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俺を好きな幼馴染(美少女)が男のふりして男子校に押しかけてくる。そしてルームメイトとして居座る  作者: 遠都衣(とおとい)
第9章 男子校のシンデレラは、魔法使いの力を借りずに変身できる

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第40話 壁ドンって本当にあるんですね



 俺。昼飯を食うだけでも既に精神力をだいぶ削られているのだが。

 大丈夫なのかな? 今日?


 服装が変われば人は変わるもので、今日の瑠偉はいつもよりも断然、表情もしぐさも女子そのものだ。


 ちょっと考えてみてほしい。

 一緒に歩いているだけで、すれ違う人が男女問わず振り向いて見るような美少女が。

 俺と向き合っている時やくっついて歩いている時は、『脩、大好き!』オーラをダダ漏れにして、ベタベタくっついてきたり恥ずかしそうにしたりするのだ。


 萌死にするよ!?

 普通に!?


 あれ……?

 俺なんで、こんな状況になってるんだっけ?

 てか、これもう普通に付き合ってない?

 むしろこれで付き合ってないっておかしくない?


 しかし、今もなお瑠偉が『男である』という前提が生きているため、どんなにいちゃいちゃベタベタしていても、これはあくまでも仲の良い男同士のルームメイトという間柄なのである。


 どないやねん。

 どんな状況やねん。

 とツッコミを入れても、答えてくれる人はどこにもいません……。



 ◇



 食事を終えた俺たちが次にやってきたのは、近くにあった大型書店だった。


「なんか欲しい本でもあるのか?」

「参考書を探そうと思って……」


 俺が、瑠偉に書店に連れてこられた理由を尋ねると、瑠偉は背伸びをして参考書コーナーを探す様子を見せながらそう答えた。


 ……なるほど、参考書ね。


「お前、そういうとこほんと真面目だなあ」

「……だって。何がなんでも脩と同じクラスになりたいんだもん……」


 瑠偉が唇を尖らせながらそう言ってくる。


 ちなみに、直近の期末テストの話についての余談だが。

 あのあと、俺の順位が20位以下に落ちていた理由を瑠偉から追求された俺は、《《ありのまま》》、『うっかり答案用紙に名前を書き忘れたから点数がつかなかった』という理由で押し通した。


 その上で、結果35位だったということも伝えてある。


 実際のところ、瑠偉は俺の『答案用紙に名前を書き忘れた』という理由も『実はわざとやったんじゃないの?』と半信半疑でいるみたいだったが、どのみち期末で順位を落としても上位35位以内にいる俺に追いつかなければいけないという事実は変わらないので一旦深く考えないことにしたみたいだった。


 テストで成績が上がったお礼に来たのに、まだ諦めず貪欲に成績を上げるための参考書を探すなんて。

 なんとも健気なやつである。


「あっ、あれ……」


 そう言って、瑠偉が本棚の上の方にある本を取ろうと「う〜っ……」と背伸びをしたので、この高さなら普通に取れると思った俺が瑠偉の後ろから手を伸ばして本を取ってやる。


「これか?」

「あ……うん」


 俺が指をかけた本が瑠偉が取りたがっていたやつか確認しようとして胸元を覗き込んだのだが。

 ……これ、なんか壁ドンみたいな体勢になってるな……。


 てかあれだ、ドラマとか漫画でよくある展開だわ。

 背の低い女子が一生懸命高いところの本を取ろうとしているところに、長身のヒーローが後ろからやってきて「ほら、これか?」って女子に後ろから覆いかぶさるような体勢になるやつ。


 俺、無自覚にそれをやってました――。


 ……そうか、これかあ。

 よく、少女漫画とかラブコメであるお決まりのシチュエーションのやつ。

 こんなん、漫画やアニメの中だけで、絶対現実になんてないだろ!

 あんなの実際にやるやつなんて作為的にやるやつしかないだろ!

 とか思ってたけど、本当にあるんだなあ……、とふと思ってしまった。


 そうして、思わず青春の1ページみたいなのを謳歌してしまった驚きに胸を焼かれながら何気なく視線を下げると、そこで瑠偉のつむじが目に入った。


 つか、改めてこうしてみると、瑠偉《こいつ》やっぱ小さいな。


 たしか、ギリ160cm無いくらいだから、女子としては一般的なんだけど。

 女子の格好をしているせいか、今日はいつもよりもやたらと小さく見える。


「しゅ、しゅう……?」


 俺の下にいる瑠偉が、なんだかどきまぎとしながら狼狽えだす。

 ……いかんいかん。

 考え事をしていたら、ふと本棚に指をかけたまま動きを止めてた。


「悪り。ちょっと考え事してた」

「あっ……、か、考え事? 考え事か……」

「おう」


 そう言って、本棚で手をかけたままだった参考書を引き抜くと、瑠偉に渡してやる。

 ――なんだか、瑠偉の顔が少し赤いのは気のせいだろうか?


「おい、お前。なんか少し顔赤くないか?」


 もしかして、熱中症か何かか――?

 と、心配しながら顔を覗き込もうとした俺だったのだが。


「う、ううん! だいじょうぶ……!」


 と瑠偉が、なぜかばっと参考書を盾にして俺から顔を背けた。


 ……………………んんんんん?


「い、いいから。もう参考書買うから。もう行こ!」


 そう言って、なおも訝しむ俺を瑠偉が両手で持った参考書で押しながらレジへと押し進んでいく。


 ……いや、なんなんだほんと一体……?

 まさか、瑠偉も俺と同じく『壁ドン』を意識した?

 いやあ……。まさかな。


 まさか、壁ドンごときで瑠偉が照れることなどないだろうと思った俺は、時折ちらりと瑠偉をまだ照れている振り返りながらレジまで押されていき、会計をした。


 ……こいつ、照れてる顔も可愛いな。ちくしょう。


 そんなことを思いながら。

 とりあえず無事、参考書を買って、俺たちは店を出たのだった。


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