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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
58/220

小学生か!

「坊っちゃま、今日から学校ですよ。 ほら早く起きて。 」


俺が気持ち良く朝のまどろみを楽しんでいると体を揺すられアリアの声が聞こえてきた。

まだ寝ていたい‥‥


「あと、少し‥‥ 」


起きまいと布団の中に潜り込む。

俺の起きまいという断固たる意思を感じ取ったのか静かになった。

よし、眠り直そう。

目を閉じ意識の海に飛び込んだところで、ボソボソとアリアの声が聞こえてくる。


「か、かわいい。 でも、起こさなきゃ。ここは目覚めのキスで。 」


ちょっと待て、なんだその嬉し恥ずかしい展開は!

起きるべき、このままでいるべきか頭の中でグルグルと考える。

この時点で目がパッチリと覚めたが、これが狙いなら相当な策士だろう。


スタ、スタと足音が近づいてくる。

胸がドクドクと激しくなっているのが聞こえる。


起きる、起きない、起きる、‥‥‥‥。


布団の中で目を見開いてブツブツと呟いていると外から声が聞こえてきた。


「「「ルディ〜! 学校行こ〜! 」」」


グレイとその他諸々の声だ。枕投げ大会は大成功に終わったらしくかなり男子諸君と仲良くなった。

しかし、お前ら小学生かと言いたい。

‥‥あ、小学生か。


これを機会に起きよう。 こんな大声で寝たままを装うことなどできないだろう。


俺は布団から這い出て、うーんと背伸びをする。


「アリアおはよう。 いい朝だね。 」


俺がそう笑顔で言うとアリアは胸を抑え蹲ってしまう。

今日も俺のスマイルは絶好調らしい。


ベットから立ち上がり、クローゼットに向かい、制服を取り出す。

アリアはそこで再起動したらしく、こちらに近寄ってきた。


「坊っちゃま、私がやります。 」


「頼むよ。」


俺は自分できた方が楽なのだが仕事を奪うのはなんなのでなされるがままだ。

アリアが少し鼻息が荒いのは俺のせいなので気にしないとしよう。


「坊っちゃま、終わりました。 」


制服が着終わった後、帽子を被り襟を正す。

よし行くか、朝ご飯は食堂で食べるらしいし。

俺はアリアを連れ玄関までスタスタと歩いていき、振り向く。


「アリア行ってくるよ。 」


「はい、行ってらっしゃいませ! 」


そして俺は玄関を開くと、1年生男子の殆どがいた。

その中からグレイが出てくる。


「ルディ、遅いぞ。 」


「ごめん、ごめん。 さあ食堂に行こう、お腹すいちゃったよ。 」


「そうだな、先輩達に会うのにお腹空かしてちゃダメだよな。 」


そう、今日は対面式だ。 入学式で手伝いをしていた人などは会った事があるが、ごく少数だ。

それに、入学式では上級生は参列してなかったしな。


俺がそんなことを考えていると、俺たちと同じく食堂に向かう別の学年の生徒達が俺たちを見てギョッとしている。

まあ、50人強いるからな。そりゃあ驚く。


俺は苦笑気味に歩き出すとみんなも俺に続くように歩き出した。


‥‥おい、これって俺が率いてるみたいに見えるじゃないか。

なんで綺麗に三角形を作ってるんだよ。

練習したのか? 練習したんだろ。 そして俺を辱める気だな、そうに違いない。


ゾロゾロと歩き始めた俺たちをを見て先程の先輩方はもちろんの事、掃除のおばちゃんまで二度見して箒を取り落としている。


「おい、あいつ僅か1日で1学年の男子生徒を掌握したぞ。 な、なんて統率力だ‥‥。」


「ああ、入学したては多かれ少なかれ天狗なのは恒例。 どうやったんだよ。 さすが聖魔。 」


先輩方違います。 こいつらがふざけてやっているだけです。


きっとそうだと振り向いてみると、なぜか全員枕投げ大会の時の精強な顔立ちになっていた。


おい! さっきまでのあどけない表情はどうした!?


はあ〜と密かにため息をつき足早に食堂に向かうのだった。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



50人強の男子生徒を引き連れ食堂に入った俺はやはり注目の的だった。

それを快く思わない先輩もいるようで顔を顰めている人もいる。

中には過激になる人も‥‥。


俺たちが席を取ろうと歩いていると足が出される。

俺を転ばせようとしているようだ。クスクスと笑ってる。

確かにゾロゾロと引き連れてきたのは悪いと思うが、こんな陰険なのは頂けない。

俺はその足を物ともせず踏みつける。


「いってぇ!! 」


俺が踏みつけるとは思わなかったのかその席にいた先輩達は驚いて目を見開いている。

だがそれも少しの間だけの様だ。


「てめえ! 何をする!! 」


「先輩に対する態度がなってないぞ! 」


「1年生が生意気だ ! 」


ムカつくな。 俺に足をかけようとしたくせに何をする! だと? 手加減せず、へし折ってやれば良かった。


「すいませんでした先輩方。 ですが、足を人が歩く道に出されてしまうと転んでしまう生徒が出てしまいます。 私も避けようとしましたが‥‥。」


そこで悔しそうに顔を顰めて続ける。


「少々反応が鈍く先輩の足を踏んでしまう始末、大変恥ずかしい限りです。 先輩方の足が長い事は重々承知していますが、どうか足を伸ばさないで頂けないでしょうか? 」


俺がワザと踏みつけた事を知っている後ろのみんなはクスクスと笑っている。

それが先輩達の怒りに火を付けたようで、俺たちに一斉に殴りかかっていた。

俺だけなら全て回避、反撃できるが他のみんなは少し厳しいだろう。

なら‥‥。


俺は左手を前に水平にあげ指を振り下ろす。


すると先輩達は一斉に跪く。俺が重力を掛けたのだ。

跪いている先輩達に近づき間近で目を見つめて、小声でささやく。


「先輩方、暴力はいけませんよ。 僕も、暴力で対抗しないといけなくなりますからね。 」


それを聞くとガタガタと震え始めた。

これでこの人達はもう嫌がらせはしないだろう。


俺が立ち上がり、ひと仕事したぜと達成感に浸っていると食堂のドアがバタン! と勢いよく開かれた。


「生徒会だ! 大人しくしろ! 」


どうやらまだ面倒な事は終わってないらしい。







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