第二十二話 二体
|北方遠征部隊|
《総員注目!!!》
人類躍進計画五日目、昼。あたりの災害生物を殺す、追っ払うなどして付近の災害生物が粗方いなくなった時、ナサさんが通信威物を使用し、話し出す。
《現在時刻九時! 目の前に樹海が見えるだろう! 到着の時は近い! 災害生物平均ランクが上がる可能性が高いため用心せよ!》
そういい、威物からの通信が終わる。
周囲に群れがいなくなったことにより、災害生物の殲滅に降りる必要がなくなり、輸送車の移動速度も先ほどより早く、なかなかのペースになっている。確実に人が走るよりも数倍早い。そして、この広大な土地を三部隊だけで災害生物はやり切れるのかと思ったが、災害生物の人間察知能力は高く、意外と平気らしい。
そして、北方遠征部隊は樹海に着く。
***
|北西遠征部隊|
「ヘルム! 外を見てみろ! 樹海だ!」
「おお、本当だ。意外と早えな」
北西遠征部隊でも、ほぼ同時刻に付近の災害生物の群れを粗方処理し、輸送車は高速で移動していた。
《総員注目》
その時、通信威物から音が出る。
《こちら最上級職員、フーゴー。あと数分で樹海に着きます。警戒を緩めないように》
そういい、通信が切れる。
北方遠征部隊が樹海に着くのとほぼ同じ時、北西遠征部隊も樹海に到着しようとしていた。
***
|西方遠征部隊|
「そろそろ飽きてきた……」
「あたしも……」
西方遠征部隊では、ろくな災害生物も出ず、一般職員もろくにやることがない。
「あたしらなんのために来たのよ……ゴロゴロしてばっかなのは最初は楽しかったけど暇すぎる!!! セレーネちゃんなんかやることない?!」
そう、ローゼは血気迫った顔でセレーネに言うが、それは無理な話だ。本くらいしかないが、ローゼは本を読むことが嫌いらしい。
「寝る。それ以外ない……おやすみ」
「ひぃん……」
西方遠征部隊では強力な災害生物どころか群れすらほとんどいない。そのおかげで輸送車はほぼ常にマックススピードだ。
北方遠征部隊、北西遠征部隊が樹海に着こうとしているとき、西方遠征部隊ではすでに観測基地が目と鼻の距離だった。
ちなみに、群れは少ないが、本来群れより少ないはずのランクⅢ相当の災害生物は何体かいた。しかしすべてアルテュール、シルヴェスターが塵にしているため、一般職員まで仕事が回ることはない。
なお、現在輸送車は最高速度で走っている。そしてアルテュールは前に災害生物が現れたときのため、輸送車よりも前を走っている。
なお、輸送車は車なのでもちろん人が押し付ける速度ではない。
シルヴェスターは車ほど速く走るのは無理なので輸送車にいる。これが普通だ。
***
|MPE本部最上階 総督執務室|
「総督! 緊急事態です!」
「む!?」
「うわァ! なんだぁ!?」
人類躍進計画開始後五日目、カスパルがバイオニア・ヘルツに進捗報告をしているとき、総督秘書のアレーニアが扉を殴り壊して入ってくる。
「扉を壊すな!!!」
「すいません! でも緊急なんです! ほんとに!」
「なんだ」
「その……反人類者収容所で、反人類者収容所で! 大災害生物! 〝源鏡〟アテリーゴが確認されました!!!」
「「!?!?」」
大災害生物は神災後に出現した数少ないランクⅤの災害生物だ。そして、昔は稀に人類連合南から〝海咬〟が襲撃してきていた。
しかし、近年それらは全く確認されていない。
そして、アレーニアの説明を聞いた後、バイオニア・ヘルツは驚いた。
反人類連合が〝源鏡〟アテリーゴの欠片を保有している。
アテリーゴは、威を注ぐとその威の量に応じた強さ、数の災害生物を排出する。そして、そのシェシュが威を注ぎ込み、ランクⅢ以上が複数体。
欠片のため本体に出力は満たないが、恐るべき出力だ。
「総督! その、もう一つ!」
「なんだ!」
「その……ラディカル・ヘルツ、そして他二名、反人類連合幹部陣が! 脱獄しました!」
「……第三支部、第五支部を動かせ! ロッヘンは無事か!?」
「ロッヘン特級戦闘員は現在アテリーゴと戦闘中! ランクⅢ、Ⅳを複数撃破するも、ランクⅣに苦戦!」
「……カスパル! すまん! 報告は後にしろ!」
「はっ!」
そういい、カスパルが総督執務室を出た後、アレーニアが恐る恐る口を開く。
「あの……もうひとつ」
「なんだ……もう何が起きても驚かない」
「アナスタシア大陸、北方の正体不明の海からの鳴き声の正体についてです……」
「……」
「録音していた鳴き声と一致しました」
「……うむ」
「おそらく、ランクⅤ〝大〟災害生物 〝海咬〟ケートゥス……
北方遠征部隊と交戦する可能性が高いです」
大災害生物は合計六体。
人知を超えた怪物二体と、汎人類拓務省は衝突しようとしていた。




