第二話 異能
二〇二六年五月三日 カスパルがウムヴェルトをヘルツ家だと知らないように設定変更
「おい! お前新入りか?! 名前なんて言うんだ?!」
「第二寮の今年からの配属は三人らしいがお前らか?!」
「お前ランクどんくらいだ!」
「はいはい、みんな落ち着け!」
俺たちは任務から帰ってきた第二寮の先輩方にもみくちゃにされていた。
カスパルさんが落ち着かせようと声を張るも、周りの声にかき消されてしまいほとんど聞こえない。一応カスパルさんは副寮長なのだが、見事なまでにフル無視だ
その時
「静粛にッッッッ!!!!」
ルークの声をはるかに超える巨大な声が聞こえる。その一声で、さっきまでがやがや騒がしかった周りがシーンと静まり返る。
「新入り君が困ってるでしょ...後で時間ある時とかに話しなさい...ほらほら、散った散った!」
「「「「すみません寮長ッッッッ!!!!」」」」
先ほどまでイカれた人口密度をしていたのに蜘蛛の子を散らすように散っていき、先ほどの騒がしさが嘘のように静かになった。
その周りから寮長と呼ばれている人は本部で会った美しい角の生えた女性だった。
「ごめんねうちの子たちが。あッ、君さっきの! 第二寮になったんだね」
「あっはい。あの、ありがとうございます」
「先に自己紹介をしておこう。私は第二寮寮長をしている”特級職員”のナサ。特級戦闘員だよ」
「特級⋯⋯」
「ちょ、確か一番高いランクだろ?!!」
MPEの職員にはランクがある。最下級から始まり、下級、中級、上級、最上級。そして一番高い最高位が『特級』だ。一般的に下級か中級から始まり、対災害生物の戦闘能力や事務能力などを評価し、ランクが振り分けられるのだが、特級は現在MPE内部に一桁しかいない。
MPE職員は事務能力なども評価されるが、特級や最上級となると戦闘能力が評価の大部分を占める。
そのため、特級職員、最上級職員ではなく、特級戦闘員、最上級戦闘員と呼ばれることが多い。
「ま、せっかくだし第二寮を案内しよう。ほら、カスパル。私は用事があるから後は頼んだ。それじゃ」
「えっ⋯⋯あっはい⋯⋯」
そう言い、ちょうど通りがかった書類の山を運んだパスカルさんに任せナサさんは立ち去ってしまった。おそらくカスパルさんは苦労人なのだろう。今の会話だけでわかる。おそらく仕事中だっただろうに。強く生きてくれ。
「はい、事務仕事があるのに紹介を任された。それでは紹介をしていこう。まずここは玄関」
「でかい!!!」
「あれ、なんかいいにおいがする⋯⋯」
「勘がいいな。君の名前は?」
「セレーネです⋯⋯」
「セレーネくん! 勘がいい! そう、この玄関では普段芳香剤を使っている。汗臭いからね」
これは勘というのか⋯⋯?と思ったが心の奥底に閉じ込めておこう。
「そして、ここが君たち職員が住む部屋だ。君たちはここだな。そして奥に階段が見えると思う。上の階も同じつくりで、第二寮には合計三十名ほどの職員がいる」
「それは多いんですか?」
「えー、ウムヴェルトくん。いい質問だ。普通は五十名前後だからこれは少し少ないね」
たしかMPEの総職員数は約六百名。最大の寮は第七寮でたしか過半数を占めていた。
「はい、こっちが風呂場。部屋にもあるけどこっちも使える。裸の付き合いをするのも大事だ」
「カスパルさん!! 質問が!!」
「はいなんだ? 名前と質問をどうぞ」
「ルークです!! 任務はいつ行くことができますか?!」
「おお、やる気があるな。だが、任務はもちろん災害生物と戦う必要がある。そのために異能解放の儀をしなければならない」
「異能解放の儀⋯⋯?」
セレーネが疑問を唱える。異能?聞いたことがないのだが、どんなものなのだろうか。
「たしか君たちにはまだ知らされていないんだったね。第二寮内見の前にさきにそっちの説明からしようか」
「あ、はいお願いします」
「お願いします!!!」
「お願いします⋯⋯」
ルークがうるさいのはいつも通りだから無視しておこう。
「まず、異能というのは極秘事項だ。絶対に外に漏らすな」
「「「はい」」」
「うむ、では説明をしよう。まず、ヒトの脳には『可能性』がある」
「可能性⋯⋯?」
「そう、よくわからないだろうセレーネくん。だが、文字通りそのままだ。脳の想像力や素質などそのものを具現化する。それが異能解放の儀だ」
「あの、どうやって具現化するんですか?」
「いい質問だウムヴェルトくん。総督が頭に手を置いてくれる。そんでしばらく待つ。それだけだ。それ以外でも目覚めることがあるらしいが、一般的にはそれだ。それだけで異能を使うことができる。異能は人それぞれで、出力も人それぞれ。鍛えれば上がる」
総督...じいちゃんが...なんでじいちゃんが異能を目覚めさせることができるんだ...?気になるが、まずは異能を目覚めさせてからだ。
「あの、どうやって目覚めさせるんですか?」
「総督がいればいつでも頼める。異能解放の儀なんてたいそうな名前を付けられているが、そんな菱木ってわけでもない。確か今は本部最上階にいるぞ。エレベーターで向かうといい。」
「⋯⋯! じゃあお願いします!」
「⋯⋯私もお願いします⋯⋯」
「おう、ついてこい」
視覚の恥でルークが情報処理能力不足でフリーズしていたが気にしないでおこう。




