第二十五話 植物野郎
「……眠」
人類躍進計画二週間目、夜。十二時までの夜の見張りを俺含め何人かが任されていた。
災害生物は通常、太陽が出ている時に活動し、太陽が出ていない時には眠る。しかし、すべてがそうではない。もちろん動物のように夜行性の災害生物も存在する。
荒れ地にいた時は見晴らしがよく、災害生物も強くなかったため、見張りは少なかった。しかし、ここは樹海。通常職員複数名に加え、寝落ちしてしまったがナサさんがいる。心強い。
「ほれウムヴェルト中級職員、お湯だ」
「あ、ありがとうございます」
そういい、俺は先輩からお湯を受け取る。ここに来るまでの荒れ地ほどではないが、ここもかなり夜は冷える。ちなみにギルベルトは見張りではないため寝ている。荒れ地にいたときに見張りをしていたらしい。樹海の見張りは夜行性の災害生物が出ることがありつらいが、荒れ地の時はひたすらに寒いらしい。
現在時刻午後九時。普段からこの時間には寝ないのでそこまでつらくはないが、十二時となると少し不安だ。そして起きる時刻は午前四時であり、睡眠時間四時間はつらい。
輸送車の一部からまだ笑い声が聞こえる。何かで遊んでいるのだろう。午後七時ほどならまだわかるが、この時間にもなったら早く寝てほしい。明日は午前四時に起きるのだから。まあ個人の自由ではあるのだが。
「ウムヴェルト」
「はい」
そう考えていた時、少し離れていたところにいる同じ寮所属の上級職員のゼーニオル先輩から名前を呼ばれる。
「たしかお前さん新入職員だろぅ? ちょうどランクⅢくらいのやつがいてなぁ……戦闘の練習にどうだぁ?」
「……ランク、Ⅲですか……」
「あの時のリベンジってわけでないがぁ……俺も手伝ったりする。だから一回やってみねぇか?」
「そうですね、やってみます」
「おぅ、その意義だ」
そういい、すこし奥に向かうと、そこには草むら?のようなものから三本の首、そしてその先端には頭らしき部分があり、口があるが、眼も鼻もなく口だけがある。草むらの下には昆虫のような大量の小さな足があり、おぞましい見た目だった。
少しずつ移動しているらしいが、あまりにも遅く、定住しているらしい。
ランクⅢ 多頭植物型災害生物 ツーストゥ・ナッペン
「ガァァアアア!!!」
「キィィイイイイ!!!」
「ヂヂヂヂヂヂヂヂ!!!」
それぞれの頭が違う声で鳴き、威嚇してくる。個性的だ。
「やってやれ、ウムヴェルト」
「……はい 異能解放――【超能力】」
そういうと、俺の周りに金色の光球のようなものが浮かび上がる。
「まずは一発……っと 『光狙撃弾』」
そういい、俺は偵察代わりに弱点になることが多い口の中にエネルギー弾を撃ち込む。
「キ゛ィ゛ィィイ゛ィイ!!!」
真ん中の頭の口の中にエネルギー弾は着弾し、苦しむ。しかし、やられてばかりではいられずに右と左の首が伸び、俺の方へと伸び、噛みつこうとしてくる。
「ガァアア!!!」
「ヂヂヂヂヂ!!!」
「『光散弾弾』」
俺はすかさず姿勢を低くし、その二つの頭にエネルギー弾を散弾状に叩き込む。近距離だと、『光散弾弾』が一番威力が高いのだが、あまり効いているような気がしない。
「おぅ、ウムヴェルト! あんまり効いてはいねぇが……やりあえてるじゃねえか!」
ランクⅢは普通上級職員復数名で対処する。すくなくとも強さにばらつきはあるが、このランクⅢは植物だからか頭が明らかに悪く、素直に攻撃をしてくるため、対処しやすい。だが倒せる、というわけではない。勘違いはやめてほしい。
「カ゛ァ゛アア゛!!!」
「チ゛チチ゛チ゛チ゛!!!」
『光散弾弾を叩き込んだ二つの頭は苦しんではいるが、大した外傷はない。やはり威力が足りないのだ。
「ゲボォアァァァッ……!」
その時、真ん中の頭が口から紫色のいかにも私毒ですよのような色合いをした液体を吐き出す。
「くっ……!」
俺はエネルギーを操作し、、壁のようにして自分の前に置く。
「おぉ! ウムヴェルト、おめぇ威の操作結構できるじゃねえか」
しかしその壁はその液体を防ぎ終わると、すぐに消えてしまう。威、エネルギーを操作し壁にすること自体はできるのだが、長続きしないのだ。威の総量が足りないのかそれとも技術不足か。
「ガァアァッッッ!!!」
「ヂヂヂッッッ!!!」
エネルギーの壁が消えたとほぼ同じ時、苦しんでいた左右二つの頭が俺に向けて、二つの頭で挟もうとする。それを俺は姿勢を低くし、
「ギィィィイイイイイ!!!!!」
それと同時に真ん中の頭が首を伸ばし、俺の腹を噛もうとする。
「『光拳弾』!」
「キ゛ィ゛イ゛イィィ゛イィイ!!!!!」
噛まれる直前、その口の中にエネルギー弾を放つ。口の中でエネルギー弾が破裂し、口内から血が出る。
「ガァアァッ!!!」
「ヂヂヂッッ!!!」
「ちょっ……」
「あっ……」
しかし真ん中の頭にダメージは与えたが、左右の頭は残ったままだ。その二つの頭が俺の頭をかみ砕こうと、こちらに口を向けたとき――――
「旋光光線」
「ガッ……」
「ヂヂ……」
「ギイィ……」
少し離れた輸送車の上からヴォルターさんがレーザーのような、ていうかレーザーを六本ほど放ち、ツーストゥ・ナッペンの体をえぐるように穴をあけ、三つの頭と体を貫通する。
「……何を馬鹿ナ事をしテイルんダ」
「ヴォルターさん……」
「……申し訳ない」
ゼーニオル先輩がすぐさまヴォルターさんに謝る。
「……もうソレに関してはイイ、戦闘訓練なのダロう。だとしても問題だが。最低限死人が出るようなマネをするナ」
「……仰るとおりで」
そういい、ヴォルターさんは元のポジションに戻っていく
「……」
「…………その……すまねぇな」
その後は特に何もなく、夜の見張りを終えた。
首一本減ったテス〇タート……




