表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

交わりの地タナトシェル〜愛の神官の矜持〜

 路地裏の奥、女性の声とギャハハハと下品な笑い声が響いてくる一軒のバー。


 上下に隙間があり、声も漏れ店内も見える両開閉式のスィングドアを押し開き、優雅に店内へ入ります。私の姿と後ろの3人を見てバーテンダーさんはギョッとしています。


 「ゴーデル、あの女は生け捕りにできたんだよな。俺様の玩具にするから従順にしておけよ。ギャハハハ」


 ボンボンの笑い声と対照的にバーテンダーさんとカウンターの奥にいた、マスターらしき人物が私に対して両手を挙げて降伏を示してきます。


 私はそれに答え、お辞儀をした後ボンボンの座るテーブルまで向かい、冷たい視線を投げかけます。


 「なっ、お前どうして」


 私と、後ろについて来ている元取り巻きさんを交互に見て口をパクパクされています。


 「坊っちゃん、俺らは罪を償って宿屋商工会の自警団に出頭します。貴方も罪は償ってください。では」


 元取り巻きのリーダーさんはボンボンに頭を下げた後、私に会釈をして二人を連れて外に出ていきました。


 「ゴーデルさんと三人様から貴方の浅はかな罪はお聞きしました。」


 ニコリと微笑みながらチョーカーに左手を添え、ボンボンの両脇にいらっしゃる女性に対して解毒と気付けの魔術を施します。


 先程まで乾いた笑いをして、ボンボンに寄り添っていた御二人の目に生気が宿りボンボンを押しのけて私の方に逃げてきます。


 御二人を抱きとめて、優しく頭を撫でてからお伝えします。


 「愛の神官アリスの名のもと、この男に天罰を下します。間に合わなくてごめんなさい、その代わり必ず報いは受けさせます」


 御二人に精一杯の気持ちを告げます…………彼女たちは私にお礼を言い、走り去ります。同時にバーテンダーさんとオーナーさんも店外に出ます。


 店に残されたのは私とボンボンのみです。震えている彼の隣に座り、囁きます。


 「貴方は罪を犯した自覚、ありますか?」


 座ったまま情けない声を上げて、私から離れようと慌てる彼の横に座り直し、肩を抱き寄せてもう一度問いかけます。


 「力を振りかざし我儘を通し傷ついた方々をお作りになった自覚はありますか?」


 逃れようと身体をねじろうとしますが、彼の力では身体強化されている私の腕はピクリとも動かせません。


 「ひっ、はっ離れろ」


 身体をめちゃくちゃに動かして暴れるので二の腕に腕を回して、完全に固定し抱きしめて力を込めます。


 「ぐわっ〜、いってぇ! やめろっ、やめてくれぇ」


 ミシッと彼の体が鳴った様です。耳元でお伝えしたかった事を問います。


 「そうおっしゃった方に貴方は手を差し伸べた事がおありですか?」


 問いながら助からなかったあのこの顔がよぎってしまい、思わず力が入ってしまいます。


 「いてぇよ。金なら払う、やめてくれよぉ」


 情けない声を出す彼に失望し私は立ち上がりジタバタと動く彼を力ずくで肩に背負い店を出ます。


 街をぎゃぁぎゃあと騒ぐ彼を担ぎながら歩きます。私たちの周りには魔術により、ゴーデルさん達から聞いた彼の罪が文字となりついてきます。


 街を歩く人の目にさらされ、見るなと叫んでいた彼ですが、周りの好奇の目に耐えられずいつしか黙り込んでいました。


 人々が彼の身分を囁き、罪状を読み上げひそひそと噂します。あまりにひどい所業に息を呑み、私にねぎらいの声をかける方もいます。


 何人か被害者の方もいらっしゃり、感謝のお声もいただきました。


 商工会に向かう私の前に多数の護衛を連れた身なりの良い眼光鋭い紳士が立ちふさがります。


 「親父、見てくれよう。ひでぇだろ、こいつ何とかしてくれ」


 どうやらこの方が父親ですね。噂では早くに亡くなられた奥さまの忘れ形見の息子に甘くここまでの悪行を許してしまったようです。


 さて、護衛の方はかなりの手練れが十数人。油断できません。左手でチョーカーを触り、ありったけの魔術回路を展開します。


 私の身体が光り輝き魔力が溢れ、護衛の方々が父親に集まり守りを固めます。思った通り動きがスムーズです。これは、逃げたほうがよいかも知れませんね。


 油断なくいつでもボンボンを下ろせるようにしながら間合いを調整します。


 「親父、早くこのクソ生意気なアマをやっけてくれよ」


 一触触発の空気の中、私の肩の上で喚き散らすボンボン。救えません…………


 護衛と睨み合いの時を崩したのは父親でした。彼は護衛を下がらせて私に近づいてきました。


 「愚息を正す事が出来なかったが為に貴女様の様な高潔な御方の手を煩わせてしまった」


 彼はその場で深く頭を下げました。


 私は、横にボンボンを手荒く下ろしてから父親さんの頭を上げていただき微笑みで返事をさせていただきました。


 父親さんはボンボンに近づくと、彼の手を取り立たせると。


 スパーン


 思いっきりボンボンの頬に平手打ちをしました。不意を突かれ自分のほおを押さえて呆ける彼に向けてきっぱりと告げる父親さん。


 「一人で生きて罪を償え、お前に出来る最後の愛だ。こいつを商工会に連れていけ」


 すぐに護衛が動き、放心しているボンボンを連れていきます。天を見上げている父親さんに近づき祝福を与えます。


 「貴方の愛は、愛の神官アリスが見届けました。犠牲者の方に平穏が訪れるよう我が神に祈りましょう」


 彼の涙に真の愛を感じています。ボンボンが彼の愛に気がつくとき時が来ることを切に願います。


 



 


 


 


 



 


 


 


 


 


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ