⁺、Ⅲには届かない。しかし、現在その果実の数は約四十体。ランクⅡ程度の災害生物だとしても、四十体もいれば並みのランクⅢ程度、相手にもならない。
「……ナサ、さっキノ奴モウ一発行けるカ? 攻撃範囲が広イ方ダ。」
「……まあ、がんばりはする。そんなポンポン打てるもんじゃないんだけどなぁ……」
「俺ハ先ほドノ攻撃でほとンドノエネルギーを使い果タシタ。溜メが必要ダ。少しの間、頼む」
「……おっけー」
そんな会話をしている間にも、枝から果実の災害生物が生み出されている。先ほど、グローサー・バウムは回復にほぼすべてのエネルギーを使ってしまい、隙を狙われ、回復が中途半端に終わった。しかし、今。グローサー・バウムはエネルギーを半分ほどに分け、回復と果実災害生物を生み出すことに使っている。
グローサー・バウムは回復も阻害されず順調に回復してきている。
「木みたいな見た目のくせにある程度の頭あるんだなぁ……」
そうつぶやき、ナサは権能を再度使おうとする。
その時。
海で異変が起きた。
海岸の方で、巨大な揺れが発生した。
「ちょっ……なんだなんだ!」
「全員屈め! 気をつけろ!」
MPE職員たちが揺れに屈めたとき、グローサー・バウムはここぞとばかりにツタで攻撃をしようとする。その瞬間。
グローサー・バウムの上半身が消し飛んだ。
グローサー・バウムがいたそこには、声を発さず、動かない切り株が残っているだけだった。
「…………?」
「……え……何? 何?」
――――コ コ コ コ コ コ コ コ コ コ … … … …
無機質な、不気味な鳴き声を出しながら
海がせり上がり、超巨大な、ミジンコのような、形容しがたい姿の〝ナニカ〟が昇ってきて、高潮が起こった。
「……ナサ、お前知らサレテたか?」
「いや、まったく」
「…………コんなところにはいないはずナンダがな」
ランクⅤ 深海超巨大型〝大〟災害生物
〝海咬〟 ケートゥス。
今は人類躍進計画開始十五日目です
あと二十八話以前の時系列を少し変えました。
本部から観測基地まで三週間です




