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信濃の修羅〜現代人の俺、存在しないハズの真田の三男坊として転生す〜  作者: ギュネイ山本
第四章【出会いと別れ…。源四郎、『剣聖』と出会うの段】

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其之三

――天正9年、閏7月――

――硝石蔵――

「若ぁ!薬研は…」

「終わっとるど。」

「お、おう。」

「源四郎ぉ!調合の支度ば…」

「済んでおりまする。」

「は、早いな。」

弥七郎との別れより早半年。

源四郎と又七郎は変わらず硝石蔵での丁稚仕事に精を出していた。

だが…蔵長権左はそんな二人を見て少し表情を曇らす。

「………。」

「こんにちわぁ〜。」

そんな中、硝石蔵にやってくる妙。

「おぉ妙か。どうしもうした?」

「これは蔵長様…なんだか最近又七郎と源四郎が少し気落ちしてるようでして。」

「…おはんも気付いちょったか。確かに仕事はせっせと励みよるがな。だけんども…」

そうして遠巻きに源四郎、又七郎を見やる権左。

確かにテキパキと仕事をこなしている二人。

だがそこには…この硝石蔵に来たばかりの頃のような【ギラギラと輝くような熱意】はあまりなかったのである。

――昼餉後――

「…なぁ又七郎ぉ。」

「なんじゃあぁ。」

「あんちゃん、今頃どーしてっかなぁ。」

「…知るか。」

昼餉を取り午後からの仕事までのひとときを過ごす二人。

話題はやはり半年前に別れた兄貴分、弥七郎の事である。

「だいたいなぁ〜…ここらのゴロツキ相手にしてもなぁ。」

「んだなぁ。弱っちすぎるわい。」

近頃は【佐土原が対の化生】と呼ばれる二人にビビってるのか…ゴロツキによる乱暴狼藉はめっきり減ったとは言え、たまにそう言うことが起こると二人して駆けつけるものの、二人には物の数ではなかった。

「あんちゃんの【本気】から比べたらなぁ…止まって見えるからな。」

「そうじゃのぉ〜…少し喉ば渇いたの。源四郎、仕込んどったサイダーば飲まんか?」スッ

「そうすっか。」スッ

季節はすっかり夏なこともあり二人はちょくちょく【松葉サイダー】を仕込み湧水場で冷やしていた。

早速サイダーを飲みに湧水場に向かった二人。

だが…

「おぉー、久しいの二人とも。」

「…義弘公?」

「叔父御殿…。」

そこには義弘、そして………

「うんうん♫これは美味し【砂糖水】よ!この弾ける喉越し、大変美味であるな!!」

「「おっさん………誰?」」

――硝石蔵詰所――

「聞いたぞ二人とも!統虎ば筑前に帰ってなんぞ沈んどるとな!!」

「「はぁ…」」

「…。」ズズッ

詰所にて義弘、そしてさっきからサイダーを飲みっぱなしの謎の()()()()を交えて話す二人。

「おい源四郎!あのおっさん、さっきから人が仕込んだ【サイダー】ガバガバ飲みよるとぞ!」ヒソヒソ

「だよな!甕三つ仕込んでるとはいえ図々しいにもほどがあるよな!」ヒソヒソ

二人が小声でおっさんが自分たちがしこんだ【松葉サイダー】をグビグビ飲むことに不満を漏らす。

「………くくくっ。聞こえておるぞ、童ども。」コトッ

そうして空になった甕をおくおっさん。

「「あ〜〜〜!全部飲んじまいやがったなこのヤロー!!」」

二人が声を揃える!

このクソ暑い最中、二人の日々の楽しみであった【松葉サイダー】。

それをよこから【どこの馬の骨とも分からないおっさん】が掠め取っていったのだからこれは心中穏やかでなどいられない。

「食い物の恨みは万倍返しだ!表出ろよ、おっさん!!」ザッ

「そうじゃ!義弘叔父、止めても無駄ですとじゃ!!」ザッ

そうしてブリブリとしながら外へ向かう二人。

「やれやれ…とまぁこんな感じの礼儀知らずな餓鬼であるが宜しいか?()()殿()。」

「かっかっか!義弘公、若人とはこうでなくては張り合いがありませぬ!…よろしい、相手になろうぞ餓鬼共♪」スッ

()()と呼ばれたおっさんが笑いながら外へ出る。

「(なが…よし……!?)まさか!?」タラー

その【ながよし】と言う名を聞き血の気が引き出す源四郎。

そんな源四郎を見て又七郎が問う。

「なんじゃ源四郎ぉ?そんな高名なおっさんなんか、あいが??」

「又七郎…おめぇ余裕こいてると足元すくわれる、いや!痛い目みるぞ!!あんちゃん相手にする位の気概でやれ!!」

「あぁ!?あんおっさん、そいな手練とか!?」

「あ〜…いつまでくっちゃべっとる餓鬼共?…得物はこれでよかろう。」ヒョイッ

「「はぁ!?」」

そう言いながらおっさんは…足元に転がっていた【松の枝】を手に取る。

それを見た二人は驚愕する。

「ちょ!?おっさん!?!?」

「おはん!ちょいと舐めすぎじゃなかとか!?」

「はぁ?おぬしら如き餓鬼共、この【枝木】一つで充分よ。ほれ、さっさとかかって来ぬか。」ホジホジ

鼻をほじりながら余裕綽々と言わんばりに二人に相対するおっさん。

これが二人に火をつける!

「「…………………………………………………あ゛?」」ブチッ

外に出てからこれまで舐められっぱなしの二人。

その堪忍袋が…今切れた!!!!

「舐め腐りやがって!」ダッ

「ぶっちめたっど!こん馬ン骨がぁ!」ダッ

言いながらも【弥七郎クラスの手練れ】を想定し左右に散開する二人。

「(ほぉ…流石武家の倅なだけあるか。だが!)…ッ!」

おっさんは構えも取らずに二人が来るに任せる。

「たりゃあ!」ブンッ

「ふっ…」スッ

「なろおおお!」ブンッ

二人の拳をこともなげに躱すおっさん。

「……ならッ!」ザッ

「だろうと思ったわ。」ピョン

「ちゃえええい!」ヒュンッ

「おぉ!なかなか良いの♪だがまだまだ。」ヒョイ

今度は水面蹴りや上段蹴りも交えるもそれよすら右へ左へ飛んだりはねたり。

「な、何なんだよおっさん…」

「ま、まるで当たらん…それにヒョイヒョイ飛びよって!猿か!!」

「カカカ!それこそが()()()()()()()()!」

右に飛び、左に跳ねる。

そんな感じで翻弄される源四郎と又七郎。

「さて…そろそろコチラからゆくぞ!」バッ

「「ぐぇっ!?」」

言うなり足元の【砂】を蹴り上げるおっさん!

これには二人ともたまらず腕で顔を覆う。

それが仇となり…

「それ。」ピッ!ピッ!

そうして二人の首筋に枝木を這わせるおっさん。

「………そこまで!」

それを見るや三人を止める義弘。

「…くっそおおおおおお!」

「かぁあああ!みすみすやられるとはの!」

悔しがる源四郎、又七郎。

それを尻目に………

「まだまだ修行が足りんのぉ餓鬼共♫」

余裕綽々で息もきらしてないおっさん。

「おっ…おっさん、おはん一体何者じゃ?」

「はっはっは。それはそっちの餓鬼に聞くといい…さっしはついてるのであろう?」クイッ

又七郎の問いに源四郎を顎先で指し示すおっさん。

「………丸目蔵人佐長恵様、だろ?」

「左様。」

「丸目……蔵人佐ぇ???」

――再び硝石蔵詰所――

「でぇ源四郎ぉ?」ボソッ

「ん?」

「あの丸目某っておっさん、そんな凄か御仁なんか??」ボソッ

詰所に戻り義弘、そして蔵人佐の前に座した又七郎が源四郎に耳打ちする。

「………はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。又七郎く〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん?」

「なっ、なんじゃあ。」

源四郎が頭に【超】と付く位長いため息の後、又七郎の問いに応じる。

「まず…オメェ、流石に【上泉伊勢守(信綱)】様は知ってる………………よな?」

「なっ!?源四郎ぉ!おはん、流石においを馬鹿にしすぎじゃっど!!伊勢守様ん事ば知らん武家がこの日ノ本におるわけなかろが!!!」

源四郎に逆に問われ顔を真っ赤にしてキレる又七郎。

【上泉伊勢守信綱】。

この時代の日本の武家社会において知らぬ者はいないであろう超有名人。

先の将軍たる足利義輝の剣術指南役であり…

現代に置き換えて言えば大○翔平や井上○弥クラスのスーパースターである。

「あっそう…あのね又七郎?」

「なんじゃ!」

「俺ぁな?常日頃オメェの()()()を目の当たりにしてる身としちゃあな…涙ちょちょ切れる思いなんよ普段から!!分かるか!?」

「あぁ!?人をお得意のノータリン呼ばわりか!」

「そう言ってんだこんダボッ!」

「…はぁ〜。」

「また始まった…」

二人お得意の目くそ鼻くそな言い合いに義弘、妙も呆れる。

「で!だ!!こちらの丸目蔵人佐様はな、そんな伊勢守様から【皆伝】を賜った数少ない高弟の一人なんだよ!知ってっか!?」

「知らん。」

「ほれみろ!」

「鬱陶しか奴じゃ!おいは分家が嫡男ぞ!?本家と付き合うたる武家のモンなんざ知らんとじゃ!」

「あ〜卑怯!卑怯だねぇ又七郎くん!普段分家の小倅扱いされると怒るのにこういうときは俺分家の倅だもん♪…ってか!あー恥ずかしい恥ずかしい!!」

「こんたわけがぁ!おいの実家ば馬鹿にしよるとかぁ!?」

「テメェ自身を馬鹿にしてんだっての!」

「あぁ!?いい加減にせぇよこん信濃ん山猿が!」

「はぁ!?てんめぇ〜…言うに事欠いて山猿呼ばわりか!表出やがれ!このスカタンがよぉ!!」スッ

「上等じゃあこんダボぉ!!」スッ

もはやお馴染みの売り言葉に買い言葉。

二人が立ち上がるも…

「…やかましい餓鬼共よな。これ、落ち着かぬか」スッ

ペシッ!ペシッ!

「でっ!?」ストンッ

「だぁ!?」ストンッ

蔵人佐が一瞬で二人に詰め寄り頭を叩く。

そうして尻もちをつく源四郎、又七郎。

「お、音もなく詰めて来やがった…」

「なんなんじゃこんおっさん…ほんに化け物か!?」

蔵人佐の圧倒的力量の前に目を丸くする二人。

「して、蔵人佐殿?この餓鬼ども、眼にかないましたかな?」

ここへ来て義弘が蔵人佐に問う。

「かっかっか!かなうも何も!こやつらほど【下地】が出来上がった餓鬼などそうそうおりますまい!!」

「!(俺と又七郎が【空挺体操】に【柔軟】やってるのを気づいたってのか!?この短時間に!)」

一人驚愕する源四郎。

蔵人佐は更に続ける。

「それに…おぬしら()()()()()()()()()()?」

「「!?」」

「なんと…そこまで分かるとは流石ですな。」

「このような生業をしていると分かるようになるのです義弘公。」

なんという男であろうか…

源四郎、又七郎が【既に人を斬ったことがある】ことまで言い当てる蔵人佐に更に驚愕する二人、そして感嘆する義弘。

「なれば最早話は決まったようなモンじゃな。妙少しよいか?」

「はい義弘様。」

「すまぬが権左を呼んできて貰えぬか?」

「かしこまりました。」スッ

しばし後…

「お呼びでございますか義弘公?」

「おぉ権左、待っておったぞ。」

権左が現れる。

「さて権左よ、これなる御仁は丸目蔵人佐殿よ。」

「お初にお目にかかる権左殿。それがし蔵人佐と申す。」スッ

「おぉ!これはご高名なあの丸目蔵人佐様でしたか!満足なもてなしも出来ず申し訳ない!」ペコリッ

そう言って頭を下げる権左。

「な?蔵長すら蔵人佐様知ってんだぞ?だからオメェどんだけ浅学なんだよ??」ボソッ

「まだ言うかコイツ!」ボソッ

「…あんた達、いい加減にしなさいよ。」ボソッ

しまいには妙にまで窘められる二人。

「して義弘公、手前が呼ばれたのは…」

「うむ。それは蔵人佐殿より…」

「なれば早速…権左殿、それなる二人をそれがしに預けて下さらぬか?」

「なっ!?」

「んぉ?」

「………。」

突然の蔵人佐からの申し出。

源四郎は驚愕するも又七郎はキョトンとし、権左は押し黙る。

「く、蔵人佐様!俺はまだまだ火薬師として修行中の身!島津の火薬調合の全てを修めては…」

「まぁ待て源四郎…」

まだまだ教わる事があると蔵人佐からの申し出を辞そうとする源四郎であったが…

それを権左が制する。

「蔵長…?」

「源四郎ぉ、おはんここば来てどんだけ経った?」

「一年ほど…」

「たったそんだけばうちに薬研任され調合ば教わり…最近では練った火薬の干し加減まで教わりモノにしたとなれば…おはんは立派な火薬師ぞ?」

「そうは言いますが蔵長!」

「そいにおはんは元々武家、信濃ば真田のわけもん。武芸ば修めんと如何する?」

「それは…」

自分の事を火薬師と呼びこれまでの頑張りを認めてくれた権左の言に源四郎も口をつぐむ。

そこへ又七郎が言う。

「…なにをふんぎりつかぬ事ば言うとるとじゃ源四郎!」

「あぁ?」

「おはんがこん島津…薩摩ば来た理由はなんじゃ?おはんの大好きな嫁御、みお殿ば【妖刀・魔剣】になるち誓いは嘘か??」

「うっ…」

又七郎に自身の泣き所たるみおの名を出されたじろぐ源四郎。

又七郎は続ける。

「だいたいおはんは剣はからっきしじゃろうて!ここで剣の腕ば磨くのは好機ぞ?」

「そこは触れるんじゃねぇよ!!」

「かかか!まこと真田の末子は面白い男よ!その歳で嫁御がおって反面あれだけの体捌きを見せながら剣はからっきしとな?ますます興味が湧いたわい!!」

又七郎に剣はからっきしと突っ込まれムキになる源四郎。

蔵人佐はそれを尻目に笑う。

「ともかくじゃ源四郎。若はともかく…おはんはかかぁ亡くしたおいの【倅】みとうなモンじゃっど。それが天下の丸目蔵人佐殿の眼ぇば叶ったとなればこれほど嬉しか事ばなか。存分に鍛えてもらうとぞ。」

「ッ!蔵長ぁ…」ウルッ

「話は纏ったようじゃの…」

「いや叔父御殿、もう一つ纏めねばならんこつばあります!」

「んん?」

権左からの【倅扱い】に感服し目元が潤んだ源四郎を尻目に又七郎が義弘に言う。

「なんじゃ又七郎?おぬしは蔵人佐殿の元へ行く気はあるとじゃろて。」

「はい!ですが………」チラッ

そういって又七郎は…妙を見やる。

「ん?なぁに又七郎?」

「妙、おはんも来るとじゃ。」

「は?アタシは剣なんて…」

「そうじゃなか。これまで通りおいに飯ば作ってくれ…これからもずっとじゃ。」

「…………へ?」

「おぉ!?」

「なんとなんと♫」

「おいおいおいおい!又七郎ぉ!?」

――数刻後――

――宿舎への道行き――

「………。」

「………。」

「(きっっっっっっまずいなぁ!なんかしゃべれよ二人ともぉ!!!)」

蔵人佐、義弘を見送った硝石蔵からの帰り道。

先ほどの又七郎の発言もあり気恥ずかしいのか黙りこくる又七郎と妙。

それの気まずい雰囲気を一人、一身に受ける源四郎は胸中で叫ぶ。

とここで妙が口を開く。

「あのさ又七郎…」

「…おん?」

おずおずと問いかける妙に又七郎も応じる。

「さっきのは…その…」

「さっきの?あぁ…あれか。」

「(いや〜妙さん!この馬鹿にさっきの言葉の意味なんて分かってる訳が………)」

妙の精一杯の問い。

それに対する又七郎のそっけない対応を見た源四郎は【又七郎は絶対に分かってない】と腹の底で断じたが…

「言葉通りのいみじゃっど。」

「えっ…」

「だから!言葉通りの意味じゃ!!おいが死ぬまでぞ!わかったか妙!」

「………あんたそれ分かってんの!?あたしに【嫁】になれと…」

「………そう言っとるんじゃ。」かああああ

なんと又七郎!意味をわかっていたのか耳まで真っ赤にして妙に答える!!

これには源四郎驚愕!!!

「お、おおお、おめぇ!意味分かって言ってたんかよ又七郎!!」

「あ、当たり前じゃあ!だいたいおはんが『神様仏様じゃないんだから思ってることはちゃんと口きかねぇと伝わりゃしねぇぞ?』なんて言うたんじゃろが!!」

「そ、そりゃ言ったけどさぁ…」

そんな源四郎に「お前から教わったから」と答える又七郎。

これには自分で言った手前たじろぐ源四郎。

そんな二人を尻目に………

「…………。」かああああ

妙もまた顔真っ赤にして固まる。

「おーい妙ちゃん?」

「おう妙ぇ!」

「え!あっはい!」

そんな妙に二人は声をかけ、呆けていた妙も応える。

「で、どうなんじゃ!」

「な、何が!?」

「おいと【夫婦(めおと)】ばなるんか!ならんのんか!?どっちじゃ!!」

「えぇ!?あたしが決めていいの!?」

「おう!かく言う源四郎めは嫁のみお殿ば【答え】、ちゃんと聞いたと言うとったじゃ!それが嫁ばしたいおごじょへの礼儀言うたわ、こいは!!」

「お?ちゃんと覚えてやがったか、関心感心♫」

「茶化すんじゃなかっど!」

完全にいつもの調子に戻った三人。

以前源四郎が話した内容を覚えていてキチンと妙の答えを聞こうとする又七郎。

この時代の価値観とは違う又七郎からの問いに困惑する妙。

それを茶化す源四郎。

そうしてしばらく後…

「…ホントにあたしでいいの?」

「おう。」

「あたし、良家の娘ではないよ?」

「かまわん。家格なんぞ気にはせん。」

「家久公に叱られるよ?」

「馬鹿を言うな!おやっどんが家格どうこうでおいが選んだ【嫁御】ばケチつけるか!」

「ふふっ♪冗談よ…それなら」スッ

そういうと又七郎に深々と頭を下げる妙。

「ふつつか者ではありますがよろしくお願いします。」

「よか!」

「ははは!おめでとう又七郎!妙ちゃん!!」

「ありがとうの源四郎。」

「うん!ありがとう源四郎!」

こうして(ひとまず当人間での話ではあるが)又七郎と妙は晴れて夫婦になることになったのであった。

――数日後――

――硝石蔵宿舎前――

「皆様!蔵長!!お世話になりました!!!」

「世話んなったの!」

「女将様もお世話になりました。」

今日は源四郎、又七郎、妙が内城下に義久が用意した【丸目道場】へ移る当日。

権左、宿舎詰の女将さん、そして非番の硝石蔵詰の旦那衆も見送りに集まっている。

「うむ…身体に気をつけるんど源四郎……」ウルッ

「まぁまぁ蔵長ったら…でも本当に気をつけてね源四郎ちゃん、妙さん…」ウルッ

「源四郎ぉ!もし郷里(くに)でなんかあったらいつでも薩摩へ戻ってこいよぉ!」グズッ

「ほうじゃあ!義久公なら真田の家、まるまる面倒見てくれっど!!」グズッ

皆目に涙を溜めて三人を見送る。

「へへへ、ありがとうございます皆様!ここで学んだこと、この源四郎決して忘れませぬ!!」

「おいもじゃ!佐土原ば帰ってもおはんらは同じさつまへご!おいは常におはんらと共にあっど!」

「「「「「おおおおおおお!」」」」」

旦那衆が又七郎の言に応じる。

流石は分家とはいえ佐土原がヌシ、家久の嫡男と言うところだろう。

「皆様、私がいなくなっても好き嫌いせず身体に気をつけて下さいね!」

「妙ちゃんも元気でな!」

「若ぁ!妙ちゃんば泣かすなよ!」

「おぅ!」

妙は皆を気遣い、旦那衆はそんな妙と又七郎のことを聞いたのか二人を祝福する。

「では皆様…行ってまいります!!」

そうして皆に見送られ三人はひとまず内城へ!

――内城、謁見の間――

「久しいの源四郎、又七郎。」

「お久しゅうございます義久公。」スッ

「お久しゅうございます義久叔父。」スッ

久々の義久との謁見。

二人が頭を下げる。

「それに…そちが妙か。義弘より話ばきいちょる。よぉ又七郎んとこば嫁ぐ気になってくれたな、島津ば家はおはんを歓迎すっど。」

「もったいなき御言葉、痛みいります義久様。」スッ

更に妙にも言葉をかける義久。

それに応え妙も頭を下げる。

「さて…丸目蔵人佐殿とはおいも会いもうした。あの御仁ば師事すればおぬしら二人の剣の腕も格段に上がろうぞ、励め。」

「「はっ!」」

――かかる後――

――内城、広場――

「「「「「エーッ!オーッ!エーッ!オーッ!」」」」」

「おっさん!」ザッ

「来たぞぉ!」ザッ

「…これ!」ペシ!ペシ!

「「だぁ!?」」ストンッ

義久への謁見を済ませ蔵人佐がまさに集まった島津家臣、門下生へ稽古をつけている最中へやって来た源四郎、又七郎(妙は内城の女中のトップ、お局様へ挨拶へ)。

すかさず蔵人佐は二人にタイ捨流独自の稽古道具【袋竹刀】で二人を軽く叩く。

たまらず尻もちをつく二人。

「ってぇな!」

「なんばすっとじゃ!」

「黙らっしゃい!稽古場へ入る時はまず【一礼】だろうて!そら、早うせんか!!」

「「お、おぅ」」スッスッ

二人揃って立ち上がり一礼をするも…

「これッ!!!!」ペシ!ペシ!

「「でっ!?」」

「返事は『はい』!」

「「………はいっ。」」

またしても蔵人佐から礼儀の面で指導(竹刀で物理的に)が入る。

そしてムスッとしつつもそれに応じる二人。

そんな二人に家臣たちも気づく。

「おぉ若様ぁ!!」ブンッ!

「それに源四郎!遂に谷山からこちらへ移ったかぁ!」ブンッ!

ちょくちょく谷山から義久の元へ硝石蔵での仕事ぶりの報告へ来ていたてまえ、二人と顔見知りな家臣達もチラホラ。

「これおぬしら!今は稽古中ぞ!手を抜くでないわ!!!」

「「「「「ッ!はい!!」」」」」ブンッ!

そんな家臣、門下生たちを「気を散らすな!」と言わんばかりに一喝する蔵人佐。

それに応え再び一心不乱に竹刀を振るう門下生。

「さて…源四郎、又七郎。」

「はい。」

「はぃ…」

「おぬしらは本日を以てこの丸目蔵人佐長恵の門下となった、分かるな?」

「「はい」」

「では…()()()()()()()()()()()()()?」

「「へ?」」

蔵人佐からの突然の問い。

これには二人ともキョトンとする。

そこへ蔵人佐は続ける。

「つまり…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事だな………このたわけ共め!」ベシ!ベシ!

「ギャッ!?」

「でっ!?」

先ほどとは打って変わって強く二人を打ち据える蔵人佐!

いくら竹刀とはいえこれは痛い!

「き、今日から!?聞いてねぇよ!!」

「そ、そうじゃっど!」

たまらず二人揃って蔵人佐に食ってかかるも…

「黙らっしゃい!我が流派の心得は【常在戦場】!常に戦場へ繰り出す気概を持たぬで如何する!分かったらとっとと着替えてこんか、この鼻タレ共め!」

「わ、分かりました!」

「すぐ着替えてくるど…」

そう蔵人佐から凄まれズコズコと義久にあてがわれた部屋へ着替えに戻る二人。

そしてしばらく後…

「「戻りました」」ぺこり

先に部屋に用意されていた道着を着てもどった二人(キチンと一礼を忘れずに)

そんな二人に蔵人佐は命ずる。

「よろしい。なれば二人とも…まずは【水汲み】だ。城下にとびきり冷えた水の出る井戸がある、そこへあの桶を担いで汲んで戻ってこい。」スッ

蔵人佐が指さす方には…子供が天秤棒で担ぐには割とデカめの桶が。

「「分かりました。」」スッ

だが二人は文句一つ言わず桶を担ぎ城下へ。

「お、おい。若と源四郎大丈夫かよ?あの桶、水が入りゃ一つだけでも結構な重さだぞ?肩壊しゃしねぇかな??」ヒソヒソ

「お師さん、初日から厳しいなぁ…」ヒソヒソ

「………。」

家臣達が口を揃え源四郎と又七郎を心配するもそれを尻目に黙って二人が出ていった方角を見つめる蔵人佐。

そして家臣達の心配は杞憂となる!

「「戻りましたぁ〜。」」タタタッ

「「「「「はぁ!?」」」」」

「…ふっ。」ニヤリ

二人が戻ってくるなり一人ほくそ笑む蔵人佐。

なんと二人は(全力疾走だと水をこぼすからであろうから)小走りで水が入った桶を担ぎ帰ってくる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「な、なんてこった…」

「普通はもっとかかるぞ!?どうなってんだ!?」

「硝石蔵詰めはそんなに身体鍛えられるのか!?」

家臣達が口を揃え二人の身体能力の高さに驚愕する。

そんな家臣たちを気にも留めず蔵人佐は豪放に笑い言う。

「かっかっか!!やはりわしの目に狂いはなかったの!!おぬしらには朝飯前か、源四郎!!又七郎!!!」

「えぇ蔵人佐さま。我らは普段より谷山にて鍛えて来ましたゆえ!」

「おぅよ!わいらにゃこんくらいホンに朝飯前ぞ!」

「よろしい♪なればおぬしら今日よりわしを【お師さん】と呼ぶを許す!これよりは我が流派【タイ捨流】門下よ、ゆめゆめ怠ることなく励むがよい!!よいか!!」

「「はい!お師さん!!!」」

二人の力強い返事が薩摩の空に響く。

こうして源四郎は天下に名高い『剣聖』丸目蔵人佐の元で剣の修行に励むことになったのであった!






遂に剣の師を得た源四郎!

果たして…

みおの【妖刀・魔剣】となることは出来るのか?

次回を刮目して待て!

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