第3話 祈り中毒
世の中には、思った以上に可哀想なことが多い。
最初は少しずつ悲しい出来事がスマホに表示されていたのに、
今は画面を送るたびに、悲しみが溢れてくる。
胸が痛む事件には、心からのお悔やみと絵を描いてコメントした。
だんだんと、私に共感してくれる人が増えてきた。
仏壇もないのに、小さな線香立てを買って、
手を合わせるところを写真に収める若い女の子。
事故があった現場に赴いて、花を置いた男の人。
──世界が、きっと少しずつ優しくなってるのかもしれない。
ただ、少し寂しいことに、私の真似をする人が増えて、
私が目立たなくなってきた。
そりゃ、若い女の子が真剣に手を合わせてたら、誰もが見るわよね。
でも、私が始めたの。
このスマホの通知っていうのも、面白くない。
自分のコメントに返信がくるとお知らせしてくれるのだけど、
しょっちゅうスマホが気になっていく。
通知が来てLINEだと、少しがっかりする。
また孫の写真か。
どうしたら、私のコメントを見てくれるだろう。
水彩は、これ以上上手くなる気がしない。
そんな時に、英語を翻訳できることに気付いた。
世界中に悲しい事件は無限にある。
悲しいことを自分事のように感じて、誠実にコメントする。
私のコメントはAIが英語にしてくれる。
──世界と繋がって、世界中の悲しみが癒せるかもしれない。
最近は、なぜか悲しい事件があると安心する。
私は、生きてるって思えるようになってきた。
ああ、早くどこかで誰かが亡くならないかなぁ。




