70.ノアです。
「ええと……ノア、です」
エルに向かって子猫もどきをよしよししながら紹介してみた。
「ノア、私はリーディア、ディアって呼んでね。この人がエル」
「わかったー! ディアとエルだねー!」
「…………ちょっと待て、喋っている……?」
エルが眉間に皺をぎゅんっと深く入れてノアをガン見していた。あれ? ノアの声が聞こえた?
「エルにも僕の言ってる事聞こえないと不便でしょー?」
ふふんと子猫もどきがどや顔をする。……可愛い……。
「ど、どうしよう……ノアが可愛すぎる……抱っこしてもいい? 体痛くない?」
「もう治してくれたから痛くないよー。抱っこしていいよー」
あああ……抱っこさせていただきます! ヤバい、ちっさい、可愛い……すりすりしてるとノアが擽ったそうにもぞもぞしている。
「ディア…………コレは……何だ……?」
エルがノアを指さしながら恐る恐る、と言わんばかりに聞いてくる。
「僕は女神様の眷属で闇の眷属、ノアでーす! ディアは女神様の加護持ちなので僕はディアの傍にいる事にしまーす!」
「……………………眷属…………? 本当に、……存在する……のか……?」
私が答える前にノアが自分で答えた。いや、何と問われても私は知らないので答えようもなかったけど。
私はノアを抱っこしたまま恐る恐るエルに視線を向ける。するとエルはまたもがくりと床に手をついて項垂れていた。
…………すまぬ。だが私の所為ではないと思う。
「ディア、僕傍にいてもいいー?」
「いいよー!!! いて! 可愛い! ノア!」
「うふふーん、僕可愛い? 黒いよー?」
「黒くて可愛いよぉおおおー!」
得意そうな顔がもう! 可愛い!
エルは固まったままで項垂れたままなので動き出すまで放置しておこう。
「ノア、どうしてあんな大怪我を?」
「僕黒いからー魔獣と間違われるんだよねー今までの聖女さん達にも僕は嫌われていたしー僕を可愛いって言ってくれたのディアが初めてー」
「ええー! こんなに可愛いのに!!! 黒のつやつやの毛並みも青いお目目も可愛いよー!」
「そ、そう……? 本当に?」
「本当に! ああ! 体を綺麗に洗ってあげるね。ブラッシングもしないとね。もっと綺麗でつやっつやになるよー」
すりすりしてるとノアが嬉しそうにもじもじしてる。マジで可愛い。言葉が通じる小動物! やばくない!? いや、私がやばい状態かも。すっごい興奮してるわ!
「よし、エル! ノアに防御の魔法陣をつけたいので後で協力して!」
エルが私に付けてくれたように物理防御と魔法防御を付けてあげたい! そうしたら安全だよね? 首にリボンを巻いて魔石を付けてあげればいいかな? 目が青いから青いリボン? でも黒猫には赤いリボンも可愛いけどなー。
「…………ああ、うん」
エルが動き出して頷いていたが思考を放棄してるっぽい。遠い目をしていて、疲れ切った顔をしていた。
「なぁ? ディア……俺はどうすべきなんだろうな?」
さあ? 私にだって分からないよ。そんなの。
「嫌な予感がするのだが?」
「え? 何?」
「眷属ってあと火、水、風、土、光の眷属がいるよな? まさか全部集まるなんてことにはならないか?」
「ならないよー。名前をつけてくれた最初の一体だけがその聖女様につく事になってるからー。それも必ずじゃないしー。僕は今まで誰にも選ばれた事がないから一番に聖女様に会えるよう女神様が優先してくれたんだー……ええと、ディアは別の子がよかったかなー……?」
しょぼんとしてノアの声が段々小さくなっていく。
「そんな事ないよ! ノア可愛いもん!」
「ディアは黒を忌避していないから気にしなくて大丈夫だ。持っているバッグも黒だろう?」
しょぼんとしたノアが可哀相だったのか、エルまで慰めている。
「あ、本当だー……ディアは本当に黒色が嫌じゃないのー?」
「嫌じゃないです! 黒はカッコいい色なんです!」
言い切るとノアとエルがぷはっと笑った。ヤダ。二人で笑うの可愛い!
「とりあえず眷属が集まるような事態にはならないようで少しは安心したが……しかし、はぁ……」
エルがノアと私を見て頭を抱えている。
「えっと……そんなに大問題なの?」
「眷属の存在は神話でしか語られていないが?」
「え? でも歴代の聖女さんの傍にも眷属って誰かはいたんでしょ?」
ノアに向かって聞いてみるとノアはんー……と考え込む。
「そういえば大分前の事なのかなー? 聖女様がいっぱいいた時だから」
「いっぱい……? 聖女がいっぱいいた時期など聞いたこともないが?」
「あー……この国今はなんていう国なのー?」
「バラーシュだ」
「あー、そっかー僕が言ってたのジトニークの時代の事だったー」
エルがまたもがくりと膝をついた。私は歴史を知らないのでいつの事を言っているのかが分からない。
「古代だ……バラーシュが建国してからも五〇〇年が経っている。それ以前のさらに前の時代の話だ」
「うええええ……」
さすがに私も五〇〇年よりもさらに前の事とは思わなかった。ドン引きである。
「ノアって年いくつなの?」
「いや、そういう問題じゃ……」
「僕ー? 僕年はとらないからー。だって眷属だもの。女神様と一緒ー」
おおふ……神と同等だったらしい。マジかー……。




