↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二色の瞳を持つ聖女アリス〜博愛で妖艶なる愛の神官〜  作者: jetts


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/22

少女の面影残る地サーナ〜名物料理と海に消えた少女〜

私の作品をお読みいただきありがとうございます。


 2色の瞳を持つ聖女アリスの核心部分がこのサーナ編にて描かれます。全編を通じて今まで以上にアリスの過去の絶望と再生について語られます。


 性的被害、家族の喪失などで深い傷を負ったことのある方は十分にご自分の心の状態を確認していただき、不安定な場合はこの章を飛ばしていただくようお願いします。


 十分に気をつけていますがお伝えする内容自体はとても重い事柄ですのでご配慮お願い致します。

 宿の一室でフェルシーと二人テーブルを挟んで座っています。目の前のテーブルにはお料理がのっています。


 大きなお皿いっぱいに広がった鳥卵の半熟焼き。その上には真っ赤なお野菜を使った挽肉たっぷりのソースがかかっている美味しそうな一品。


 ニューサーナで一番の冒険者の宿『紅き太陽亭』名物料理『クリムゾンサンシャイン』です。


 盛り上がって右手にスプーンを構える私にフェルシーがジト目で声をかけてきます。


 「アリス、私は彼女のお話を聞きたいのだけれど」


 ふふっ、フェルシーとのこの感じ…………懐かしいと感じてしまいますね。


 「フェルシー。わたくしの事を知る、あなたならわかるわよね? 初めての街に来てアリスが必ずする事を」


 スプーンを振り上げて宣言いたします。


 「名物料理を楽しむ、よね…………。あの娘がふざけているのではなく貴女は本物のアリスなのね」


 フェルシーなら分かってくれると思いましたわ。元気よく食事の挨拶をしてスプーンをトロトロ卵に差し入れます。


 あらっ、卵の下に白いものがあります。これは、白芋を茹でて潰したものに濃厚な香りのする油と香辛料を混ぜたのではないでしょうか。


 スプーンにすくうと複雑な香りが辺りに広がります。先程までのお肉と卵の優しい香りに溶け合います。


 もう我慢できません、お口に運びます。


 濃厚に味付けされたお芋に優しい卵の味わい。そして、すっきり爽やかな酸味とお肉のジューシーさが後を追いかけてきます。


 美味しいですわ〜、優勝です、優勝を勝ち取りましたわ〜。もう、スプーンですくう手が止まらないです。


 フェルシーもわたくしの反対側で黙々と口に運んでいます。彼女もお好きな味だったようで何よりです。


 気がつくと大きなお皿のお料理は半分以上私たちのお腹に収まっていました。


 「フェルシー、貴女は今何をなさっているの?」


 私と同じく食べるペースが落ち着いた彼女のお隣に座り直しながら訪ねます。


 「学院の研究部を卒業して王立図書館で古代魔法の研究員をしているわ」


 私の方に寄り添いながら目を細めて答えてくれます。


 あれから五年…………あの子もそんな穏やかな道を歩むことができたらよかった…………


 「フェルシー、わたくしこれから真実のみお話します。貴女には辛い現実と淡い希望しかない…………得など無いかもしれません。それでもお聞きになる?」


 優雅に話そうとしたけれど、どうしても震えてしまう声で最後になるかもしれない問いかけをします。


 「失ったと思った親友に繋がる最後の糸…………聞かせて。覚悟はついているわ、アリスが語るのならそれは真実なのだから」


 私はゆっくり立ち上がり宣誓をあげます。


 「わたくし、愛の神様にすべてを捧げ愛の神官となったアリスは嘘偽りなく、あの夜暗い海に消えた少女の物語を友人フェルシーに授けます」


 私はフェルシーの側に座り直し、震えてしまう自らの手を彼女の手に添えながら話しました。


 フェルシーや学院内全ての人に知れ渡った少女に対して貴族の娘が行った痛ましい事件…………。


 たくさんの男子学生が一人の少女にした本来なら許されない事が、貴族の力によって正当化された。


 誰も少女を助けることができなかった…………


 それでも、親友や愛してくれる大人に支えられて歩もうとした少女にさらなる絶望が……………


 彼女はそれだけは受け止められなかった。だから、海に入り泡となりました。


 私は彼女が海で見つけた小瓶に入っていた黒き聖典により新たに生まれた命です。


 少女の弱い心は絶望によって、今は海の底にいます。ただ、その肉体は愛の神様の奇跡によりわたくしという新しい命を吹き込まれて生きています。


 ですから、わたくしはあの少女ではないのです。今それを認めたらわたくしは存在することができないのです。


 「フェルシー、彼女を知るあなたなら少女が何を希望として生きていたか分かるでしょう?」


 全てを語り、少女が何故死を選んだのか彼女ならわかる残酷な問いをわたくしはしました。


 フェルシーは考え込み、ある一つの真実に気が付きます。


 「うそ、アンの望みなんて一つだけじゃない。いつか大切な人と新しい家族に会う、ただそれだけじゃない」


 真実に気が付き頭を抱えて涙するフェルシー。


 そう、十歳で旅人の両親を亡くし天涯孤独で学院寮に暮らし、皆に囲まれながらも家族のいない孤独に耐えていたアンネリアーナ・シュタルゼルフの唯一の希望。


 いつか新しい家族に会うこと…………そんな平凡な望みはあの日、永久に絶たれたのです。

 




 


 


 


 

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。