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十六

 まばゆい光が暗闇の中でキラキラと輝いている。すでに街並みは眠りにつき始める頃であろう、しかし昼過ぎに起きた大吾と隆正はこの時間帯になってやっとまぶたの重みが取れ始めていた。ネオンの下を歩きながら、少し高揚した面持ちで大吾は余り玉で手にしたチョコレートを口に入れた。

「・・・っだけどよ、なんだかんだでお前もプラスで乗り切ったよな。」

 大勝ちした大吾とは違い、何とか負けなかったというほどの隆正は、機嫌のいい大吾の問いかけに応える言葉がなかなか浮かんでこない。

「ああ、まぁそうだけどよ。大吾の出方をみたらなぁ・・・。」

「おいおい、そう暗くなるなって、楽しいところ行くってのにそんな顔してたらダメだぞ。」

言葉を交わしながら二人はひときわネオンが輝く『アクアパレス』という店の入り口の前で足を止めた。アルバイトらしきボーイが二人を見てすかさず声を掛ける。

「いらっしゃいませ、どうぞ!!」

 ボーイに案内され、二人は薄暗い階段を昇った。2階の入り口の扉は飾り気はないが見るからに上質で高級な雰囲気を醸し出している。

「ギィィ・・・。」

 扉を開け店内に入ると薄暗かった階段とは裏腹に、パァッと華やかな空間が二人を待ち受けていた。

「おぉ、今日は結構空いてるな。」

 店内を見回し、ぽつぽつとソファーに座っている客の様子を見て大吾はつぶやいた。

「夜はこれからです。存分にお楽しみください。」

 ボーイは調子のいい言葉を発しながら大吾と隆正を席に案内した。席に着くとすかさず煌びやかな衣装をまとった女の子がまず隆正の隣に腰をおろした。

「いらっしゃいませぇ。よろしくお願いします。」

 細身ながらも均整の取れた『ユウ』という女性が隆正にはついた。何度かこの店には来ているが、はじめて見る顔である。どちらかというと肉付きのよい方が好みであったが、器量も申し分なかったので隆正の表情は明るくなった。

「お兄さん、初めてですよね。飲み物はなんにします?」

 ユウが少し鼻にかかった声で、隆正の耳元でささやいた。

「うーん、じゃあ。最初はビールで。」

「はーい。ビールね。」

「そちらはどうします。ビールでいいですか?」

 まだ女性がついていない大吾にもユウは問いかけた。

「俺もビールで。」

「ビール二つお願いしまーす。」

 よく通る可愛らしい声でユウはやや離れたところにいるボーイに二人の注文を告げた。それを横目に大吾はタバコをくわえ火を点けようとしていた。それに気付いたユウがライターを手にしたが少し離れており、また大吾が制したこともあって、大吾は自分で事を済ませた。少し照明が控えめであったので大吾のはく煙はあたりをスモークのようにつつむ。

「ごめんなさーい、お待たせしました。」

 タバコの煙に少し目を細めながら大吾の隣にも女の子が腰をおろした。その娘は大吾の顔を見て「んっ?」という表情をし、

「あれぇ、大吾君じゃない?」

 と、笑顔を見せた。

「あ、えーと・・・佳奈さん、だよね。」

 大吾も少し考えて答えた。

「うん、久しぶり。」

 竹田の恋人の佳奈である。この店も含めて数回大吾は佳奈と会ったことがある。

「あ、そうそう。お店では『カリナ』だからね。」

 笑顔を振りまきながら佳奈はボーイが運んできたビールを大吾の前に置いた。

「えー、なあに。カリナさんは初めてじゃないの?」

 ユウが少し不思議そうに佳奈に問いかけた。

「そうよ。ちょっとした、知・り・合・い。」

「えー、何それ。」

 ユウも営業なのか素なのかとびきりの笑顔で大吾と隆正の顔を交互に眺めた。大吾と隆正も微笑みながらユウの表情を見ている。

「まぁまぁ、ユウちゃんも、お二人もまずは乾杯しましょ。ねっ。」

 佳奈が呼びかけたので4人は各々の飲み物を手に持ち、グラスを合わせた。店内は街の静けさとは裏腹に賑やかな空間を創り出していた。


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