第十五話 勘
|北西遠征部隊|
「むん!」
「ギャアアアアアア!」
「おい! あきらかに多くねえかヘルム?!」
「しらんわ……」
北西遠征部隊、二日目。正午。荒れ地では災害生物はほとんどいない。しかし、この時ランクは低いとはいえ、二桁単位の群れが複数襲来していた。
「どりゃああああ!!!!」
そういい、ルークは異能の巨掌で群れを一部なぎ倒す。
「お前下級なんだよな……?」
「ああ! なんだ!」
ルークは新規職員として採用されたとき、下級職員だった。しかし、彼の異能は異能の中でもかなり当たりの部類であり、異能込みの実力は辱級職員にも相当する。
|本隊輸送車|
「フーゴー! 一回来い!」
「はい、どうしました?」
「……この災害生物の量どう思う?」
災害生物が多い、ということは調査部隊でもまれにある。しかし、これはあまりにも多い。前代未聞だ。そしてさらに普通人間からは逃げるレベルの弱い災害生物すらも捨て身で襲い掛かってくる。
「そして、コンラートさん。『鑑定眼』を先ほどしました。現在ほぼすべての災害生物が興奮状態。そして人為的です」
「……通信威物の準備をしておけ」
「了解。」
***
|反人類者収容所、看守室|
「おい、交代だ」
「おうよ!」
反人類者収容所。人類連合最南端地下に位置する収容所。そこには”反人類”の犯罪者が収容されている。その時、看守室に一人、やけに身長の高くて細い、人なのか怪しい人が現れる。
「「「「お疲れ様です!!!」」」」
その入ってきた男に看守たちは敬礼をする。その男は汎人類拓務省第四支部支部長、特級戦闘員、そして収容所所長、ロッヘン。
「…………」
その男は看守たちの敬礼を見て頭を少し下げ、数メートルある扉をあけ、頭をかがめて扉をくぐり、歩いてゆく。
「おい! テメェそれは俺の飯だ!」
「あぁ?! 賭けに負けたカスは黙れ!」
反人類者収容所では喧嘩が日常茶飯事。そして看守も止めるそぶりも見せない。
「ロッヘンさん、こちらです」
「……」
収容者の喧嘩を横目に、看守がロッヘンを収容所最下層に案内する。
反人類者収容所では全八層に分けられている。そしてその最下層には現在四名のみ収容されている最重要危険人物収容層。
【収容室 No.■■■■ ラディカル・ヘルツ】
「……」
――――ラディカル・ヘルツ。バイオニア・ヘルツの息子であり、ウムヴェルト・ヘルツの実の父である、最下級職員。収容室にて、鎖で体中がグルグル巻きにされている。
「……」
「何の用やお前!」
ラディカル・ヘルツの罪状。お分かりだと思うが、それは人類への反逆だ。反人類連合、とよばれる組織を作り、災害生物を人類連合内に放出、そしてテロ、など。それに深い意味はなく、快楽殺人鬼に近い。
「お主ちょっとここの待遇どうなん?! 飯はまずいし自由はないし! そして! ずっとワイ一人なんやけど!」
「……」
反人類連合では、ラディカル・ヘルツを一番として八人の幹部がいる。そしてその反人類連合幹部はラディカル・ヘルツ含め三名しか捕まっていない。
人間の身で反人類連合幹部は全員ランクⅢ以上の災害生物として指名手配され、特定災害生物となっている。
「なんとか言ったらどうや! 孤独死しそうやぞワイ!」
「……」
「無視すんなや!!! 泣くぞ!!!」
魂の叫びを無視し、ロッヘンはラディカル・ヘルツ収容室を退出する。本来こいつに用はない。用があるのは奥の反人類連合資料室だ。
ラディカル・ヘルツを一番、階級名アハットとし、二番のシュタイム、そして五番のハメシュのみが現在同階層に収容されている。また、一般的に数字が低い方が階級が高い。
おそらくまだ捕まえることができていない残りのやつらは人類躍進計画開始した現在、本部と収容所に攻め込みに来るだろう。
確証はない。しかし、歴戦の勘がそう言っている。
資料室にいるとき、ラディカル・ヘルツがいまだに文句をたらたら言っているが、反応する意味もないのでロッヘンは無視を貫いた。
《――――あ、あー。ロッヘン特級戦闘員、聞こえていますか?》
そのとき、ポケットの通信威物が鳴る。
《私はアレーニア総督秘書です。総督からの言葉です。警戒を強めろ、と》
「……」
総督と自分は同じ事を考えている。
自分の考えすぎではない。
《そんじゃ、一回切りまーす!》
そういい、ブツッと通信が切れる。
「お戻りになりますか?」
「……」
看守の言葉にうなずき、ロッヘンはすぐさま看守室に戻り、警戒レベルをⅣにする。
反人類連合がどう動くか。
あと更新遅れて申し訳ない!




