第十二話 人は死ぬ
二〇二六年五月一七日 ナサの権能描写追加
「……ッ……!」
「お、お前ら! 下がれ!」
「……ちょ、ウムヴェルト! お前の異能は使えるか?! あいにく僕は足が折れた! おそらく無理だ!」
「くっ……! 『光大砲弾』!」
先ほども放った巨大な光弾が六本魚へと向かう。しかしその玉を虫をたたき落とすように叩き落す。
「先輩! リーダーは?! まだなんですか?!」
「すぐ行くと聞いたがあとは何の返答もない!」
「そんな……」
「おい! ルーカス! ……ルーカス!!!」
「……」
その腹を貫かれた隣部隊の人に同じ部隊らしき人がかけよるも、応答はない。その時、その人に向け六本魚が拳を振り落とそうとする。
「『一の矢』!」
それに三人で来ていた隣部隊の残り一人が矢を打ち拳を止める。
「迂闊に駆け寄るな! 悲しむのはあとだ! 早く起き……d……」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ ! ! ! ! !」
六本手魚が地面の岩をつかみ、矢を放った職員に岩を粉々にして絨毯爆撃のように投げる。あの職員の首部分、腹部、左肩、左太ももに穴が開き、力なく倒れる。
死者二人目。
「ああ……ジャック……てめえ魚ごときが! ――――異能解ホッ……」
「ン ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ ! ! !」
六本手魚が残り一人いた職員に突っ込む。
――――グチャッ……という音をたて、体重を乗せられた職員が押しつぶされ、周囲につぶれた肉が散らばる。
死者三人目。
「ヒッ……」
「先輩! 助けられないんですか?! あの人たち!」
「すまねえ…… あれはもうどう見ても即死だ…… そもそも俺に戦闘能力はねえ! すまねえ……すまねえ……!」
「ア゛ア゛ア゛! ! !」
人を三人殺した災害生物。その六本手魚がこちらに向けて歩く。
「先輩! 俺らは置いて逃げて下さい!」
「断る! 後輩置いてにげる奴は人じゃねえ!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! !」
六本手魚がこちらに近づき、拳を振り落とす。
――――俺は死ぬのか? ギルベルトも。 先輩も。
人類躍進計画に参加し、人類の役に立つ。
死ぬのか?
俺は死ぬのか?
***
「――――すまん。遅れた」
「……! ナサさん……」
「……い、生きてる」
「ギルベルト、ウムヴェルト、ハーディ。 すまない。」
北方遠征部隊、リーダーナサさん。
助けに来てくれた。俺はまだ死んでいなかった。ナサさんは俺たちに振り下ろされた拳を片手で受け止めていた。
「リーダー! その魚の耐久力は異次元です! 気を付けた方が……!」
「問題ない。 ありがとう、ハーディ。
こいつは私が殺す。
権能解放――【覇拳】」
そういうと、ナサさんの両手に黒い、威のような高エネルギー物質がまとわれる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! !」
「五月蠅い。死ね。『鬼の一撃』」
「ア゛ア゛ア゛アッ」
そういい。ナサさんが見えないほど早く六本手魚が振り落とした拳をよけ、横に回り、一発を入れる。
それだけで六本手魚は腹に穴が開き。動かなくなる。
「……すげえ……!」
思わず俺は感嘆の声を漏らす。
「ふう。 おい、お前ら三人、大丈夫か?」
「はい、なんとか…… 骨は折れていますが」
「俺もです。」
「ギルベルトだったか。すまん、俺の回復は骨は直せない。医務車にいくぞ」
「おう、とりま三人は無事か」
「……ナサさん」
「なんだ」
「あのッ……あの三人と……吹っ飛ばされた先輩は?」
「……吹っ飛ばされたやつは医務室に連れてかれた。そんで残りの三人は、わかるだろ?」
「死んだ。即死だ」
「ツッ……」
―――――認めたくなかった。
名前も知らない、初めて会う、北方遠征部隊の隣の部隊のただの隊員だった。
人が死ぬ。あまり想像できなかった。人が死んだのを見たことがなかった
俺はその後、突然体調が悪化した。
そして医務車に俺は運ばれ、休め。とだけナサさんからは言われた。
俺はその夜、眠れなかった。
人が死んだのをはじめて見た。現実味がなく、なんだかよくわからなかった。
夜、あの光景が夢に出て、現実なんだと認識した。
何真夜中に起きて吐いた。
俺はまだまだ弱い。 所詮ただの中級職員だ。
人類の役に立つなどという戯言を言うにはまだ速かったのだ。
その日はずっと医務車にいた。
あっという間に人類躍進計画一日目が終わった。
土曜なので二話更新!




