第41話 プラネタリウムって、いちゃいちゃするためにあるんですか?
「ありがと。脩のおかげで、いい参考書変えた」
「ん。よかったな」
そう言って無事、書店での目的も果たした俺たちは、今日のメインの目的地であるプラネタリウムを目指して歩いていた。
◇
「16時からの回、お二人様ですね。どうぞ、楽しんでいってらっしゃいませ」
あらかじめスマホで買っておいたチケットを提示すると、受付の女性から生ぬるい眼差しを受けながら中へと案内される。
……うん。まあ。
可愛い高校生カップルだなあとか思われてるんだろうなあ……。
実際、その通りっちゃあ、その通りではあるんだけど……。
(こんな格好をしてたら、誰もこいつが男子高の生徒だとは思わないよな……)
そんな複雑な思いを抱きながら席を探す瑠偉について中に入っていくと。
「あ、あった」
ここだ、と言って瑠偉が示した席。
それは――。
「めっちゃカップルシートじゃねーか!」
「え?」
瑠偉に案内された席を見て、思わずツッコんでしまった俺の気持ちをわかって欲しい。
だってさ、どう見たってカップルシートだったんだよ?
シートっていうかベッドだよな?
ほぼ円形の、人が寝転がれそうな大きなソファにクッションが二つ。
『さあ、ゆっくり寝そべってください』と言わんばかりの佇まい。
「だって、プレミアムシートって書いてあったから……」
お礼だし、せっかくだから高い方がいいかと思ったけどダメだった?
そう不安げに俺の機嫌を窺って来た瑠偉に、しまったと反省する。
こいつはこいつなりに一生懸命俺のことを考えて選んでくれたのに、つい責めるような口調になってしまった。
でも……、でもさ……?
これから、こんな美少女と二人でベッド……じゃない、ソファに添い寝してプラネタリウムを見ることがわかった俺の気持ちもわかってください。
動揺するよね!
普通に!
「ごめん……、嫌だった……?」
不安そうにそう俺に尋ねてくる瑠偉に『嫌ってわけじゃないんだけど、もう俺の心臓が爆発しそうなんだよな……!』と思いながらフォローを入れる。
「……いや、嫌じゃない……嫌じゃなくて、単にびっくりしただけだから」
「……ほんと?」
「うん」
俺がそう答えると、瑠偉が途端にほっとした様子を見せる。
それから瑠偉がカップルシート……じゃない、プレミアムシートに腰掛けると、俺にも無言で『座らないの?』とにこにこキラキラした目で訴えてくる。
くっ……!
可愛い……!!
ときめきで爆発しそうな心を落ち着かせながらシートに腰掛けると、瑠偉が「脩、荷物大丈夫?」と気遣ってくれる。優しい。可愛い。
「ねえ、脩」
「なんだ」
「……手、繋いでいい?」
そう言いながら瑠偉が、俺と隣り合っている手に自分の手をくっつけてくる。
そんな瑠偉に俺は一瞬逡巡してから、
「……もうほとんど繋いでるようなもんじゃねーか……」
と答えた。
「それって、いいの? ダメなの?」
「……ダメとは言ってない」
「…………」
そうして、俺のその言葉を了承と取った瑠偉がそろりと俺の指に自分の手を絡めてくる。
……指。相変わらず細くて柔らかくてすべすべしてるな。
さっきまでも、普通に繋いでいた指だけど。
改めて触れるとまたドキドキする。
そんなことを思っていると、隣で手を繋いだままの瑠偉が、こちらにころりと向き直る。
「……ねえ、脩」
「何」
「キスしていい?」
「……それはダメ」
「えー」
「いや、えーじゃないだろ」
さすがにそれはダメだろ。
どう考えてもいいとは言えない。
「……でも、男の子同士だし」
「今は女の格好してるだろ」
こいつの基準、どうなってるんですかね?
男同士ならキスしていいってその基準、何なの!?
あれ? 俺、間違ってる?
男同士でも、実際相手が可愛い女の子だったらしてもいい?
てか、相手がしたくて俺も別に嫌じゃなかったらいいのか……?
そんなことを思っていると、瑠偉がずいっと俺のほうに寄って来て。
「じゃあいい。力技でするね」
「おいっ……!? お前じゃあさっきなんで許可取るようなこと聞いたんだよ……!」
おそらく側から見たらいちゃついているとしか見えない押し問答を続けていたら、開始のブザーと共にプラネタリウムの演目が始まりを告げた。
「ほら……、始まるぞ……」
「〜〜〜〜むう」
俺がなんとか守りきったところでそう告げると、瑠偉が不満げな声を上げながらそう言って引いた。
しかし――。
「――隙あり」
と言われて。
ちゅっ。と音を立てて。
驚いた俺がキスをされた頬を押さえながら隣で寝そべる瑠偉を見ると、悪戯っぽい顔でこちらを見て微笑んでいた。
…………やられた。
一瞬引いたふりを見せた瑠偉に俺が油断したところで、頬にキスをされたのだった。




