十五
竹田がレポート作成に疲れ、『ルーニー』へ向かったころ、『ヨンキョー』では隆正が表情に疲労を浮かべながら大吾の出した大量のメダルを眺めていた。
「やっぱりお前はすごいよ。ヒキ強すぎるって。」
隆正は本気で感嘆の声を漏らした。隆正はこの日1200枚程出してはいたが投資が嵩んでしまっていたので収支的にはわずかなプラスであった。一方大吾はというと最初に引いたレギュラーの後、すぐにBIGを引きその後の高確でシングルボーナスの押し順を自力で当て、ATを掴み取った。このATが連チャンし、さらに金チャン30や100、ボーナスも絡み一気に3千枚ものメダルを吐き出させた。
「だからお前も『金太郎』やればよかったんだって。『マジモン』なんてやっとる場合じゃねぇだろ?」
「だな、中段チェリー引いて3連くらいじゃ話にならんな。」
『マジックモンスター』の中段チェリーはボーナスと連チャンモードが確定するこの台で最も熱い子役である。
「タカ、もうこの連チャン終わったらやめるからこの後どっか行こうぜ。」
「わかった、まぁ俺も今ならプラスだしな。じゃあ休憩コーナーでマンガでも見とくわ。」
「おう、じゃあシュシュッと『金チャン』(AT)終わったら行くわ。」
しかし隆正は大吾のことだからそうそう簡単に連チャンが終わるとは思えず、少し重い足取りで自分の台に戻っていった。台に戻った隆正は少しだけ回そうと思いレバーを叩きだしたが、5、60枚のメダルが吸い込まれていっただけで台が賑やかになることはなかった。自分の引きの弱さを少し恨みながら隆正は千枚強のメダルを流し、カウンターに向かった。隆正にとっての救いは、この日のカウンター担当の従業員が彼好みの可愛い娘だったことだ。隆正はこの従業員の姿を見ることも『ヨンキョー』に来る目的の一つである。しかし、元来消極的で、
なおかつ自分のフリーターという現状に負い目を感じている隆正は、どれだけこの店に足を運び好意をつのらせても声を掛けるどころか柔らかな表情を見せることもできない。
「大吾だったら話しかけたりするんだろうな。・・・」
そんなことを思いながら、その娘から受け取った景品かかえ、外にある換金所に向かって歩き出した。店内がうるさいこともあり、隆正は当時流行っていた歌を口ずさんでいた。自動ドアを開け外に出ると、むっとした空気が隆正の体をつつんだ。
「あーあ、何やってんだろ、俺。」
収支は少しプラスだが、さえない表情で換金所の小窓に景品を置いた。時計の針はすでに9時を回っていた。




