第二十一話 大災害
二〇二六年五月二十九日 大災害生物の数を六体に変更
〝大〟災害生物。
災害生物は、普通ランクⅠ~Ⅳで表される。しかし、それは普通の災害生物の話。
自然災害の如き、人間では手に負えないランクⅤ。自然災害級の災害生物のことを一般的に大災害生物と呼び、二つ名が与えられる。
現在、歴史上で〝大〟災害生物は六体しか確認されておらず、討伐に成功した例は無い。
***
「……!」
「これが何なのかは分かるようだな。まあ当然か」
そういい、シェシュはシュモーネから瓶を受け取り、カラカラと軽く振る。
「動くなよ。もし動いたらこの瓶を開放する。そうすればこの反人類者収容所は確実に滅ぶだろうな」
「……」
「『刃風』」
そういい、動かないロッへンにシュモーネが攻撃を仕掛ける。しかし直接は当ててこず、ロッヘンの体をかすり、血が噴き出る。致命傷になる攻撃を打たない意味はなんなのか。人質にでもする気か?
この収容所の地下一階、二階に囚人はいない。地下三階~十階の八つの階層に囚人が収容されている。そのため、今ここに囚人はいないため、ロッヘンの危機にチャンスと思い暴動を起こす囚人はいない。そうロッヘンが考えているとき
「止まれ! 動くな!」
先ほど看守室へと向かった看守が増援を呼び、駆けつける。
「……あのときの看守ですね。シェシュ様、殺しましょうか?」
「いや、必要ない。交渉だ」
「なにが交渉だ! 手を挙げて下がれ! 今すぐに撃つぞ!」
「……力の差を知らせるべきだな。シュモーネ。軽くここのやつらは全員殺せ。看守はまだいるだろうからな」
「了解。 『殺刃――』」
「『貫手』」
異能を右手から打とうとした時。ロッヘンが真後ろからシュモーネのに右肩に貫手を放つ。そのは貫手はローブを貫通し、右肩を破壊し、右腕が塵のようになり消えた。
「イギッ……」
「シュモーネ! ロッヘン、貴様!」
「遠慮はするな! 全看守! 打て!」
反人類者収容所、副看守長がそう言うと、看守たちは銃を構え、シェシュ、そしてシュモーネに銃弾が降り注ぐ。そして、その銃弾がシェシュに当たるも、そのローブは銃弾程度では傷はつかない。
「……やってくれたな。目に物を見せてやる!」
そういい、シェシュは〝大〟災害生物、〝源鏡〟アテリーゴ、その欠片が入った瓶を開ける。
「――――アテリーゴよ。我が体に残る全ての威を捧げる。力を貸してくれ」
そういった瞬間。シェシュの体から光のように輝くエネルギーがアテリーゴの欠片に移動する。
「……グッ!」
「……!」
そして、シェシュの威がなくなり、急激な威の消費に体がダメージを受け吐血した時。ロッヘンはシュモーネを放し、看守に撤退を命ずる。
「所長! 畳みかけないのですか?!」
「大災害生物。撤退命令」
「「「「!?!?」」」」
大災害生物は普通の職員、そして人類連合の住民も知っている恐怖の象徴。看守たちが顔を青ざめ、逃げようとした時。アテリーゴの欠片が淡い色で光り――――
――――キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! ! !
――――ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛! ! ! !
その場にランクⅢ超に相当する災害生物が複数体出現する。
「ぜ、全看守!!!! 撤退!!!!」
「……」
そしてその災害生物はロッヘン、看守たちの元へと歩む。シェシュとシュモーネにはその災害生物は目にも留めない。
そして、アテリーゴの欠片からは今もランクⅢほどの災害生物が出てきている。
「――――副看守長。救援呼出要求」
「は、ハッ!!! かしこまりました!!」
そういい、看守たちは看守室へと逃げてゆく。何をしに来たのか、余計なことしかしないと思ったものも、それを口に出さずにロッヘンは権能に威を再度込める。
***
|反人類者収容所 最下層|
「なー看守さん! 上の方がうるさいなぁ! 何が起こっとるん?」
ラディカル・ヘルツは自らの担当の看守に向けて話しかける。
「お前は知らなくてもいい。無駄口を叩くな」
「ワイの扱いひっどいなあ! 権利とかないんか!?」
「……」
ツッコミが来ない。無視されてしまった。一抹の悲しさを覚えながらも、ラディカルは薄ら笑いを浮かべる。
なにが起きているのかは予想できている。
ラディカル・ヘルツは、暗い収容室の中で不気味に笑った。




