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2/24

一

「ブオォォー」

 郵便配達のバイクの排気音で竹田は目を覚ました。気だるい体を起こし時計に眼をやると10時半だった。目覚ましは11時にセットしていたので30分間また寝ようとしたが、案外眼がさえていたので布団から出ることにした。インスタントコーヒーを入れ、昨日帰りに買っておいたパンを食べながらテレビをつけた。時代劇の再放送がパッと画面に映し出されたので竹田はチャンネルをいくつか変えたが、めぼしい番組はやっておらず「チッ」と一度舌打ちをし、テレビを消した。まずしい朝食を済ますと、竹田はタバコに火をつけ窓の外を眺めた。すでに高く昇った太陽から強い日差しが降り注いでいる。

「もう夏だな。」6月がもう終わろうとしていた。

 一言つぶやいた後で、タバコの火を消し、残ったコーヒーをぐいっと飲み干した。

 出かける準備をし、ふとケータイを見るとメールが入っていたので確認すると、大学の友人である山本から「今日学校行く?そろそろ行かんとヤバイかな?」と、あった。竹田は「俺は行くよ。試験も近いしそろそろ行かなマズイんじゃない?」と返信し、ケータイをポケットに入れようとした時、ブルブルと震えた。

「あれ、早いな。」

 しまいかけたケータイを開けると、「今日ヨンキョーで熱そうなイベントあるよ。一緒に行かん?」と、大吾から入ってきた。

「アホか。」

 竹田は少し微笑むと、「今日は学校に行く、行きたけりゃタカでも誘え」と返信し、家を出た。



 13時5分前に竹田は大学の駐車場に着いた。まだ講義まで時間に余裕があったので、キャンパス内をゆっくり歩きながら教室に向かい、教室がある建物の入り口手前にあるベンチ兼喫煙所で山本と顔を合わせた。

「いやいや、時間前に来るなんてまじめやな。」

 山本は関西出身なので親しみのある関西弁で、笑いながら声を掛けてきた。

「当たり前だって、学生は学校に来るもんでしょ?」

 竹田も少し微笑みながら言葉を返す。この二人学校には大概来るが、講義にはめったに出ることは無く、すぐにどこかへ遊びに行ってしまう。簡単に言えば二人の待ち合わせ場所が学校というわけである。しかしこれは彼らに限ったことではなく、現在の大学生の大部分に当てはまることではないだろうか。

 この日も竹田と山本は講義の頭5分だけで教室を抜け出していった。山本は誰かを誘って麻雀をやろうと言ったが、竹田が夜バイトがあるので二人連れ立って近くのパチンコ屋に行くことにした。



 竹田の車に乗り込み学校を後にすると、二人は『AUTOMATIC』(通称オート)というパチンコ屋に向かった。この付近にはいくつかパチンコ屋があるが二人がよく行くのは『オート』と『ジャック』という大型チェーンの店である。どちらに行くか迷ったが最近二人が好んで座る『ドンちゃん2』(ドン2)の状況がいい方に行こうということになり、二人は『オート』に行くことにした。

 店に着き二人は『ドン2』のシマに向かった。途中、一応AT機やストック機でおいしそうな台がないか見ていったが、これといってめぼしい台は無く、二人並んで『ドン2』をやり始めた。二人が千円入れた直後に竹田の台にチェリーはずれで入り、という演出が出た。

「おお、今日はイケるんじゃねぇの!」

 そういいながら竹田は少し力を入れて第一リールを止めると、上段にBARが止まり枠内にチェリーは無かった。

「いやいや、ホント軽快な人やなぁ。でもそのままBAR揃うんじゃないの?」

 竹田が第二リールを止めると上段にBARが止まり、続けて第三リールを押すとBARは下段に止まった。BIG確定である。

「最近ヒキが結構よくてさ。山ちゃんもサクッとかけてよ。」

 機嫌よく7を揃えBIGボーナスがスタートした。竹田は的確なビタ押しで順調に枚数を稼ぎ、430枚を獲得した。この『ドン2』という台はビタ押しが出来るかどうかでBIG獲得枚数にある程度の差が出る機種で、この点が目押しの得意な二人が好む理由である。BIGが終わると竹田は席を立ちコーヒーを買いに自販機へ向かった。山本はタバコに火をつけ再びコインサンドに千円を入れた。しかしこの千円でも山本の台がかかることは無かった。

「どうぞ。飲んでください。」

 おもむろに山本の顔の前に缶コーヒーが差し出され、振り返ると竹田が自分のコーヒーをもう一方の手に握り、台に腰をおろしていた。

「いやいや、すいません。」

 コーヒーを受け取ると二人とも飲みながら再びスロット台と格闘を始めた。この後は二人ともあまり会話を交わすことも無く3時間程スロットを打ち続けた。


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