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交わりの地タナトシェル〜夜と夜明け〜

 ゴルダックさんとの酒宴が楽しすぎて夜中になってしまいました。


 夜道は危ないと言って宿まで送ってくれたゴルダックさんは、そのまま近くの酒場に消えていきました。


 相当飲んでいましたが…………まだ飲むのですね。半ば呆れながらも、久しぶりの深酒に心地良いふらつきを感じながら宿の部屋へ急ぎます。


 私が借りている部屋の前に人影がいるのを見てチョーカーに左手を添え、解毒と身体強化の魔術を起動します。


 一気に頭が冴え渡ります。


 ですが同時に忌まわしい記憶が込み上げてきました。


 廊下で男たちに囲まれた少女。逃げられずただ震えるだけの自分、そしてガラスのように壊れていく純白の何か。


 胃の奥から何かが上がってくる感覚に耐えて、意識を保ちます。


 彼女は私ではありません。


 私はアリスです。


 彼女は、海に儚く消えました。


 突然の記憶の混濁に翻弄されましたが、私はアリスであり他の何者でもありません。気を取り直します。


 あまりにあの時と似た風景に記憶が混乱したようですね。あそこに置いてきたはずなのですが…………


 周囲に注意を払いながら部屋へ向かいます。まだ、胃の底に何かを感じますが、まだ我慢できそうです。


 近寄ると、うとうとしていたアレンさんがこちらを見てきました。


 「えっ! 貴方が……………確かに愛の神官様とお聞きしていましたが……………」


 アレンさんは驚いております。恐らく愛の神官がどんな病も癒すという噂を聞いてこの場所を突き止めたのでしょう。


 「愛の神官様どうぞ…………」


 彼の言葉を止めるべく右手の人差し指でアレンさんの唇を閉じます。


 「アレンさん、対価はわかっていますか? わたくしが受け止める愛は熱い愛だけです。貴方は捧げるべき方がいますよね?」


 そういうと、アレンさんは顔を赤らめ黙ってしまいます。


 「貴方の望みはわかりました、貴方の熱い思いを神にお届けいたしましょう。ですが、もう夜更けです。これ以上は誤解を生みますよ」


 やんわりと帰宅を促し、後ほどお店で会うことを約束し部屋に入ります。


 後ろ手で扉に施錠と防音の魔術回路を展開し、ベットに倒れ込むと小刻みに震える身体を丸く縮め押し寄せる恐怖に堪えます。


 「ヤダよう」


 私の口から幼い悲鳴が漏れます。


 室内に響く悲痛な叫び…………


 今は溢れ出る彼女の心をこの部屋に閉じ込めて時を待ちましょう…………


 大丈夫、朝日が…………わたくしの希望である愛の神様の笑顔が如き太陽が、アリスを蘇らせてくれるはずです。



 

 



 

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