八
すみません、手違いでこの第8話は前回第7話として掲載してしまいました。申し訳ありません。
話におかしさを感じた方もいたかもしれません。もしよろしければ、改めて掲載した第7話を読んでからこの第8話を読んでいただけたら幸いです。
「ねぇ、今度スロット連れてってよ。」
テーブルの上に並んでいた食事をあらかた食べ終わると佳奈は唐突に発言した。
「何、スロット?いきなりだな。」
少し驚き、そして少し面倒くさそうに竹田は答えた。
「だって学校の山本君なんかとはよく行ってるんでしょ。いつも講義サボってさ。」
「そうだけどよ、多分面白くないぞ。って言うか、やらないほうがいいぞ。」
「なにそれ。自分は散々やってるくせに、私はやっちゃいけないの?」
佳奈は少しムッとした表情になった。竹田はそんな佳奈の表情を見て一層面倒くささをつのらせた。そもそもパチンコ屋には一人で行くのが一番いいと竹田は思っている。それでも山本や大吾たちと一緒に行ったりするのは、彼らが自分と同様に経験者だからである。裏を返せば初心者とは一緒に行きたくないということだ。いろいろ教えながら打つのは面倒くさいし、事あるごとに質問されるのも煩わしい。別に女連れで行くのが嫌なわけではない、むしろ慣れた女性となら一緒に行きたいと思っている。しかしこんな竹田の考えを佳奈はわかるはずがない。
「じゃあなんでお前はスロットやりたいんだ?」
「それは・・・コー君(竹田のこと)が好きなことを私も知りたいだけだよ。」
「別に知らなくていいこともあるだろ。所詮はスロットなんてギャンブルだし。」
「そうかもしれないけど、いっつもコー君スロットばっかりで全然学校来ないし、遊ぶ時間もないじゃん。だったら一緒に行くのもいいかなって。」
竹田は困惑していた。実を言うと竹田の頭の中の比重は恋愛よりもギャンブルの方が明らかに大きい。竹田は一見器用そうに見られがちだが、実際はそうではない。最近の若者としては珍しく、一本気で古風な一面を持っている。ギャンブルに心底のめりこんでいる竹田は、恋愛も同時にこなせるほどの余裕はない。しかし、このまま言い合いを続けるのもバカらしく思えてきたので、曖昧に答えることにした。
「わかった、じゃあ今度連れてってやるよ。」
「ホントに?絶対だよ。」
佳奈にも竹田の曖昧な言い方は十分に伝わったが、これ以上言ってもムダだと感じた。まだまだ不満が残るが、納得することにして、違う話題を振った。
「まぁいいや、ところでこの後どこ行く?」
佳奈はパッと表情を話題とともに変えた。それまでの不満げな様子を微塵も感じさせない。この辺りは佳奈もサッパリとしている。
「この後か、こんな時間から行くとこなんてないぞ。」
明るい表情の佳奈とは裏腹に、竹田の表情はあまりさえない。実を言うと竹田は先ほどの山本からのマージャンの誘いが気になっていた。佳奈と話すよりマージャンの方に意識が行っていたので、どうにかしてこの場を離れられないかと、逃げる言い訳を考えていた。
「あのさぁ、俺まだ『政治学』のレポートやってないんだよ。あれ確か提出明後日だよな。今から帰ってちょっとやらないかんのだわ。」
「えー、まだやってなかったのぉ。?」
「ああ。だから悪い、今日はこれで帰らしてくれんかな。」
佳奈は竹田の言葉を聞いてガッカリしている。レポートの重要さは佳奈も十分承知しているので、無理強いはできない。提出期限も確かに明後日までである。因みに佳奈はそのレポートを完成させるのに3日かかった。
「毎日スロットばっかやってるからこういうことになるんだよ。」
「ホントにごめんな。またスロットで勝ったら豪華な晩メシおごるからさ。」
「はいはい。」
「じゃあ、ここもう出ようぜ。送ってくからさ。」
そう言うと竹田は席を立ち、足早にレジへ向かった。
「ったく。なによ。」
佳奈は心の中で愚痴りながら竹田の後を追って行った。
会計を済まし外へ出ると、店内の涼しさと違ってジワジワと蒸し暑い。
「あっちいなぁ、くそ。」
竹田はブツブツ言いながら車のエンジンをかけ、エアコンの風量を最大にした。佳奈もふくれっ面をしながらも車に乗り込み、シートベルトを締めた。
「じゃあ、行くか。どこで下ろせばいい、コンビニでいいか。」
「・・・そうね。しょうがないからお菓子でも買って帰るわよ。」
二人を乗せた車は快適なスピードで三車線ある幹線道路を走っていった。時計の針は21時半を少し回っていた。




