二十一
幾人が往来する気配と賑やかしい話し声の中、竹田は目を覚ました。腰や膝からはまだ疲労感が抜けず鉛のような重みを感じる。自分が今どこにいるのか一瞬わからなかったが、たくさんの人影と、となりでまだ眠っている山本を見て現状を理解した。
時計に目をやると、12時半を少し回っている。ちょうど2時間目が終わり昼休みに入ったところだ。3時間ほど眠ったが、中途半端に寝たせいか頭の重さはさらに増したように感じる。しばらくボーっとしていたがタバコが吸いたくなったのと耳障りな昼休みの喧騒から逃れるためその場にかばんを置き、外に出た。山本はピクリとも動かず深い眠りについたままだある。
休憩スペースの自販機でコーヒーを買い、賑やかな学生たちを横目に階段を下りた。なぜこんなに学生たちははしゃいでいられるのだろう、竹田はそんなことを考えながら外に出て、灰皿の置いてある管理棟の裏手に足を進めた。先ほどまでの喧騒とは裏腹にここの喫煙スペースはひと気がない。いつも山本たちと一緒にタバコを吸っている教室棟の前と違い、ここは学校の職員や教授たちが基本的に来るところだからだ。竹田はベンチに座り缶コーヒーを開け、タバコに火をつけた。
「ふうぅー。」
空を見上げながらため息混じりに煙を吐き出した。上空では太陽が燦々と輝いている。
「ブルルルル、ブルルルル」
日増しに強くなった日差しに少しうんざりし、視線を落としているとポケットの中で携帯がメールの着信を告げた。
『今日レポートの提出日だけど学校ちゃんと来てるの?』
と、佳奈から入っていた。
「ふっ。」
佳奈のことが愛おしく思えたわけではないが、なぜか笑みがこぼれ、疲れた身体とは裏腹に指先をすばやく動かして返信のメールを作成した。
『ああ、昨日死ぬ気で作ってさっき出してきたよ。』
メールを送信し、短くなったタバコの火を消しながら、缶コーヒーをぐいっと飲み干した。タバコもコーヒーも今日は美味しいとは感じない。それどころか朝から何も食べていないので空腹なのか何なのか胃に少し違和感がある。
ささやかな一服を終え、休憩スペースに戻ると山本はまだ眠っていた。山本と一緒に昼ごはんを食べようと思っていた竹田は、山本をそのままにして一人でその場から離れた。もう時計の針は13時を少し回っており、昼休みも残り少なくなっていたので学生たちの大半は教室に向かい始めている。竹田はそんな人の流れに逆らうようにして駐車場に向かっっていった。




