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俺を好きな幼馴染(美少女)が男のふりして男子校に押しかけてくる。そしてルームメイトとして居座る  作者: 遠都衣(とおとい)
第2章 ルームメイトがなぜか積極的に迫ってきます

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第7話 ちょっとどころではなくドキドキするんですけど!?




 背中に当たっている柔らかな感触が――胸なのか否か。


「どう……? ドキドキする?」

「いや…………」


 俺にとっては今、何よりもそれが大事な議題だった。


「んっ…………、しゅう…………」


 ……いや、おい。

 んっ……、ってなんだ。

 んっ……、って。


 突然耳元で喘ぎ声みたいな声を出すな。

 こっちも妙に意識するだろうが。

 あと背中で謎にもぞもぞするな。

 まじで気持ち良くなりそうでどうにかなりそうだろ。

 いやもう気持ちいいんですけど既に。


「…………やっぱ、これくらいじゃ脩は、ドキドキしないか」


 耳元でそう囁くと、衣擦れの音を立てながら瑠偉がするりと離れていく。


 ……いやあ。

 ……なんなんですかね、これ。

 さっきまで背中にあった熱が失われると急に寂しくなったように感じるのは。

 人肌が安心するって、こういうことなのかもしれない。

 きゅうっと胸を締め付ける切なさを、「はぁ……」と瑠偉に聞こえないように俺がやりすごしていると、後ろでまた瑠偉が移動する気配がする。


「じゃあさ、これはどう?」


 そう言うと瑠偉は、再びひょこっと俺の顔を覗き込んできて、そのまま瑠偉のベッドに腰掛けたままの俺の前に立つ。

 それから、俺の肩に両手をかけたかと思うと、右膝をベッドに乗せ、俺の太ももを跨《また》ぐようにして反対側の左膝もベッドに――。


「って、ちょお待ておいおい」

「え?」


 思わず俺が止めると、瑠偉がキョトンとした顔で聞き返してきた。


 おいおいおいおいおい……!

 え? じゃないよ、え? じゃ……!


 すでに俺の太ももを挟んで瑠偉が膝立ちで跨《また》がっているため、瑠偉の顔は俺の視界の上にある。


 膝立ちになっている瑠偉が少し膝の力を抜くだけで、その柔らかそうなお尻が俺の太ももの上にぽすんと降りてくる体勢だ。


 お……、降りてきてほしいような……。

 降りて来られると、いろいろと終わりそうな……。


 だって俺さ……、太ももで瑠偉の柔らかいお尻とか感じちゃったら。

 俺……、今度こそどうにかなっちゃいそうな気がする……!


 ……あっ。

 ダメだ。

 ちょっと想像しただけで心臓が破裂しそうなほどにドキドキしてきた。

 いくらなんでも、この線は超えてはいけない。


「いや、ダメだろ。これはダメだ」

「えー、だめえ?」


 俺がありったけの理性を総動員して『ダメだ』と言うと、瑠偉がどこか不満げに言い返してくるが、ダメなものはダメです。


「ダメじゃなくない? もうちょっとくらい行こうよ。うん、行ける。ね?」


 そう言って、俺の肩に両手をかけたまま、しれっと俺の太ももにお尻を落としてこようとする瑠偉。


 うぉっ……!

 ちょ……っ!

 ふに、って触った!

 ふに、って!

 一瞬触った!

 気がする!

 一瞬……!


 すんでのところで、俺はその柔らかそうなお尻が俺にしっかりと着地しようとした瞬間、両手でぐいっと瑠偉を押し返した。


「だ……、ダメなものはダメです……! 言ったろ。最初に」


 どのくらいまで行くと、俺がドキドキするかを線引きしようと。

 もともとはそれを確かめるために始まったはずだ。


「…………じゃあ脩は、今のでドキドキした、ってこと?」

「……………………、ちょっとだけな」


 本当は、ちょっとどころの騒ぎじゃないが。


「……………………。ふぅ〜〜〜〜〜〜ん………………」


 単純に瑠偉にドキドキさせられたこと、そして瑠偉を押し返したことで嫌な気持ちにさせなかったかということ。

 その二つで動揺していた俺は、その時の瑠偉が嫌な気持ちになっていなさそうだということに気を取られて、ちょっと嬉しそうな様子を見せていたことには気付かなかった。


「…………おさらいすると、手を繋ぐのと、背中から抱きつくのは大丈夫、ってことだよね?」

「あ? ああ……」


 そう言いながら瑠偉は、後ろから俺に抱きつきながら、左手の指と指を絡めとるように手を繋ぐ。


 ……これ、ひとつずつでもアレだけど、同時にやられると急激にカップル感増すな……。

 あと、絡めとった手をエロく触るのやめろ。

 どこで覚えてきたんだそんなの。


「じゃあこれからは、手を繋ぐのと背中から抱きつくのはセーフってことだね」

「……ん?」

「だって、脩はその二つならドキッとしないんでしょ。男同士だし」


 ね? って可愛く小首を傾げて、聞いてくるけどお前……。

 いや、確かに、その二つに関してはドキッとしないと強がった俺ですけど!


「幼馴染が一緒だとやっぱり心強いね。寮部屋が脩と同じで、僕、本当によかった」


 瑠偉に、後ろから抱きつかれながらそう言われてしまうと、それ以上何も言えなくなってしまう。


 いや……。

 俺、全然ドキッとしてるけど……なんなら今も……。

 普通に、人並みにドキドキしてるしきゅんきゅんしてますけど……!


 しかし、瑠偉を怖がらせないために、そんな気持ちは全て封印しなければならない。全て……!


 ………………………………。

 できるかな………………?


 とりあえず、今日はなんとか己を律することでことなきを得た(……と思う)が、こんなのがしょっちゅう続いたら俺、いつか骨抜きにされちゃうんじゃないだろうか……。瑠偉《コイツ》に……。




 結局それ以降、今回のことで『手を繋ぐのと背中から抱きつくのはドキッとしないからOK』という免罪符を得た瑠偉は、水を得た魚のように、二人きりになった場所ではやたらと手を繋いだり背中から抱きついてきたりするようになる。


 それが、妙に可愛いしエロいしで、


『ああ、俺……。あの時なんで手を繋ぐのも背中から抱きつかれるのもドキッとします! って正直に言わなかったんだ……!?』


 と後悔することになるのだが。


 今の俺には、まだ知る由もない話である。

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