十
竹田が山本の家でマージャンをやっている頃、大吾と隆正はバイトを終え、ゲームセンター『ALウエイブ』に来ていた。この日はバイト後のマージャンは開催されなかったので、二人で少し遊ぼうということになったのである。バイトで7時間ほど働いた後にもかかわらず、二人は特に疲労の色もなく揃ってスロットをやりだした。
「でもさぁ大吾、俺らってホント好きだよな。」
隆正は個性的な低い声で独り言のように呟いた。喋りながらも手はせわしなく、レバーとストップボタンを動かしている。
「そうだな、もう夏だっていうのになぁ。」
二人とも特にこれといった趣味や特技もない、当然夏に何か計画があるわけでもない。フリーターの身分である二人は毎日時間をもてあましていた。
「やっぱり大学行きたいよなぁ、今年も受験しようかなぁ。」
隆正は去年大学受験に失敗している。今年も受験するつもりだが、全くといっていいほど勉強をしていないので他人事のような口調である。
「お前は大学行ってコンパしたいだけだろーが。」
大吾はいつものように笑いながら厳しいことを言う。
「そんなこと・・・あるな。コンパしてぇよ。だってフリーターじゃ女寄ってこないだろ?」
隆正から予想外の言葉が返ってきたので大吾は少し面食らった。
「なんだ、やけに正直だな。そんなに彼女欲しいか?」
「欲しいよ、お前はそうじゃないのか?」
隆正はいつもより口数が多くなっている。
「まぁ、そんなこといってても始まらんからな。適度に頑張ろうぜ。」
大吾は話が少し難しくなってきたので、変なことを言って話を強引に終わらせようとした。
「何だそれ、適当なこと言いやがって。フフッ」
隆正も大吾の発言に笑みがこぼれた。
「フフッ、じゃねーよ。エロく笑いやがって、そのエロさが彼女できん原因じゃねーのかよ。」
「そうかもな。」
和やかな雰囲気になり、二人はこの後6時ごろまで『ALウエイブ』でスロットを打ち続けた。
時計の針は6時を回り外はもう太陽の光が輝いている。大吾と隆正はさすがに疲れと眠気に負けて『ALウエイブ』を出ることにした。
「あぁ、太陽の光が眩しいな。」
大吾は目を細めながら少しかすれた声で呟いた。
「そうだな、俺ら土竜みたいな生活だもんな。」
隆正も日光を避けるようにうつむき加減である。
「空しいこと言ってんじゃねーよ。タカ。」
「そうだな、じゃあな大吾。」
言葉を交わすと、疲れきった足取りで二人は各々の車に向かった。通りはもう通勤する車で賑わいをみせ始めていた。




