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交わりの地タナトシェル〜老紳士からの贈り物〜

 ゴルダックさんの話を聞き確信が持てました。あぁ~恥ずかしいです、わたくし考えすぎでした。


 あのボンボン、本当にソフィアさんを狙っただけのようですね。 オアンドルマンを使ったのだって、赤翼の秘宝の効果で、殺すという概念が無くなり嫌がらせで使ってたとか…………


 まぁ、秘宝の効果がなければとんでもない事になっていた可能性は否定できませんが…………


 絶対にあのボンボン、赤翼亭の秘宝狙ってないです。知っていたら…………


 はぁ~、まぁいいでしょう。ソフィアさんのお父様を癒してからボンボンを説得させていただいて解決しそうですね。


 でも、とても凄いことを知ってしまいましたね…………テリマヨにそこまでの物語が…………


 老紳士、彼はかの有名なサイコロの魔術師様でした。西の砂漠を越えた先のシュタイゼルク帝国の玄関口アイリーダを囲む白亜の壁に堅牢な守護の魔術を刻んだ偉大な魔術師です。


 遥か東の大陸で魔術の深淵を見たとされる彼は、美食家としても知られています。


 このタナトシェルでは飛翔定食店の看板メニュー『テリマヨ』を考案したのです。


 テリマヨはまたたく間に人気になり、ティッドさんの店は連日の大盛況となりました。今まで体験したことの無い、濃厚でまろやかな味わいに旅人までも虜にしました。


 他店も真似したものを作りますが、うまくいきません。それもそのはず、メインの材料が普通の料理人では思いもつかないものでした。


 『鳥の生卵』


 生の卵には毒があるのが常識です。長い間腹を下し高熱に悩まされるという恐ろしい毒で、幼子や老人など弱い者は命を取られる強い毒です。


 熱に弱い毒なので、焼いたり煮れば無毒になります。ですから、鶏の卵は火を入れるのが常識です。


 その料理人の常識がある為、まさかそんな物を使うとは思わないのです。


 ですが、実は手洗いと卵を酢に漬けることで解毒できることをサイコロの魔術師様は教えてくれたのです。魔術も使わないで解毒……………あまりにも意外な解決法の為、他の料理人は気がつくことができなかったのです。


 なので、ほかの方は真似る事が出来ずティッドさんの店だけに行列ができる状態が続きました。


 そこまでは良かったのです…………


 懸命に模倣してもたどりつけず不満を抱える他店舗店主の汚い心が滲み出ます。


 妬みです。


 繁盛しているティッドさんの店を羨む輩が出てきたのです。今以上に治安の悪いタナトシェルですから、かなり悪質なことが続いたそうです。


 そして、なんと放火され木造の長屋ごと全焼してしまったのです。


 絶望の淵に落とされたティッドさん。


 失意の中、声をかけてくれたのは再び訪れた、あの老紳士でした。


 「これは私の落ち度だな、すまない主人よ。もし赦されるなら贈り物を受け取ってほしい」


 彼はティッドさんにゴルダックさんの協力を得て石造りの新しい長屋をプレゼントしました。


 白く輝く外壁の新しい建物。延焼した十数店舗の定食屋と共に蘇った新たな店舗を前にティッドさんは、涙を流しながら老紳士に問いかけました。

 

 「旦那、こんな物を頂いていいのか?」


 老紳士は応えます。


 「私は人の笑顔が見たい、店主の料理にはそれを成し遂げる力がある」


 ここで、新たな長屋に彼から祝福が与えられました。


 「新たな世界の規律を定めよう。 6!」


 彼の前に一抱えほどの大きな立方体が現れて六つの点がある面を上にして地面に落ちます。

それは、溶けるように無くなり長屋に魔術が施されます。


 「この地に争いは起こらず、赤き炎より飛翔した翼は永劫この地に羽ばたき続ける」


 厳かな宣言により長屋に新たなルールが刻まれました。この場所での暴力、殺傷、破壊が禁止されたのです。


 本気ではない殺気程度は禁止されませんが、明らかな暴力等は出来ないそうです。


 テリマヨが世界のルールを変えた、それが赤翼亭の秘宝なのです。


 以後、ティッドさんも少し控えめにテリマヨを扱い他店と競合しないようにして100年経った今、知る人ぞ知る町の名物になったのです。


 楽しそうに昔話を語るゴルダックさんを見て、毎夜飲んで騒いだあの四人を思い出しちょっぴり涙が出たのは秘密です。


 さぁ、明日は癒しに町のゴミ掃除に忙しくなりますわよ。


 「プロージット!」


 今宵、何度目か分からない乾杯を交わします。


 お酒、おいちいですぅ~。



 



 


 


 


 


 


 


 





 


 


 


 

アリスの旅は続く〜


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