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信濃の修羅〜現代人の俺、存在しないハズの真田の三男坊として転生す〜  作者: ギュネイ山本
第四章【出会いと別れ…。源四郎、『剣聖』と出会うの段】

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22/22

其之二

――時はあっという間に移ろい天正8年、年の瀬――

――硝石蔵――

「よっ♪」ペタンッ

「はいっ!」ギュ

「よっ♪」ペタン

「はいっ!」ギュ

「よっ♫」ペタンッ

又七郎が餅をつき、妙が返す。

今日はあと数日に迫った年越しに備えての餅つき。

皆で集まってのやいのやいのしながら交代で餅をつく。

「おぅおぅ若ぁ!妙ちゃんと息ぴったりじゃねぇか!!」

「こりゃ若が元服したら夫婦かぁ?がはは!」

旦那衆達が二人の息がぴったりなのを見て茶化すも…

「だそうだど、妙。」ペタンッ

「ん?別に言わせておけば??」ギュ

と茶化されているのに割と仲良く言葉を交わす。

と言うのも、夏場の出会いから向こう…

――出会った翌日――

「おぅ、今日の朝餉ばなんじゃあ?」

「出されたもん食いなさい!」

「なんじゃと!?」

「だぁあああ!やめなって二人とも!」

などとやりつつも…

「んぉ!?こりゃ美味いど!女将さんや…下手したら源四郎ば作ったモンよか美味かっど♫」

「へへっ!見直したか♪」

「(た、確かに俺が作ったモンより美味え!!)」

――また別の日の夕餉時――

「帰ったどぉ〜。飯ばなんじゃあ妙ぇ。」

「妙ちゃん、でしょ?」

「どうでもよか。で、飯は?」

「あんたねぇ!」

「おいおいやめろよ二人とも、毎度毎度。」

「「ふん!」」

とまぁこんな感じであったが、いざ夕餉となると…

「んおおおおお!?同じ唐揚げでも源四郎ば作ったのよか美味かっど!!」

「ふふふふふ…♫」

「(まぢかよ…俺、料理の心得あるんだけどなぁ)」

――またまた別の日――

「妙ぇ、おかわりじゃ♫」

「あんたホントによく食べるねぇ、何杯目?」

「んぁ?忘れた。」

「あんたは…」

「でもな、こいはひとえに妙ば作る飯が美味かが故ぞ?」

「まぁ♫嬉しいこと言うじゃないの。…仕方ないな。」コトッ

「んあ?何じゃこいは?」

「【揚げ出し豆腐】って言うらしいよ?源四郎が教えてくれたの。食べてみなさい♫」

「お!なれば貰うど…んおお!美味い!美味いど妙ぇ!」バクバク

「ふふっ♫誰も取らないからゆっくり食べなさいよ。」

とまぁこんな感じで…

――話は戻って現在――

「(胃袋掴まれてんじゃねぇか又七郎!…まぁ、仲良きことはいいことかな♫)」グリグリグリ

一人そんな事を思いながら【納豆餅】用の納豆を大きめの鉢の中でかき混ぜる源四郎。

「源四郎ちゃん、【大根おろし】はこんなモンでいいかしら?」

「えぇ女将さん方♫」

そんな源四郎の傍らで大根をおろす女将さん方。

この大根おろし(鬼おろし)も勿論源四郎考案。

水気が出ずに大根の食感も味わえるともっぱら好評であった。

「おろした大根はまだ使いませぬ故他の器にお願いしまする。それから油揚げと大根の葉を刻んで頂けますかな?」

「「はいはい♫」」

源四郎指示のもと女将さん達がいそいそと支度をする。

すると…

「げんしろぉ!1回目つき終わったど!」

「おぅ!したらいくらかこの鉢に入れてくれ。残りは…妙ちゃん、お供え用に丸めてくれる?」

「分かった、やっとくよ!」

「んじゃ俺は…ここに砂糖少しと垂れ味噌加えて……出来た!皆様方!【納豆餅】、出来ましたぞ♫」

「「「「「待ってました♫」」」」」

手早く鉢の中で【餅】と【納豆】を混ぜ【納豆餅】を作る源四郎。

それを待っていた旦那衆が群がる。

「皆様方、まだまだあります故…又七郎ぉ?」

「んぁ?」

「これ、妙ちゃんとお前の分。」スッ

小鉢に入れた【納豆餅】を二つ、又七郎に渡す源四郎。

「お、すまんの。なれば…」ザッ

そう言って小鉢を受け取り妙のもとへ向かう又七郎。

「妙、餅ば丸めるのはおいが変わっとくとに…おはんも食うがよか」スッ

「あら?気が利くじゃない♫」

「普段飯の支度から片付けまでやって貰ってるからの。こういう時には労いたいんど。それに…」

「それに?」

「こうして身体ば壊さずに年の瀬ば迎えられるとは妙の作る飯のおかげじゃ。ありがとう。」スッ

そう言い頭を下げる又七郎。

「ふふっ。そんな大層なことはしてないよ?でも…こちらこそ毎度毎度残さず食べてくれてありがとう。」

そんな又七郎に『少し顔を赤らめて』答える妙。

「(……………ほうほうほうほうほう♪)」ニヤニヤ

そんな二人の様子を遠巻きに見る源四郎。

「(初々しいのぉ!実に初々しいのぉ!俺とみおにもあんな頃…)」

ゴチンッ!

「でっ!?」

いきなり拳骨を喰らう源四郎。

「いててて…」

「全く…変ににやけよって!」

「く、蔵長ぁ…」

うしろを振り返るとそこには権左の姿が。

「源四郎、おはんが若と妙ば茶化すことは許しもうさん。」

「?それは何故…」

「おはんはもう女房ばいるからじゃ。」

「あ。」

「あん二人はまだまだこれから。故に…おはんは先に女房がいるモンとして見守る事ば徹すべきじゃっど。」

「…そういうもんですか?」

「そういうもんじゃ…かかぁに先立たれたモンからの助言じゃっど。」

「…はっ。」

詳しくは知らないものの…権左はくっつき合い(恋愛結婚)の末に一緒になった奥さんを早くに亡くして以来後妻も取らずにいる。

それを聞き及んでいる源四郎は素直に権左の助言に静かに、一言応える。

「まぁ分かったのならよか。おいは杣師んとこば挨拶に行ってくるとじゃ。留守ば頼むど」ザッ

「はい、いってらっしゃいませ。」

そう言うと足早に蔵を後にする権左。

「年の瀬だってのに忙しいなぁ…それでもちゃんと見るもん見てるし。おかげで俺も【薬研】触らせてもらえるし【調合】も教えてもらえたし…実りある年になったな。」

そうして一人日向、薩摩に着いてからを振り返る源四郎。

今や親友たる又七郎との出会い(と殴り合い)。

そこに介入した【あんちゃん】弥七郎。

家久、そして島津本家での義久、義弘、歳久との出会い。

夏の暑気払いの宴、平左衛門との出会い。

そして…【初めて人を斬ったあの日】。

「ホントあっという間だったなぁ…」

「何をぶつくさ言うとるんじゃ源四郎?ほれ!皆【納豆餅】のおかわりばよこせと騒いどるど??」

「…みんな腹っぺらし過ぎだろ。つーか又七郎、二回目は?」

「今つき始めじゃ。」

「ならオメェ今回はちょいと【鍋】の手伝いしてくれ。」 

「おぅ、よかよか。ん?今回は出汁ばアゴだけなんじゃな。」

「まぁな。今回の鍋は鶏ガラ入れてこってりさすよりアゴとかのさっぱりした出汁のが美味えんだよ。煮立ったら大根と芋(里芋)、ごぼう、それに鶏入れてくれ。俺はまた納豆練らなきゃ…」

「おう、まかせぃ!」

そしてしばし後…

「お〜う!二回目つけたどぉ!」ザッ

旦那衆がつき上がった餅を持ってくる。

「お!出来ましたか♫又七郎ぉ、根菜に火ぃとおったか?」

「おぅ!ばっちりじゃぞ!灰汁もとっといたど!!」

「よぉし!じゃあここに垂れ味噌入れて塩で味調えて………うんうん♫で、大根の葉とニラに油揚げ!」バッ

又七郎に任せておいた鍋の具合を確認し手早く味付け、そして葉物野菜を入れる源四郎(無論味見も忘れない)。

そして…

「葉物にも火が通ったな…んじゃ妙ちゃん。」

「はいはい♫お餅入れて…最後に大根おろし!」ドバッ

そうして餅を丸めていた妙も加わり、餅と大根おろしを入れて完成したるは…

「これが【みぞれ鍋】!ささ、皆様方!どうぞどうぞ♫」

「「「「「おー!鍋ん中ば【雪】んごたる大根ばういとっど!!」」」」」

源四郎が作り出したる【みぞれ鍋】に興味津々。

つぎつぎよそってもらい食べ始める。

「おお!こんおろしば水っぽくなくしゃきしゃきだど!」

「それが餅ば絡んで…ホンに美味かじゃあ!」

「おぉ!ほんに美味かど妙!ほれ。」スッ

「ありがとう()()()♪」

皆【みぞれ鍋】に舌鼓を打ち、又七郎に妙もそこに加わる。

こうして源四郎が薩摩に来て1年目の年の瀬は過ぎていき…

――明けて天正9年、新春――

――古寺の庵――

「………来おったか。」ドサッ

弥七郎が()()()()()()()を置くや否や…

バンッ!

「「ッ!!」」

庵の障子を明け放ち源四郎と又七郎が手にした木刀で襲い来る!!!

「入ってくる度『しぃねぇえええ!』だの『そっ首貰ったぁ!』だの言わなくなっただけマシではあるが…まだまだ【殺気に逸っておる】、な…二人とも。」シュッ!シュッ!

パコッ!ポコッ!

「でっ!?」

「なっ!?」

弥七郎が持っていた羽箒で打ち据えられる二人。

それも避けられないような必中のタイミングで。

「ちっくしょおおおおおおお!」

「なんでいっつもバレるんじゃぁあああああ!」

悔しがる二人。

そんな二人を尻目に()()()()()()()()()()()()()()

「だから言っとるじゃろう?【殺気に逸っておる】と。俺が普段【適度な脱力】を心掛けておるのも敵に【殺気】を気取られないようにする為よ?」ササッ

言いながらも掃除の手を止めない弥七郎。

「あんちゃん、最近俺らに()()()()()()()()多くなったよな?」

「…おぬしらの出来が悪いからよ。」

「そもそもあんちゃん?」

「なんじゃ又七郎?」パタパタ

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

又七郎が()()()()な質問を投げかける。

確かに今は年明け早々、普通掃除なんてモンは年の瀬に済ませるモノである。

「…。」サッサッサ

「そうだぜあんちゃん?そんなモン、年明ける前にやっとくモンだぜ?なんでもソツなくこなすくせに。らしくねぇなぁ。」

答えない弥七郎。

そこに源四郎も続く。

「…やはり、お主らに黙っておく訳にはいかぬか。」スッ

「ん?」

「お?」

掃除の手を止め二人の方を向く弥七郎。

そしてその口から告げられる予想だにしない言葉。

「もうしばらくしたら俺は…筑前に帰る。」

「「……………はぁ!?」」

やはり、と言うべき反応をする二人。

「なんでだよ!?どっかに攻め込むのに手が足りなくて主繕正殿に呼ばれてんの!?」

「違う。そもそも父上ならば俺などいなくともそうそう負けはせぬ。」

「じゃあ主家たる大友に呼ばれたとか!?」

「それも違う。ようは同じ大友家家臣、立花道雪殿が俺に惚れ込んでな…婿入りだ。」

源四郎、又七郎からの質問に「婿入りだ」と淡々と返す弥七郎。

「婿ったって…あんちゃんには()()()()()()()!高橋の家ば潰れてしまうど!?」

又七郎が武家の子として()()()()()()()を言う。

この戦国の世に於いて【お家断絶】は何に代えても避けねばならぬ事態。

それを主膳正は自らの【高橋家】が男児なく潰れるのを承知で嫡男たる弥七郎を立花へ婿へ出すと言うのである。

「はは、そうよな。だが…それは立花も同じこと。立花殿には男児がない、そして主家たる大友からすれば【立花、高橋両家共倒れの断絶】が一番避けねばならぬこと。それは今…()()()()()()()()()()()()()()()()()()たるお主ならば分かるであろう、又七郎?」

「うっ…」

弥七郎の一言に言葉を詰まらせうつむく又七郎。

実際そこまで表立った合戦等は無くも、島津は着実に九州をその手に収めるべく行動しているのは紛れも無い事実であった。

「そう詰めてやんなよ、あんちゃん?又七郎にそれを言っても仕方ねえだろ。まだ家督継いでないし、継いだところで分家だぞ??」

「あぁん!?日向の国のヌシばしとるおいの実家ば馬鹿にしよるか!!!」

「んなつもりで言ったんじゃねぇよ、だいたい先にトゲのある言い方したのはあんちゃんだろ?」

「!………すまぬな又七郎。おぬしに当たるつもりは無かったのだが………」

源四郎がうつむく又七郎を見かねて弥七郎を諭す。

弥七郎もまた無意識にトゲのある言い方をしてしまった事に気付き又七郎に謝るも…

「だぁあああああ!変に気を使いよるんじゃなかっど!あんちゃんも!源四郎も!!」

下手に気を使われ癪に触ったのか又七郎が吠える。

「そう吠えんなって又七郎ぉ…」

源四郎が宥めるも…

「やかましかっ!今夜はもう帰っど!!」ザッ

「なっ!?おい…」ザッ

そう言ってそそくさと草鞋を支度し帰路へ着こうとする又七郎、源四郎もそれを追う。

「源四郎…」

そこへ弥七郎が声をかける。

「何、あんちゃん…?」

「俺がここに留まれるのは精々()()()()()()()?」

「…わぁった。又七郎にも伝える。」ザッ

そう言って庵を後にし又七郎を追う源四郎。

「急げよ二人とも。ここを逃せば…次に会うのは【戦場】、ぞ。」

――翌日――

――硝石蔵詰所――

「なぁ又七郎ぉ?」

「………。」

「又七郎?」

「………。」

「ま〜たし〜ちろ〜ぉ。」

「だぁあああああ!あんじゃ、鬱陶しかっ!!」

昼餉を取っての休憩中、物思いにふける又七郎に源四郎が声をかける。

「なんだよシケた面しくさりやがって。オメェらしくもねぇぞ??」

「シケた面にもなるど!何があと半月じゃ!その間に【せめて一太刀入れてみせぃ】ってコトじゃろが!それをおはんは…」

「かと言って俺の父上やじいさまみたいな知略、謀略がオメェに思いつくんかよ?」

「会った事もなかおはんのおやっどんにじさまば引き合いに出されても分からんど!」

「ゔっ。」

又七郎の珍しい正論にたじろぐ源四郎。

「………まぁけど、残された時間は少ねぇんだ。今さらジタバタしても仕方ねえ。俺らの練度を少しでも上げる。それしかねぇだろ。さて、ほら昼からの仕事はまだあんだから行くぞ?」スッ

「そうじゃの…」スッ

バツの悪そうな顔をした源四郎に促され午後の仕事に向かう又七郎。

しかしその胸中では…

「(そうは言うがの源四郎…あの化け物じみたあんちゃんば一太刀入れるとにゃ…【捨てがまる】覚悟なくば無理じゃっど!)」

そしてあっと言う間に時は過ぎ…

――半月後、弥七郎出立前夜――

――古寺の庵――

「………来おったか。」 

「…。」ザッ

「…。」ザッ

縁側に座り源四郎、又七郎が来るのを信じ待っていた弥七郎。

そこへ鬼気迫る表情で現れる二人。

そして…

「…。」スッ

「…。」スッ

無言のうちに木刀を手に構えをとる。

「(最早言葉いらぬとでも言うつもりか…ならば。)」スッ

それに呼応し弥七郎もそばに置いておいた木刀を手に構える。

「「…!」」ダッ

「…。」ダッ

そして斬りかかる二人。

「ッ!」ブンッ

「遅い。」ヒュッ

「ぬんッ!」ブンッ

「どこを見ている?」ヒュッ

そう言いながらいつものようにヒョイヒョイ躱す弥七郎。

「(やはり日ごと夜ごと()()()()。が!)まだまだ軽いわ!」ブン!ブン!

「がっ!?」バチンッ!

「ちぃ!?」バチンッ!

弥七郎の返す一撃を何とか凌ぐ二人。

「………これではいつも通りではないか?俺を失望させてくれるな??」チョイチョイ

距離の空いた二人を挑発するように手招きする弥七郎。

普段なら『『舐めんなボケェ!』』と猪突猛進、突っ込んでいく二人であるが…今日は違った!

「…。」スッスッスッス

恐らくあらかじめ源四郎が教え込んだのだろうか………

又七郎がなんと手信号(ハンドサイン)を使い出す!

対してそれを見た源四郎は…

「はぁ!?何する気だよ又七郎ぉ!!!!」

「いいから来んかぁ!!」ダッ

言うなり弥七郎に再び斬りかかる又七郎!

「………くっそがぁあああああ!」ダッ

そしてそれに()()()()()をしながら追従する源四郎!!

「何を伝えあったかは知らぬが前から突っ込むだけでは…」

シュッ!

「ぬっ…」カンッ!

言いかけたところで後方の源四郎から【礫】が飛ぶもそれをはたき落とす弥七郎。

「かかったな!」スッ!

そこを猛然と、蜂のごとく突き貫こうとする又七郎。

が!

「甘いわ。」ブンッ

ゴスッッッッッッ!

「ゴフッ!!」

打ち下ろした木刀をそのまま返し…又七郎の右胴へ横薙ぎが炸裂する!!

しかし…今日の又七郎は普段と違っていた。

普段ならばコレでうずくまるなり悶絶するなりだが…

「まだ………じゃあ!」ガッ

「何っ!?」

なんと又七郎!弥七郎の腕を抱え込んだのである!!

常日頃「敵の首ば取れずに戻るほど虚しか事ばなかっ!!こん身命ばかけて敵ば討たんでどうすっとじゃ!!!敵ば討てんとなったら潔く死ぬるだけぞ!!!」などと言っている又七郎にすれば考えられぬことである!!

そう、ましてこれまでは………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!

「いけぇ………行けぇ!!!げんしろおおおおお!」ガシッ

「くっ!?コイツめ!!離せぇ又七郎ぉおお!」ゴスッ!

恐らく肋骨がいっているだろう身体をおして弥七郎の腕を力一杯抱え込み又七郎が吠える!

対する弥七郎も又七郎を振りほどこうと膝蹴りを叩き込むもなおも又七郎は離れない!!

そして!!!!

「だぁあああ!」ダッ!

源四郎が又七郎の脇から突っ込み…

ピタッ。

弥七郎の首筋に木刀を這わす。

「………。」

「………。」

「………。」

三人とも押し黙り、辺りを静寂が包む。

やがて弥七郎がポツリと…本当にポツリと言う。

「………見事。」

「っしゃあああああああ!やったったどおおおおおお!…いてて!!」

その弥七郎の言を聞き喜びつつ痛がる又七郎。

対して…

「………………………………。」ワナワナ

肩を震わせ怒りを顕にする源四郎。

「…源四郎?」

「おぉ!源四郎!やった………」

「ッ!」バキッ!!!

「がっ!?」ドシャッ!

「なっ!?」

なんと源四郎、喜びの最中の又七郎を殴り飛ばす!!

「なっ…何のつもりじゃあげんしろおおおおおお!」ガバッ

これには当然又七郎もキレて源四郎の胸ぐらを掴むも…

「こっちの台詞だボケがぁああああ!」ガバッ

源四郎も一歩も引かず掴み返す!!

「あぁっ!?勝てたんに何で怒りよるんじゃおはんは!!」

「分かんねぇかテメェは!何が【先行する、後方支援求む】だ!!テメェのはただ無謀に突っ込んでっただけじゃねぇか!真剣だったら胴から真っ二つなの分かってねえのかよ!!!」

「なんば言うちょっとか!ちゃんとしっかり踏み込んで鍔元で受けたとじゃろうが!刀ば一番斬れるのは切っ先って分からんか!!」

「俺の投げた【礫】がしっかり効いたからだろうが!明後日の方向飛んでたらどうしてたんだよ!」

「おはんに限ってそれはなかろが!」

「所詮人のやることだろうが!!常々【最悪の事態も想定しろ】って言ってるよな!?だいたい【犠牲を是とする戦い方】なんざしねぇんだよ真田は!!」

「ここは島津ば領地、薩摩じゃ阿呆が!おはんは【島津ば頭数】となんべん言えば分かるとじゃ!なれば戦の仕方も島津のやり方ば従わんか!!!」

とまぁこんな感じで言い合いを始め出す二人。

「おいおいおぬしら…まず落ち着かぬか?」

「「あんちゃんは黙ってろ!!!」」

宥めようと声をかける弥七郎を一喝しなおもあーじゃねこーじゃねと続ける二人。

しかし…

「………黙ってろ?おぬしら、誰に口をきいておる??」ワナワナ

肩を震わせ青筋立てる弥七郎。

「「あ。」」

ここに来て二人はハタと自分たちの失言に気づくも時既に遅し…

ゴチーーーン!

振り注ぐ拳骨。

しばらく後…

「っってて。」

「あたた…」

「全く…」

二人を正座させ正対する弥七郎。

二人は頭を擦りつつ今度は素直に座っている。

「まず源四郎。」

「…何?」

「又七郎のやったことを責めてやるな。()()もまた一つの答えよ。」

「…うん。」

シュンとして答える源四郎。

それを尻目に又七郎が続く。

「ほれみろ!あんちゃんは分かってくれ…」

「かと言って!又七郎、おぬしのやったことは最良の手ではない。俺は【命をかけども死中に活を見いだし生きて戻れ】、そう言うたな?アレで生きてもどれようか?」

「ゔ。」

又七郎もバツの悪そうな顔をする。

「とまぁ…説教はここまで!二人には俺に一太刀入れた()()を取らせるかの♫」ニヤリ

ニヤリと笑い二人からいささか距離を取る弥七郎。

そして…

「二人とも…構えよ」ギンッ

「「!?」」

一瞬にしてその場の空気が変わる!

「まぢかよ…そりゃ()()()()()()()()()()とは思ってたが…又七郎ぉ…」ゴクリッ

「お、おぅ…こいが……こいがあんちゃんの()()ッ!」ゴクリッ

気迫だけで場を制圧出来る…そう思わせる程の弥七郎から放たれる【圧】。

それに負けじと二人は生唾を飲みつつも再び構える。

そう、二人が言う通り…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「全く…()()とは本来俺がお前たちから貰って然るべきなのだがな。まぁよい…受け取れッ!」シュッ!

チッ!チッ!

「へぁ…」ドシャッ

「ほぁ…」ドシャッ

言うが早いか、撃ち込むが疾いか…

弥七郎が二人の()()()()()

それも正確無比に。

そうして糸が切れた人形のように、間抜けな声を上げながら崩れ昏倒する二人。

「む?………やはり源四郎の言うたことは本当であったか。【人を昏倒させたくばちょいと顎先を刈るだけでよい】か…全くあっけないものだな。」スッ

言いながら二人に近寄る弥七郎。

「では………さらばじゃ【不出来な弟分】共よ。」ザッ

――壱刻後――

――古寺の庵前――

「またしちろぉ〜!げんしろぉ〜!!」

「おるんじゃったら返事せぇええ!」

山門から聞き覚えのある声…

妙と権左の声が響く。

遅くなっても帰らぬ二人を心配し探しに来たのである。

「んっ…んんん。」

「あっ…ああぁ。」

そうしてようやく目を覚ます源四郎と又七郎。

「あっ!蔵長っ!」タッ

「おぉ!二人とも!!心配させよっとに!!」タッ

二人の姿を見つけ駆け寄る妙と権左。

そうして寒さにあてられたであろう二人の身体を擦る。

「ほぇ…蔵長ぁ…?」

「た、妙ぇ……?」

目覚めたてのまどろみの中、二人が身体を起こし…そして気づく!

「「って!あんちゃんは!?」」キョロキョロ

二人が辺りを見回すもそこに弥七郎の姿はある筈もなく…

そこにはただの【静寂】が広がるのみであった。

「わしらが来たときにはおはんらが倒れちょるだけだったど。…そうか、高橋の若ば筑前に帰ったか。」

「うん…そうみたいね。」

二人の反応からここで何があったか、すぐに察する権左と妙。

「まぁ無事でなによりぞ。…さぁ、風邪ばひくとじゃ。帰っど。」スッ

「ほら、又七郎?」スッ

「はい…」スタッ

「おぅ…」スタッ

権左と妙から差し出された手を握り立ち上がる二人…

そしてポツリと源四郎が又七郎に声をかける。

「又七郎ぉ…」

「…なんじゃあ。」

「【武の高み】ってのは高く…そして遥か遠くなんだなぁ。」

「………そうじゃのぉ。」

こうして源四郎と又七郎に【遥か武の高みの一撃】と言う餞別を与え…

弥七郎は筑前へと帰って行ったのであった。





































弥七郎の【愛すべき弟分たちへの餞別】、如何だったでしょうか?

さて!次回は遂に『剣聖』の登場!!

この出会いが弥七郎との別れを経た二人にどう刺さるのか!?

次回を刮目して待て!!

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