十四
18時半頃竹田は帰宅した。さすがに明日提出期限ということでレポートを作ろうと机に向かった。取り掛かり始めて30分がたった頃、レポートは3分の1ほど出来上がったが集中力が切れてきた竹田はだんだんイライラしてきて、床にゴロンと寝転がった。
「ふぅー。こんなことなら大吾たちと一緒に『ヨンキョー』行っとけばよかったな。」
時計を見上げると20時少し前だった。無性にスロットがやりたい。15時頃隆正から誘いの電話があったが、レポートをやると言って竹田はその誘いをきっぱり断っている。後悔したがもう遅い、パチンコ屋はあと3時間ほどで閉店してしまう。それにイベント開催ということでこの時間も『ヨンキョー』は満員であろう。
「しょうがねえ、ちょっと『ルーニー』でも行くか。」
『ヨンキョー』へ行ってもよかったのだが、竹田に対して誠実な隆正にきっぱりと断っていたこともあり、いつも客の少ない『ルーニー』へ行くことにした。断った相手が大吾だったら気にしなかっただろう。このあたりのこだわりも竹田という人間の特徴である。あまり時間がないということでササっと仕度をし、竹田は『ルーニー』に向かった。
1万円はあっさり無くなった。時計の針は9時をもう回っている。
「今日はダメだな。」半ばもう勝つことを竹田は諦めている。『ドン2』や『ニューパル』など比較的食い付きのよい台を攻めたが、うんともすんともいわなかった。
「さすがに『ルーニー』だな、(設定)1ばっかじゃねーか。」
諦めて帰ろうとも思ったがなんとなくこれで帰るのもすっきりしない。竹田は最後に一発AT機で勝負することにした。竹田が目を付けた台は『アラジンA』。AT機と言ってもいろいろあるが、爆発力は周りの台と較べて群を抜いている。そして他のAT機のようにBIG後何ゲームが高確率でその後はひたすら低確率、というようなモードが存在しない。この点が竹田は好きで、また短時間でも勝負したくなるある種の博打台なのである。
3千円入れたところで『単チェリー』を引いた。次ゲームの液晶にはラクダが通り過ぎた。少し期待が持てる、リール上にはリーチ目が現れていない。さらに次ゲーム、液晶では弱予告からではあるがルーレット演出になった。
「頼むぞ。」竹田は心の中で念じながら、レバーを叩いた。左上のランプが点灯すればAT突入である。しかし次ゲーム、ランプは光を放つことはなく軽快なサウンドも鳴り響くことはなかった。
「チッ、そうそう上手くはいかないな。」
その後少しムキになり同じ台に突っ込んだが、数枚の千円札が塵のように消えていくだけであった。
竹田が家路につく頃、時計の針は10時を回っていた。帰ったらレポートが待っている、そう考えると足取りがどうしても重くなる。しかし提出しないわけにもいかないので、ゲームセンターやマンガ喫茶に行くことなく素直に車を自宅に向かわせた。結局竹田の部屋の明かりは太陽が昇っても消えることはなかった。




