第十話 計画の始まり
――おい―――ヘルツ――――
⋯⋯⋯⋯なんだ⋯⋯⋯⋯これは⋯⋯⋯⋯⋯⋯
俺は巨人を前に、見覚えのない人たちとともに立っていた。
「――何をしてる――――――が――まうぞ――――」
⋯⋯どこだここは⋯⋯なんだ⋯⋯あの巨人は⋯⋯
――――!!!
「 ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯」
――――これはなんだ⋯⋯?
「――死にたくねぇ⋯⋯裏切り者め⋯⋯」
なんだこれは⋯⋯?
次の瞬間、俺は何かにつぶされた。
ーMPE第二寮 一階ー
「!!!!!」
ゴン!!!
俺は二段ベットの一段目で上段に頭をぶつけて起きる。
あたりを見回すと、顔を洗っているセレーネがいる。
「⋯⋯よし。 あ、ヴェルト、起きたの。大丈夫?」
「なあ⋯⋯ここはどこだ?」
「⋯⋯? どこって、ここは寮の私たちの部屋。寝ぼけてる?」
⋯⋯そうだよな。夢か⋯⋯
「⋯⋯ごめん、なんでもない。変な夢を見たんだ。」
「縁起悪いなぁ⋯⋯ あとルークはもうたたき起こしたよ。いまもう先行っちゃった。やる気じゅうぶん!」
「普段いくら殴っても起きねえのに⋯⋯まあいいか。俺も準備していくわ」
「おっけー。私はもう出来たから、玄関で待ってるよ」
「おう、ありがとうセレーネ。」
***
ーMPE正面入り口ー
「……よし。 全員確認できた。」
人類躍進計画、北方遠征部隊。
ナサさんなどの部隊リーダーによって第一寮~第三寮、そして第七寮一部の所属隊員は、MPE正面入り口前に集められていた。
今日は人類躍進計画当日。
今は午前四時。これから俺たちは人類連合と災害生物領を隔てる堀を越え、災害生物領に侵攻する。
「よーし、全員準備はできたな。ついてこい。橋を出す」
北部遠征部隊副リーダー、ヴォルターさんがそう言った瞬間、堀の下、深さもわからないほど深くから地面がせりあがってくる。
一部職員から感嘆の声が出る。
「北方戦線部隊。行くぞ」
「「「「「はい!!!」」」」」
***
「全西方遠征部隊。全員確認しました」
「ご苦労」
西方遠征部隊。部隊リーダーのアルテュールさんに副リーダーのシルヴェスターさんが隊員全員確認の報告をする。
「準備はできたか、諸君。西方遠征部隊、行くぞ」
「「「「「ハッ!」」」」」
***
「うむ! 北西遠征部隊は全員集まったな!」
「ええ、欠員ナシです。」
北西遠征部隊。ここは唯一特級戦闘員ではないコンラートさんがが遠征部隊リーダーを務める。しかし、彼は歴戦の猛者。MPEに長年勤めているため、異論を唱える者はいない。
「では皆さん、行きましょう。」
***
ーMPE本部最上階 総督執務室ー
「……と、いうことで。MPE遠征部隊は全員出発しました」
MPE最上階に位置する総督執務室。そこでは、総督、バイオニア・ヘルツに、第二寮副寮長カスパルが報告をしていた。
「うむ、結果が楽しみだ。そして、おぬしは行かんのか?」
「申し訳ないのですが、私は事務仕事一本ですので」
「ホッホッホッホッ。遠征部隊に参加しないのはいいが、仕事はきちんとしてもらうぞ?」
「えぇ、もちろん」
「ホッホッホッ、そうがっかりするな! 仕方がないことだ!」
カスパルの異能は回復。
名前だけだと味方の傷を治す、というような能力が連想されるが、実際は違う。
対象は自分のみ、そして回復は疲労のみ、とあまりにも戦闘に使えない異能である。
そのため、上級職員、カスパルは例外として遠征部隊には参加しない。しかし、参加しない代わりにといって、遠征部隊からの報告をまとめ、総督に報告をする役目を担った。
現在は午前四時。人間は普通であればまだ寝ている時間な早朝。このあたりの時間帯から災害生物は活性化を始める。
そもそも人類躍進計画の目的は遠征部隊を囮とし強力な個体を撃破し、弱い個体を追っ払い、災害生物のいない領土を作る事。
災害生物の活動外だと囮にもできず追っ払いもできない。
そのため、ちょうど活性化が始まるこの時間帯が、出待ちなども食らわず、災害生物も本領発揮できず一番いい。
「それにしても、アナスタシア大陸の奪還かあ……」
総督執務室を出たカスパルは考え事をしながらつぶやく。
「ランクⅣまでは特級戦闘員で対処可能。なんなら最上級職員+上級職員複数名でも行ける。だが…………ランクⅤ以上が出たらどうすんだ……?」
しかしカスパルは考え直す。
「まあ、それに対抗するために新職員募集したもんな! 〝海咬〟が出ても平気だろ!」
そういい、カスパルはエレベーターに乗って本部一階へ向かい、本部を後にして第二寮副寮長室へと戻る。
――――――人類躍進計画。現在の人類にとって最も大事な計画が、今。始まった。




