十九
「今日はありがとね。大吾君、隆正君。」
心のもやもやを振り払った佳奈は笑顔を取り戻している。ファミレスを出た3人は駐車場でそれぞれの家路につこうとしていた。
「いえ、こちらこそ楽しかったですよ。」
タバコをくわえながら大吾も笑顔である。先ほどまでとは違い、心なしかタバコもおいしく感じる。
「ホントに二人に色々聞けてよかったわ。」
「そんな、俺らたいしたこと言ってないですよ。」
隆正は相変わらず控えめだ。
「そんなことないって。・・・竹田君はいいね。こんないい後輩がいてさ。またお店にも来てね。お店の娘にも二人のことよく言っておくから。」
「マジっすか。期待しますよ。」
大吾の目はキラキラしている。隆正もなんとなく嬉しそうだ。
「じゃあ、またスロットで勝たないといかんな。大吾。」
「だな、何なら明日行くか。」
佳奈は年下の二人の会話を微笑ましく聞いている。
「じゃあ、私行くね。」
「はい、お疲れ様です。」
大吾も年下らしい口調で少し頭を下げながらこたえた。
「明日、学校がんばって下さい。」
「学校で何をがんばるのよ。隆正君?」
「いや、竹田さんと・・・」
「ははは、そうね。がんばらないとね。・・・二人もね。この後ゲーセンとか行ったりしないでよ。」
「行かないですよ。明日の戦いのために寝ないとダメですから。なっタカ。」
「もちろん。」
「ホントにぃ?あやしいなぁ。」
いたずらっぽく言いながら佳奈は車のカギをかばんから出し、ドアを開けた。
「じゃあ、ホントに今日はありがと。二人ともおやすみ。」
車に乗り込むと中から手を振りながら、ゆっくりとバックをし大通りに佳奈の車は出て行った。
少しの間沈黙が続いたが隆正がポツリと口を開いた。
「いい人だな、佳奈さんって。」
大吾もその言葉に真顔でこたえる。
「そうだな、竹田君幸せだな。」
「大吾、俺らもあんな人と付き合いたいな。」
「・・・うーん。今のままでは苦しいよな。」
二人は急に自分たちのいい加減な現状が恨めしくなった。
「やっぱり俺、今年も大学受けるよ。」
隆正の表情はいつもに増して真剣になった。
「そうだな、俺も本気で大検でも受けようかな。」
隆正につられて大吾まで彼らしくない真剣な表情を見せた。明日になれば今の気持ちはガラッと変わるかもしれない、しかし二人はなぜかとんでもなく自分が情けなく思えてその場からなかなか動くことができなかった。二人をつつむ暗闇が一層そんな気持ちを膨らませる。遠くでかすかに響く虫の声の中、時計の針はもうすぐ3時を指そうとしていた。




